この記事の対象: Webデザイナー・ディレクター・フロントエンドエンジニア
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2026年のWebデザインは、ここ数年のAI中心の流れに対する「揺り戻し」が鮮明になった年です。
生成AIがデザインの現場に入り込み、誰でも「それっぽい」ビジュアルを作れるようになった結果、逆に「人の手が感じられるもの」「物理的な質感があるもの」に惹かれるユーザーが増えています。そこにAppleがiOS 26で打ち出した「リキッドグラス」という新しいデザイン言語が加わり、Web表現のトレンドにも大きな変化が起きています。
この記事では、2026年に押さえておくべきWebデザイントレンドを10個、Soreiine!!ギャラリーの実例サイト付きで紹介します。単なるトレンド紹介ではなく、実装のヒントや使いどころまで踏み込んでいるので、実務にそのまま活かしてもらえるはずです。
2026年のWebデザインを取り巻く背景
2026年のWebデザインを語るうえで、無視できない大きな潮流が3つあります。
1つ目は「AI完璧主義」への反発。 Midjourney、DALL-E、Figma AIなどの生成AIが普及し、グラデーションも構図も完璧に整ったビジュアルが大量に出回るようになりました。その結果、ユーザーの目には「どれも同じに見える」という飽きが生まれています。手描きの線、あえて崩したレイアウト、不揃いなタイポグラフィ——そうした「人間の手跡」に価値を見出す動きが加速しています。
2つ目はApple iOS 26のインパクト。 2025年6月のWWDCで発表されたリキッドグラスUI(半透明のガラス質感に液体的な動きを加えたデザイン言語)は、UIデザイン全体の美的基準をアップデートしました。iOS 26が広く浸透した2026年現在、その影響はネイティブアプリだけでなくWebデザインの現場にも明確に波及しています。
3つ目は環境意識の高まり。 WebサイトのCO2排出が議論されるようになり、「表示が重い=環境に悪い」という認識が広がっています。不必要に重い装飾を削ぎ落とし、軽量で持続可能な設計を目指す「サステナブルWebデザイン」が、もはやトレンドではなく前提条件になりつつあります。
2026年注目のWebデザイントレンド10選
①リキッドグラス(Liquid Glass)
Apple iOS 26が火付け役となった、2026年最大のデザイントレンドです。
従来のグラスモーフィズム(半透明のすりガラス風UI)をさらに進化させ、液体のような流動性と物理的な奥行き感を加えたのがリキッドグラスの特徴です。背景が透けて見えるだけでなく、光の屈折や反射が動的に変化し、まるでガラスの向こうに実体があるかのような表現を実現します。
Webデザインへの応用では、ヒーローセクションのオーバーレイやカード型UIに多く採用されています。
実例: Refract Studio — ポートフォリオサイト全体にリキッドグラス表現を取り入れた先進的な事例。ナビゲーションのホバー時に光の屈折が変わる演出が秀逸。
実装のヒント: backdrop-filter: blur() と background: linear-gradient() の組み合わせが基本。動的な光の表現にはCSS @property でカスタムプロパティをアニメーションさせる手法が使えます。より高度な表現にはWebGLやShaderが必要ですが、まずはCSSだけでも十分にリキッドグラスの雰囲気は出せます。
→ リキッドグラスの詳細な実装方法はグラスモーフィズムCSS実装ガイドで解説しています。
→ リキッドグラスデザインの詳細と応用例はApple流「リキッドグラス」デザインの特徴と実装のヒントでも解説しています。
②ハンドクラフト / 手描き風デザイン
AI生成画像が溢れる時代だからこそ、手描きのイラストやコラージュが強烈な個性として機能します。
ブラシストロークが残るイラスト、紙のテクスチャを活かしたコラージュ、あえて手書き風のフォント——こうした「不完全さ」が、ブランドの人間味や温かみを伝えるツールになっています。とくにD2Cブランド、飲食店、クリエイティブエージェンシーのサイトで顕著です。
実例: Craft & Co. — 手描きイラストとテクスチャを全面に使ったカフェのサイト。写真とイラストの重ね合わせが巧みで、紙のメニューをめくるような体験を再現。
実例: Atelier Noma — デザインスタジオのポートフォリオ。スキャンした鉛筆画をベースにした独特のビジュアルが印象に残る。
使いどころ: ブランドの世界観を「温度」で伝えたい場合に有効。ただし全ページに展開すると視認性が落ちるため、ファーストビューやアクセントに留めるのが実用的です。
③キネティックタイポグラフィ
文字が単なる情報伝達の手段ではなく、ビジュアル要素そのものとして動くデザインです。
スクロールに連動して文字が拡大・回転・分解されたり、ホバーで一文字ずつ反応したり。ヒーローセクションで巨大なタイポグラフィが画面いっぱいに動くサイトも増えています。
実例: Typomotion Lab — スクロールで文字が分解・再構成されるインタラクティブなポートフォリオ。GSAPとSplitTypeを組み合わせた実装。
実装のヒント: GSAP(GreenSock Animation Platform)とSplitType.jsの組み合わせが定番。文字を一文字ずつspan要素に分割し、個別にアニメーションさせます。CSSスクロールアニメーションだけでも、Scroll-driven Animationsを使えばシンプルなキネティック表現は実現可能です。
注意点: アクセシビリティへの配慮を忘れずに。prefers-reduced-motion メディアクエリで、動きを減らす設定のユーザーにはフォールバックを用意してください。
④ネイチャーハーモニー
木目、石材、土、葉脈——自然素材のテクスチャとオーガニックカラーをWebデザインに取り入れるスタイルです。
アースカラー(テラコッタ、モスグリーン、サンドベージュ)を基調に、角の丸い有機的なシェイプを組み合わせるのが典型的なパターン。サステナビリティを打ち出すブランドとの親和性が非常に高く、建築・インテリア・オーガニック食品・アウトドア系のサイトで広がっています。
実例: Terra Living — オーガニックコスメブランドのサイト。背景に石のテクスチャ、CTAボタンに葉をモチーフにした有機的シェイプを使用。色数を3色に抑えたミニマルな構成。
実例: Green Arch — 建築設計事務所のサイト。木目テクスチャの背景にアースカラーのタイポグラフィを重ね、環境配慮型の設計思想をビジュアルで体現。
実装のヒント: テクスチャ画像はWebP/AVIF形式で軽量化し、background-blend-mode で色と合成。有機的なシェイプは border-radius の8値指定や clip-path でSVGパスを使うと、自然なカーブを表現できます。
⑤Bento Gridレイアウト
Appleの製品ページで採用されたことで一気に広まったBento Gridレイアウトは、格子状に情報をタイル配置するデザインパターンです。日本の「弁当箱」が名前の由来。
異なるサイズのカードを規則的に配置し、画像・テキスト・アイコンを1つの画面に一覧表示できるのが最大の利点です。モバイルでは1カラムに自然にフォールバックでき、レスポンシブとの相性も抜群。プロダクトページ、ダッシュボード、ポートフォリオで特に効果的です。
実例: Grid Works — Web制作会社のサービスページ。サービス内容をBento Grid形式で一覧表示し、各タイルにホバーでインタラクションが発動。
実例: Daily Dashboard — SaaSプロダクトのランディングページ。機能紹介をBento Gridで配置し、スクロールに合わせてタイルが順番にフェードイン。
実装のヒント: CSS Gridの grid-template-areas で直感的にレイアウトを組むのが基本。grid-auto-flow: dense を使えば空きスペースを自動で埋めてくれます。
→ Bento Gridの詳しい実装パターンはBento Gridレイアウトの作り方で紹介しています。
⑥高彩度カラー
ネオンイエロー、エレクトリックブルー、ビビッドピンク——彩度を極端に上げたカラーパレットで強烈な印象を残すスタイルです。
Z世代のクリエイティブ表現と結びつきが強く、ファッション、音楽、カルチャー系のサイトで目立ちます。2026年のカラートレンドとしては、WGSNが選んだティール(青緑系)と、PANTONEのクラウドダンサー(淡いオフホワイト)の両極が注目されており、この対比を活かしたデザインも増えています。
実例: Neon District — 音楽イベントのサイト。蛍光イエロー×ブラックのハイコントラスト配色で、印象が一発で刻まれる。
使いどころ: ブランドの「エネルギー」や「若さ」を表現したい場面。ただし、高彩度を画面全体に使うと目が疲れるため、アクセントカラーとして使い、背景はニュートラルに抑えるのがコツです。色覚多様性への配慮として、コントラスト比のチェック(WCAG AA基準: 4.5:1以上)は必須。
⑦マイクロインタラクション
ボタンのホバーで微かに膨らむ、カードをクリックするとさりげなく弾む、スクロールで要素がふわっと現れる——こうした小さな反応の積み重ねがユーザー体験の質を大きく左右します。
2026年は「動き」のレベルが上がっています。単なるフェードインではなく、物理法則に基づいたイージング(spring animation)やパーティクルエフェクトなど、より繊細で自然なインタラクションが求められるようになりました。
実例: Micro Lab — UIコンポーネントライブラリのショーケースサイト。全要素にマイクロインタラクションが実装されており、操作するだけで楽しい。
実装のヒント: CSSの transition と animation だけでも基本的な表現は十分。よりリッチな物理ベースのアニメーションには、Framer MotionやReact Springが便利です。パフォーマンスを意識するなら、transform と opacity のみをアニメーションさせ、will-change でGPUレイヤーを作成するのがベストプラクティス。
→ マイクロインタラクションの事例集はマイクロインタラクションの事例と実装ポイントで紹介予定です。
⑧ネオ・ブルータリズム
太い枠線、ハードシャドウ(影がドロップシャドウではなく実体のある四角形)、システムフォント、原色——あえて「整えない」デザインで、情報過多の時代に視覚的なノイズの中から際立つことを狙うスタイルです。
2024年頃から登場していましたが、2026年は洗練度が上がり、ブルータリズムの「粗さ」とモダンなUXを両立させた「ネオ」な進化を遂げています。Notion、Gumroad、Figmaのコミュニティページなど、テック系サービスでの採用も増加中です。
実例: Raw Studio — デザインスタジオのサイト。黒い太枠線と原色のアクセントで構成されたブルータリストなレイアウト。コンテンツは読みやすく、「見た目のインパクト」と「情報の伝わりやすさ」を見事に両立。
使いどころ: クリエイティブ系、スタートアップ、テック系など「攻めた」印象を与えたいブランドに最適。コーポレートサイトや医療系には不向きなので、ブランドとの適合を必ず確認してください。
⑨ミニマリズムの深化
ミニマルデザインは「トレンド」というより「定番」ですが、2026年のミニマリズムはさらに深化しています。
単にビジュアル要素を減らすだけでなく、認知負荷そのものを設計対象にするアプローチです。余白の使い方、フォントの選定、ナビゲーション構造、情報の優先順位——すべてを「ユーザーの脳に負荷をかけない」という基準で最適化します。具体的には、グローバルナビの項目数を5つ以下に絞る、ファーストビューのCTAを1つに限定する、色数を3色以内にするといった原則が実践されています。
実例: Void Space — 建築事務所のサイト。コンテンツは写真とテキストだけ。しかし余白の設計が緻密で、少ない要素で強い印象を与えている。
実例: Less Studio — プロダクトデザインスタジオ。全ページのデザインが「余白」を主役にした構成で、スクロールのたびに一呼吸置くリズムが心地よい。
→ ミニマルデザインの詳しい解説と参考サイトはミニマルデザインの参考サイト事例集にまとめています。
⑩サステナブルWebデザイン
Webサイトが消費するエネルギーを意識的に削減する設計思想です。「見た目のトレンド」というより「設計の前提条件」として浸透し始めています。
世界のデータセンターが排出するCO2は、航空業界に匹敵するという試算もあります。1ページあたりの転送量を減らし、不必要なスクリプトを削除し、画像を最適化する——こうした取り組みが、パフォーマンス改善とユーザー体験の向上にも直結します。
具体的なアプローチ:
– 画像はAVIF/WebP形式で配信し、loading="lazy" で遅延読み込み
– システムフォント(font-family: system-ui)を優先し、Webフォントの読み込みを最小限に
– 不要なJavaScriptライブラリを削除(jQueryが本当に必要か再検討)
– ダークモード対応(OLEDディスプレイでの消費電力削減)
– CDNの活用でデータの移動距離を短縮
実例: Low Impact — 環境系NPOのサイト。1ページあたりの転送量を200KB以下に抑えながら、視覚的にも魅力的なデザインを実現。Website Carbon Calculatorで「Cleaner than 95% of pages tested」のスコアを獲得。
→ サステナブルWebデザインの考え方と実践についてはサステナブルWebデザインとは?で詳しく紹介予定です。
トレンドを自社サイトに取り入れるポイント
10個のトレンドを紹介してきましたが、ここで重要なことを1つ。
トレンドを全部入れようとしないでください。
「リキッドグラスでBento Gridを組んで、キネティックタイポグラフィをのせて、ネオブルータリズムのカード型に……」——こんなサイトを作ったら、ユーザーは混乱するだけです。
トレンドはあくまで「引き出し」であり、目的はユーザー体験の最適化です。以下の3つの基準で、自社サイトに取り入れるべきトレンドを選んでください。
基準①:ブランドとの整合性
コーポレートサイトにネオブルータリズムは普通は合いません。建築事務所にはミニマリズム、D2Cブランドにはハンドクラフト、SaaSにはBento Grid——ブランドの性格に合ったトレンドを選びましょう。
基準②:ユーザーの期待値
ターゲットユーザーがどんなWebサイトに慣れているかを考慮します。BtoBの企業サイトに過度なアニメーションを入れると、「遊んでいる」と思われるリスクがあります。
基準③:実装・運用のコスト
WebGLを使った高度なインタラクションは制作コストが高く、更新も大変です。CSSだけで実現できるトレンド(リキッドグラスの基本表現、Bento Grid、ミニマリズム)から取り入れるのが現実的です。
1つのプロジェクトで取り入れるトレンドは多くても2つまで。それだけで十分に「今っぽい」サイトになります。
まとめ
2026年のWebデザイントレンドを10個、実例サイト付きで紹介しました。
| No. | トレンド | キーワード |
|---|---|---|
| ① | リキッドグラス | 透明感・液体質感・奥行き |
| ② | ハンドクラフト | 手描き・コラージュ・人間味 |
| ③ | キネティックタイポグラフィ | 動く文字・スクロール連動 |
| ④ | ネイチャーハーモニー | 自然素材・オーガニックカラー |
| ⑤ | Bento Grid | タイル配置・Apple風・レスポンシブ |
| ⑥ | 高彩度カラー | ネオンカラー・Z世代・ティール |
| ⑦ | マイクロインタラクション | 微細な反応・物理アニメーション |
| ⑧ | ネオ・ブルータリズム | 太枠線・ハードシャドウ・原色 |
| ⑨ | ミニマリズムの深化 | 認知負荷の軽減・余白設計 |
| ⑩ | サステナブルWebデザイン | 軽量化・省エネ・環境配慮 |
2026年は「AI時代だからこそ人間らしさを」「便利だからこそ持続可能性を」という二つの軸が明確になった年です。どちらの軸にも共通するのは、表面的な装飾ではなく、ユーザーにとって本質的に意味のあるデザインが求められているということ。
トレンドを追いかけるだけでなく、「なぜそのトレンドがユーザーに響くのか」を考えながら、自分のプロジェクトに活かしてみてください。
最新のWebデザイン実例は、Soreiine!!ギャラリーで随時追加しています。
