この記事の対象: Web制作会社への発注を控えている企業のWeb担当者・マーケティング担当者
読了時間: 約9分
「制作会社に何を伝えればいいかわからない」——Web制作の発注で最初につまずくのが、この問題です。
電話やメールで「ホームページをリニューアルしたいんですが…」と漠然と伝えても、制作会社からは的外れな提案が返ってくるだけ。結果、何度もやり取りを繰り返し、時間だけが過ぎていく……。
こうした無駄を防ぐのがRFP(提案依頼書)です。RFPをきちんと作成するだけで、制作会社からの提案精度は格段に上がり、見積もりの比較もしやすくなります。
この記事では、RFPに記載すべき10項目を具体例付きで解説します。「良いRFPと悪いRFPの違い」も比較しているので、初めてRFPを書く方でも迷わず作成できるはずです。
RFPとは?なぜ必要なのか
RFP(Request for Proposal / 提案依頼書)とは、制作会社に提案を依頼する際の要件をまとめた文書です。
「口頭で説明すれば十分では?」と思うかもしれません。しかし実際の制作現場では、RFPの有無でプロジェクトの成否が大きく分かれます。
| RFPなし | RFPあり | |
|---|---|---|
| 提案精度 | 制作会社の推測頼み | 要件に沿った的確な提案 |
| 見積もり比較 | 各社バラバラの前提 | 同一条件で比較可能 |
| 認識のズレ | 制作途中で頻発 | 事前に防止 |
| 社内共有 | 担当者の口頭説明に依存 | 文書で関係者全員が同じ認識 |
| 追加費用リスク | 高い(「聞いてない」トラブル多発) | 低い(要件が明文化済み) |
制作会社の側から言うと、RFPをもらえる案件は「この会社は本気だな」と感じます。提案にも力が入りますし、見積もりもより正確に出せる。RFPを書くことは、良い制作会社から良い提案を引き出すための投資です。
RFPに記載すべき10項目
RFPに決まったフォーマットはありませんが、Web制作案件では以下の10項目を押さえておけば十分です。
1. プロジェクト概要
会社名、担当者名、連絡先に加え、プロジェクトの全体像を1〜2段落で簡潔にまとめます。
例: 「株式会社〇〇のコーポレートサイト(https://example.com)を全面リニューアル。現行サイトは2019年制作で、デザインの老朽化とスマホ対応の不十分さが課題。2026年9月の公開を目指す。」
2. リニューアルの目的・背景
「なぜリニューアルするのか」を明確に書きます。これが曖昧だと、提案の方向性がブレます。
良い書き方: 「問い合わせ数を月10件→30件に増やしたい。現在のサイトはSEOが弱く、主要キーワードで検索3ページ以降。デザインも競合と比べて見劣りしている」
悪い書き方: 「今のサイトが古くなったのでリニューアルしたい」→ これでは制作会社は「何をどう改善すればいいのか」がわからない
3. ターゲットユーザー
サイトの主要なターゲットを明記します。BtoB企業なら「決裁権のある部長職以上」なのか「情報収集段階の担当者」なのかで、サイトの設計思想が変わります。
4. 現状サイトの課題
現在のサイトで「何が問題なのか」を具体的にリストアップします。
- デザインが5年以上前のまま
- スマホでの表示が崩れるページがある
- ページの読み込みが遅い(PageSpeed Insightsで30点台)
- 問い合わせフォームの離脱率が高い
- ブログ更新の操作が難しく、社内で更新できない
5. 必須機能要件
サイトに必要な機能を「必須」と「あれば望ましい」に分けて記載します。
| 優先度 | 機能 |
|---|---|
| 必須 | CMS(WordPress)、問い合わせフォーム、ブログ機能、SSL対応 |
| 必須 | スマホ・タブレット対応(レスポンシブ) |
| 望ましい | 事例ページの絞り込み検索、多言語対応(英語) |
| 望ましい | チャットボット導入、GA4連携 |
6. デザインの方向性
「おしゃれなサイトにしてほしい」は制作会社にとって最も困るオーダーのひとつ。具体的な参考サイトを3〜5件提示するのが最も効果的です。
Soreiine!!ギャラリーで業界や雰囲気から参考サイトを探し、「このサイトの〇〇な雰囲気が近い」と伝えれば、デザイナーとのイメージ共有がスムーズになります。
ポイント: 参考サイトを提示する際は「このサイトのどこが気に入ったのか」も添えること。サイト全体の雰囲気なのか、ナビゲーションの使いやすさなのか、写真の使い方なのか——具体的なほど提案の精度が上がります。
7. サイト構成(ページ一覧)
必要なページをリストで書き出します。完璧でなくてOK。「抜けているページがあれば提案してほしい」と添えれば、制作会社が補完してくれます。
- トップページ
- 会社概要(代表メッセージ、沿革、アクセス)
- 事業内容(サービスA、サービスB、サービスC)
- 事例紹介(6〜10件)
- お知らせ(ブログ形式)
- 採用情報
- お問い合わせ
- プライバシーポリシー
一般的な中小企業のコーポレートサイトなら15〜20ページが標準的な構成です。
8. 予算
予算を伝えるべきかどうかは悩みどころですが、結論として伝えたほうが良い提案をもらえます。
ただし「100万円です」とピンポイントで伝えるのではなく、「100〜150万円の範囲で検討している」と幅を持たせるのがコツ。制作会社はその予算内で最大限のパフォーマンスを出す提案を考えてくれます。
予算の目安がわからない場合は「ホームページリニューアルの費用相場」を参考にしてください。
9. スケジュール
公開希望日から逆算して、以下の日程を記載します。
| マイルストーン | 目安 |
|---|---|
| RFP送付 | ○月○日 |
| 提案・見積もり提出期限 | RFP送付から2〜3週間後 |
| 制作会社決定 | 提案から1〜2週間後 |
| 制作開始 | 契約締結後 |
| 公開希望日 | ○月○日 |
10. 選定基準・評価方法
複数社に提案を依頼する場合、何を基準に選ぶのかを明記しておくと、制作会社も的確なアピールができます。
例: 「デザイン力(30%)、実績(20%)、提案内容(25%)、費用(15%)、運用サポート体制(10%)の5項目で総合評価する」
制作会社の選び方の詳細は「WEB制作会社の選び方完全ガイド」で解説しています。
良いRFPと悪いRFPの比較
同じ案件でも、RFPの書き方で提案の質が変わります。
| 項目 | 悪いRFP | 良いRFP |
|---|---|---|
| 目的 | 「サイトを新しくしたい」 | 「問い合わせ数を月10件→30件に増やしたい」 |
| デザイン | 「おしゃれにしてほしい」 | 「参考サイト: ○○.com のミニマルな雰囲気」 |
| 機能 | 「いい感じにしてほしい」 | 「CMS必須、ブログ・事例ページ・フォーム」 |
| 予算 | 記載なし | 「100〜150万円で検討中」 |
| 納期 | 「なるべく早く」 | 「2026年9月末公開希望」 |
悪いRFPで依頼すると、制作会社は「とりあえず無難な提案」を出してきます。複数社から見積もりを取っても、前提条件がバラバラで比較のしようがありません。
良いRFPは、制作会社の提案を「同じ土俵」で比較できるようにします。結果として、より自社に合った制作会社を選べるようになります。
見積もりの比較方法については「見積もり比較のポイント」で詳しく解説しています。
RFP作成のコツと注意点
最後に、RFP作成で押さえておきたい実践的なポイントをまとめます。
1. 完璧を目指さない
RFPは「提案を引き出すための土台」です。すべてを完璧に記載する必要はありません。わからない部分は「提案に含めてほしい」と正直に書けばOK。制作会社のプロの視点で補完してもらえます。
2. 社内の決裁フローを事前に整理する
RFPには書かないことですが、「誰がデザインの最終決定権を持つのか」「いくらまでなら部長決裁で進められるのか」を事前に社内で決めておくこと。ここが曖昧だと、制作が始まってから迷走します。
リニューアルプロジェクトの進め方全体は「WEBサイトリニューアルの進め方完全ガイド」を参照してください。
3. 提案のプレゼン形式を指定する
「Zoomで30分」「来社でプレゼン60分」「資料提出のみ」など、提案の受け方を指定しておくと、制作会社側も準備しやすくなります。
4. 質問受付期間を設ける
RFP送付後、制作会社からの質問を受け付ける期間(1週間程度)を設けましょう。質問が多い制作会社ほど、真剣に提案を検討している証拠です。
まとめ
Web制作のRFPに必要な10項目を解説しました。
- プロジェクト概要
- リニューアルの目的・背景
- ターゲットユーザー
- 現状サイトの課題
- 必須機能要件
- デザインの方向性
- サイト構成
- 予算
- スケジュール
- 選定基準
RFPは「完璧な仕様書」ではなく、制作会社から良い提案を引き出すための道具です。まずはこの10項目をA4で2〜3枚にまとめるところから始めてみてください。それだけで、制作会社とのやり取りの質が大きく変わるはずです。
