業界・事例

アート・美術館・展覧会Webサイトデザイン事例|6件を分類

この記事の対象: アート系・文化施設・クリエイター向けサイトの発注担当者、Web制作者
読了時間: 約7分

美術館、展覧会、アーティストのポートフォリオ。同じ「アート」でも、ギャラリー、施設、個人と発注者の立場は大きく違います。それでもSoreiine!!に掲載されているアート・美術館・展覧会系のサイトを並べてみると、はっきりとした共通の色使いとレイアウトの型が見えてきました。今回はそのうち6件を実際に見ながら、なぜその型が選ばれるのかを制作者目線で解説します。


数字で見るアート系サイトの傾向

数字で見るアート系サイトの傾向

まず前提として、今回対象にしたのはSoreiine!!掲載サイトのうち6件です。母数としては小さいものの、傾向は割とくっきり出ています。

カラー傾向:ベージュ系が半数

カラー系統 件数
ベージュ系 3件
グリーン系 2件
グレー系 1件

6件中3件、つまり半数がベージュ系の配色でした。これは偶然ではなく、アート系サイトが背負っている役割から逆算すると納得できます。ベージュや生成り色は、作品や写真の「地」として機能したときに一番邪魔をしない色です。飲食店サイトなら赤やオレンジで食欲を刺激しますが、アート系は逆で、コンテンツより背景が主張してしまうと本末転倒になる。だから彩度を落とした中間色に寄っていくのは、ある意味で必然の選択と言えます。

グリーン系が2件入っているのも興味深いところで、いずれも「自然」や「工芸」といった土着的なテーマを持つサイトでした。単に「アートっぽい色」を選んでいるのではなく、扱う題材の質感に色を合わせている点は覚えておきたいポイントです。

レイアウト傾向:3タイプがきれいに分散

レイアウト 件数
スプリットレイアウト 2件
1カラム 2件
シングルページ 2件
合計 6件

こちらはカラー以上に分散していて、3タイプが2件ずつというきれいな結果になりました。これは「アート系サイト」とひとくくりにできない事情を映しています。美術館や文化施設のような「情報量の多い」サイトはスプリットレイアウトで作品とテキストを並列に見せ、イラストレーターやフィギュアブランドのような「作家性を前面に出す」サイトはシングルページか1カラムでミニマルに構成する。目的によってレイアウトの選び方がはっきり分かれているのです。

アート系サイトの目的別レイアウトの傾向

情報量が多い施設・企画系

  • スプリットレイアウトで並列表示
  • テキストと写真ギャラリーを分割
  • 回遊性・網羅性を重視

作家性を出すポートフォリオ系

  • シングルページ/1カラムで潔く
  • 余白を贅沢に使う
  • 作品そのものを主役にする

この対比を頭に入れておくと、これから紹介する6件がなぜそのデザインを選んでいるのかが読み解きやすくなります。


実例で見る6サイトの工夫

実例で見る6サイトの工夫

ここからは実際に掲載されている6サイトを、講評を交えて紹介します。

別府竹細工の特集ページ(BEAMS)

https://www.beams.co.jp/special/happyoutside_beppu_bamboo/|Soreiine!!掲載ページ

ファッションブランドのBEAMSが展開する「HAPPY OUTSIDE」プロジェクトによる、別府竹細工の特集です。背景はミントグリーンに寄せたグリーン系で、竹細工の工芸品と職人の写真がレイアウトされています。目を引くのは、伝統工芸としての別府竹細工を格調高く打ち出す縦書きのキャッチコピー。竹をモチーフにしたアイコンとあわせて、和の格式をきちんと演出しています。

【制作者目線】縦書きテキストは実装コストがかかる割に軽視されがちですが、このサイトのように「伝統工芸の格式」というテーマと組み合わさると効果が跳ね上がります。横書きの英語的なレイアウトに縦書きの日本語を差し込むだけで、一気に和の空気が生まれる好例です。

【発注者目線】ファッションブランドが伝統工芸を紹介するという切り口自体が新鮮で、自社の商品と直接関係のないコンテンツでもブランドの世界観を広げる手段になり得ることを示しています。工芸の担い手やものづくりの姿勢を丁寧に言葉にしているコピーも、単なる商品紹介ページには落とし込みにくい情緒を作っています。

フィギュアブランドMIMEYOIのサイト

https://mimeyoi.co/|Soreiine!!掲載ページ

フィギュアブランドMIMEYOIのブランドサイトです。クリームイエローに寄ったベージュ系の背景に、ミニマルな画面構成が組まれています。フィギュアという「造形の精緻さ」を売りにするジャンルだからこそ、画面側は主張を抑えるという判断が徹底されています。

【制作者目線】コレクター向けの商材は、情報を詰め込むよりも余白を残すほうが「上質さ」の説得力が出ます。ナビゲーションやコピーを絞り込み、写真が入ったときにそのまま主役になれる余地を残しておく設計思想が見て取れます。

【発注者目線】ブランド名の由来やコンセプトを長々と説明するより、「造形美を追求する姿勢」を画面のトーンだけで伝えている点が参考になります。コレクター層は言葉より質感で判断することが多いため、この手数の少なさは狙った上での省略だと考えられます。

イラストレーター小森あやのポートフォリオ

https://komori-aya.com/|Soreiine!!掲載ページ

柔らかなベージュ背景に、セリフ体の英字「AYA KOMORI」と日本語の氏名を組み合わせたシンプルな構成。TOP、ABOUT、WORKS、NEWSという最小限のナビゲーションに、右端の縦書きテキストがアクセントとして添えられています。

【制作者目線】セリフ体の英字と日本語表記を縦横で組み合わせる手法は、個人の作家サイトで再現性の高いテクニックです。フォントの選定一つで「作家としての品格」を演出できることを示す好例で、余白の取り方も含めてタイポグラフィだけで空間の格を作っています。

【発注者目線】ポートフォリオサイトにありがちな「実績を並べるだけ」から一歩進み、サイト自体が作品の一部であるかのような佇まいを持たせています。イラストの作風が繊細であるほど、サイトの余白も呼応させる価値があるという判断がうかがえます。

イラストレーターunpisのポートフォリオ

https://unpis.net/|Soreiine!!掲載ページ

ベージュの落ち着いた背景に、赤い服を着た丸みのあるキャラクターを画面左に大きく配置。ナビゲーションは「Click」と「about」のみという潔さです。

【制作者目線】ナビゲーションを極限まで削るのは勇気がいる判断ですが、キャラクターの個性がファーストビューで完結しているからこそ成立しています。情報設計を「削る」選択も立派な設計であることを教えてくれる事例です。

【発注者目線】作品の魅力に自信があるなら、説明文や経歴を先に読ませる必要はありません。「見ればわかる」を実現するには、それだけ作品自体の訴求力が問われますが、うまくハマれば最短距離でファンを作れる構成です。

阿寒アイヌアートウィーク2025公式サイト

https://akan-ainu-artweek.jp/|Soreiine!!掲載ページ

阿寒湖で開催されるアイヌアートの祭典のプロモーションサイトです。木彫作家・岡田実氏の紹介では、左に経歴テキスト、右に木彫作品のギャラリーというスプリットレイアウトが採用されています。グレー系の落ち着いたトーンで、モーダルウィンドウでの作家紹介も組み込まれています。

【制作者目線】スプリットレイアウトはテキストと画像を対等に見せたいときの定番手法ですが、このサイトはモーダル表示との組み合わせで「読みたい人だけ深掘りできる」設計にしています。情報量が多い企画系サイトでは、初見の負荷を上げずに深さを持たせる工夫が効いています。

【発注者目線】地域文化の祭典という性質上、伝えたい背景情報は多くなりがちです。それを一覧性の高いギャラリーと、必要な人だけが開くモーダルに分けることで、ライトな訪問者にも熱心な訪問者にも対応できる構成になっています。

生活とアートが溶け合う関ヶ原の文化施設

https://sekigaharaningenmura.jp/|Soreiine!!掲載ページ

緑豊かな芝生に点在する石のアート作品を大きく見せるメインビジュアルと、右サイドに生活美術館やカフェの写真を配したスプリットレイアウト。グリーン系のトーンで、生活と自然とアートが地続きであることを伝えるキャッチコピーが施設のコンセプトを端的に表しています。

【制作者目線】天気や気温の表示を組み込んでいる点が独特です。実際にその場に行きたくなる「今この瞬間」の臨場感を作る仕掛けで、静的なコンテンツになりがちな文化施設サイトに動きを持たせています。

【発注者目線】文化施設サイトは「来場を促す」ことがゴールになりますが、写真とコピーだけでは今ひとつ行動につながりにくいこともあります。天気表示のような小さな仕掛けが、「今日行ってみようか」という後押しになる可能性を示した事例です。



自社サイトに活かすポイント

自社サイトに活かすポイント

6件を通して見えてきたのは、アート系サイトが「背景色で作品を邪魔しない」「目的に応じてレイアウトの型を変える」という2つの判断軸を持っているということです。自社のサイトに応用するなら、次のチェックリストが使えます。

  • 扱うコンテンツが写真・作品中心なら、背景色は彩度を落とす。ベージュやグレーは主張しないぶん、コンテンツの色が映えます
  • 情報量が多い(施設・企画・イベント系)ならスプリットレイアウトを検討する。テキストと画像を並列に見せることで、回遊性を保ったまま情報密度を上げられます
  • 作家性・ブランド性を出したいなら1カラムやシングルページで削る。ナビゲーションや説明文を減らすほど、作品自体の訴求力が試されます
  • 地域性やテーマ性のあるコンテンツなら、色をテーマに合わせる。グリーン系は自然や工芸との相性がよく出ていました

タブUIやアコーディオンで作品を整理したい場合は、以下の実装ガイドが参考になります。

作品ギャラリーをモーダルで見せる設計にする場合は、こちらの実装手順が役立ちます。

作品数が多くカルーセルでまとめたい場合は、JS不要のスクロールUIも検討の余地があります。


よくある質問

よくある質問

アート系サイトは必ずベージュにすべきですか?

必須ではありません。今回の6件でも3件はグリーン系・グレー系でした。ベージュが多いのは「作品を邪魔しない中間色」という理由からで、扱う作品の色味や施設のテーマ性によってはグリーンやグレーのほうが合う場合もあります。

スプリットレイアウトとシングルページ、どちらを選べばいいですか?

伝えたい情報量で判断するのがおすすめです。作品と解説文を同時に見せたい、企画やイベントの背景説明が多い場合はスプリットレイアウト。作家性やブランドイメージをシンプルに伝えたい場合はシングルページや1カラムが向いています。

ポートフォリオサイトのナビゲーションはどこまで削っていいですか?

作品自体の訴求力次第です。今回紹介したunpisの事例のように「Click」と「about」だけという極端な構成も成立していますが、これは作品のビジュアルインパクトが強いからこそ機能しています。作品数が多く分類が必要な場合は、最低限WORKSとABOUTは残すのが無難です。

文化施設のサイトに天気表示のような仕掛けを入れる価値はありますか?

来場を目的とするサイトであれば検討の価値があります。関ヶ原の事例のように「今この瞬間」の臨場感を出す仕掛けは、静的な写真とコピーだけでは生まれない行動喚起につながる可能性があります。

縦書きテキストは実装が大変ですか?

CSSのwriting-modeプロパティで比較的シンプルに実装できます。ただし日本語の伝統工芸や和のテーマと組み合わせたときに効果が最大化されるため、コンセプトと合っているか先に確認してから採用するのがおすすめです。