この記事の対象: 食品・飲料メーカーの担当者、Web制作会社のデザイナー
読了時間: 約7分
Soreiine!!ギャラリーには現在162件のサイトが掲載されていますが、そのうち食品・飲料カテゴリーは16件。全体の1割ほどの小さな棚ですが、並べて見比べると「食品というジャンルだからこその型」がくっきり浮かび上がってきます。
カラーはホワイト系が最多、レイアウトはシングルページが圧倒的多数。この2つの数字がなぜそうなるのかを、制作者目線で掘り下げます。
データで見る食品・飲料サイトの傾向

まずは実数から。カラー傾向とレイアウト傾向をそれぞれ整理しました。
カラー傾向はホワイト系がわずかにリード
| カラー系統 | 件数 |
|---|---|
| ホワイト系 | 4件 |
| イエロー系 | 3件 |
| パープル系 | 2件 |
| ブルー系 | 2件 |
| ピンク系 | 1件 |
| ブラウン系 | 1件 |
| グリーン系 | 1件 |
| ゴールド | 1件 |
| オレンジ系 | 1件 |
16件中9系統に分散しており、突出した一強はありません。ただしホワイト系4件とイエロー系3件を足すと16件中7件、全体の4割超を占めます。「清潔感を軸に置くか」「食欲・活力を軸に置くか」の二択に、食品ブランドの多くが収斂している格好です。
レイアウトはシングルページが6割
| レイアウト | 件数 |
|---|---|
| シングルページ | 10件 |
| 1カラム | 4件 |
| スプリットレイアウト | 1件 |
| レスポンシブ(独自構成) | 1件 |
| 合計 | 16件 |
16件中10件がシングルページ。これは他業種と比べても明確に高い比率と言えます。
シングルページ・1カラム(14件)
- 1商品・1ブランドの世界観を縦のスクロールで見せきる
- 写真とコピーの組み合わせで完結させる
スプリット・レスポンシブ(2件)
- 2つの選択肢を対比させたいときだけ採用
- 比較・選択を促す特殊なケース
16件中14件が「縦に読ませる」設計に寄っていることが分かります。なぜこの形が食品・飲料と相性がいいのか、実例を見ながら理由を掘っていきます。
なぜシングルページが多いのか|実例で見る理由

食品・飲料サイトでシングルページが選ばれやすいのには、はっきりした理由があります。商品そのものが持つ「写真映え」を、ナビゲーションで分断せずに見せきりたいからです。
GREEN SPOONデリ弁当の特設ページ
GREEN SPOONデリ弁当 / Soreiine!!掲載ページ
【制作者目線】
デリ惣菜の写真をフルスクリーンで敷き、その上に「DELICATESSEN BENTO」というレトロ寄りのタイポグラフィを重ねる構成です。写真を主役にしつつ、文字組みで「本格感」を足すという役割分担がはっきりしています。ブラウン系という、食品サイトの中ではやや珍しい色を選んでいるのも狙いが明確で、惣菜の手作り感と落ち着きを同時に出そうとしています。
【発注者目線】
GREEN SPOONというヘルシー系ブランドが「弁当」という新カテゴリーを出すときに、既存の色調を大きく崩さず、かつ新商品らしい華やかさを足せています。ブランドの一貫性を保ちながら新展開を告知したいときの、良い参考になる事例です。
濵田酒造チルグリのブランドサイト
【制作者目線】
唯一のスプリットレイアウト事例です。「マーガオのチルグリ」と「ホップのチルグリ」という2フレーバーを、3カラムの左右対比で見せています。中央に「あなたはどっチル?」という言葉遊びのコピーを置き、単なる商品紹介ではなくユーザーに選ばせる体験に変えているのがポイントです。イラストのタッチも温かく、お酒特有の堅さを感じさせません。
【発注者目線】
商品が2種類あり、どちらか選んでほしい・比較してほしいという意図があるときは、シングルページより分割構成のほうが伝わりやすいという好例です。16件中スプリットが1件しかないのは、「選ばせる」設計が必要な商品自体が少ないからだとも読めます。
東京ばにゃ奈クッキーズの商品ページ
【制作者目線】
イエロー系の中でも特に大胆な事例です。ローディング画面のキャプチャですが、画面全体をブランドカラーで塗りつぶし、「Ready!」の文字とCookie同意バナーまでトーンを統一しています。待ち時間という本来は離脱リスクにしかならない瞬間を、ブランド体験の一部に転換している設計です。
【発注者目線】
猫モチーフの新商品「ばにゃ奈」の登場を、色だけで一瞬で伝えられています。既存の東京ばな奈というブランド資産があるからこそ成立するアプローチで、ブランドカラーを持つ企業なら参考にしやすい考え方です。
コーヒーシティフェスティバル2025
コーヒーシティフェスティバル2025 / Soreiine!!掲載ページ
【制作者目線】
イエロー系のもう一つの事例ですが、こちらはイベント告知という性質上、より攻めた使い方です。「Specialty」の手書き風レタリングを画面いっぱいに反復配置し、中央にレトロポップなコーヒーカップのキャラクターを置いています。情報量を絞り、色とタイポグラフィだけでインパクトを作る割り切った構成です。
【発注者目線】
イベントサイトはSNSでのシェアされやすさが集客に直結します。文章で説明するより先に「楽しそう」という感情を一瞬で伝える設計は、単発イベントの告知サイトに向いた作り方です。
サザエ食品株式会社のコーポレートサイト
【制作者目線】
ピンク系唯一の事例で、1カラム構成です。おにぎりを握る手元の写真に「手のひらに、想いをのせて。」というコピーを添えています。商品そのものではなく「作る人の手」にフォーカスした写真選びが効果的で、過度な装飾を省いたシンプルなナビゲーションと合わせて、企業としての誠実さを伝える設計になっています。
【発注者目線】
食品会社のコーポレートサイトは、商品の魅力だけでなく「作り手として信頼できるか」を見られる場面が多くあります。淡い色調と余白の使い方だけで清潔感を担保している点は、コーポレートサイトを考える食品事業者にとって具体的な参考になります。
治一郎バウムクーヘンの公式通販サイト
【制作者目線】
ホワイト系4件のうちの1件です。キッチンカウンターに置かれたバウムクーヘンを自然光で撮影し、フルスクリーンで展開しています。花を添えた構図で贈答用としての価値も匂わせつつ、ナビゲーションは上部にシンプルにまとめ、ECとしての買いやすさを損なっていません。
【発注者目線】
ホワイト系が食品サイトで選ばれやすいのは、商品写真の色や質感を邪魔しないからです。背景に主張がない分、商品自体の魅力がそのまま伝わります。EC機能を持つサイトほど、世界観と使いやすさのバランスが問われますが、この事例はその両立ができています。
ロッテ オーラテクトのブランドサイト
【制作者目線】
パープル系2件のうちの1件。オーラルケアという機能性訴求の強い商品カテゴリーで、パープルを基調に先進的なイメージを打ち出しています。ガムという身近な商品でありながら、科学的な信頼性を色で補強しようとする戦略的な色選びです。
【発注者目線】
食品・飲料の中でも「機能性」を売りにする商品は、ホワイトやイエローといった食欲訴求の色よりも、パープルやブルーなど信頼・先進性を感じさせる色を選ぶ傾向があります。自社商品の訴求軸が「おいしさ」か「機能」かで、色の選び方を変えるべきだという判断材料になります。
YOU CAFEのブランドサイト
【制作者目線】
レスポンシブ独自構成の1件。下北沢の若い女性向けカフェで、縦書きコピー「ここは、下北沢の住宅街にあるかくれがのような居場所」が温かく語りかけてきます。手描き風のロゴとイラスト、実際のキッチンで過ごす写真を組み合わせ、家のような安心感を丁寧に作り込んでいます。
【発注者目線】
飲食店でも「商品」より「場」を売る業態は、写真の情報量よりも手描きイラストやコピーの温度感が効いてきます。ターゲットが明確な業態ほど、色よりトーンで差別化する設計が有効だと分かる事例です。
自社サイトに活かすポイント

ここまでの実例を踏まえて、食品・飲料サイトを作る・見直す際に押さえておきたい判断軸を整理します。
- 写真が主役になれる商品なら、色は脇役に回す。 ホワイト系が最多になった理由はここにあります。商品写真がすでに魅力的なら、背景色で競わせる必要はありません。
- ブランドカラーが強い企業は、その色を全面展開する選択肢がある。 東京ばにゃ奈のように、ローディング画面まで含めて塗りきる大胆さは、既存のブランド資産があるからこそ成立します。手持ちの色がまだ弱い場合は無理に真似しない方が安全です。
- 1商品・1ブランドを伝えるならシングルページ、2つ以上を比較させたいならスプリット。 16件中14件がシングルページ・1カラムに寄っているのは、食品・飲料の多くが「1つの世界観を縦に読ませる」ことで成立する商材だからです。ただし濵田酒造チルグリのように、選択を楽しませたい商品ではスプリットが機能します。
- 機能性訴求の商品は、食欲を刺激する色から離れてよい。 オーラテクトのパープルのように、信頼性や先進性を伝えたいときはあえて食品らしくない色を選ぶ判断も有効です。
Shopifyでこうしたシングルページ構成のブランドサイトを作る場合、商品ページに合わせてカートまわりの体験を作り込むと離脱を防ぎやすくなります。
また、Dawnテーマをベースに世界観を作り込む場合は、アップデートに耐える改修方針を先に決めておくと後の運用が楽になります。
デザイン方針が固まったら、レイアウトの選択自体を見直す視点も持っておくと判断がぶれません。
よくある質問

食品・飲料サイトはホワイト系にすれば間違いないですか?
間違いではありませんが、万能ではありません。今回の16件でもホワイト系は4件、イエロー系3件と大きな差はなく、写真の力が強い商品ならホワイト、ブランドカラーが強いならその色を全面展開する、という判断軸のほうが重要です。色そのものより「何を主役にするか」を先に決めてください。
シングルページとマルチページ、どちらで作るべきですか?
紹介する商品・ブランドが1つに絞れるなら、シングルページで世界観を縦に読ませる設計が食品・飲料では主流です。ただし複数商品を比較させたい、カテゴリーごとに情報量が多い場合は、1カラムやマルチページ構成のほうが情報が探しやすくなります。今回の事例でも1カラムが4件あり、ECとしての使いやすさを優先した治一郎のような例があります。
イベント告知サイトも同じ色の傾向で作っていいですか?
イベント告知は通常の商品サイトよりも色を強く使う傾向があります。コーヒーシティフェスティバルのように、イエローを画面いっぱいに使い、情報を絞ってSNSでシェアされやすい設計にする方が効果的です。常設のブランドサイトと同じトーンで作る必要はありません。
機能性食品・健康食品のサイトも食欲を刺激する色にすべきですか?
必ずしもそうではありません。オーラテクトの事例のように、機能性や信頼性を訴求したい商品では、パープルやブルーなど食欲訴求とは異なる色を選ぶ判断も有効です。自社商品の訴求軸が「おいしさ」なのか「機能」なのかを先に整理してから色を決めてください。
小規模な食品ブランドでもこうしたデザインは実現できますか?
写真の質とコピーの一言があれば、シングルページ構成は予算をかけずに作りやすい形式です。テンプレートを活用した5ページ構成程度からでも、訴求軸を絞り込めば十分に伝わるサイトになります。まずは自社の商品写真がどれだけ「主役になれるか」を確認することから始めてください。
まとめ
食品・飲料16件を分類すると、ホワイト系とイエロー系で全体の4割超、シングルページ・1カラムで14件という、はっきりした型が見えてきました。理由は単純で、食品は写真そのものが強い訴求力を持つため、色とレイアウトで邪魔をしないほうが伝わりやすいからです。ただし濵田酒造チルグリやオーラテクトのように、商品の性質次第では対比構成や訴求軸の転換が効く場面もあります。自社商品が「写真で語れるか」「選ばせる必要があるか」「機能で語るべきか」を先に整理してから、色とレイアウトを決めてください。



