この記事の対象: 既存のWordPressサイトのテーマを変えたい発注担当者・Web担当者
読了時間: 約12分
「テーマを変えるだけだから、そんなに高くないですよね?」
制作会社に見積もりを頼んだ担当者が、返ってきた金額を見て驚く——これはWordPress案件で最もよく起きるすれ違いです。テーマそのものは無料または1〜2万円台で手に入るのに、見積もりは50万円、ときには150万円を超える。何にそのお金がかかっているのかが見えないまま、稟議を通すこともできず止まってしまう。
この記事は、WordPressのテーマ変更にかかる費用を「テーマ代」「移行作業費」「復旧費」の3つに分解して、どこにいくらかかるのかを具体的な金額帯で示します。テーマ選び自体の話(有料と無料のどちらにするか、自作すべきか)はすでに別記事にまとめてあるので、ここではすでにあるサイトのテーマを別のものに切り替えるときに、いくらかかり、なぜ膨らむのかだけに絞ります。
テーマ変更の費用は「テーマ代」ではなく「移行費」で決まる
テーマ代は費用全体の1割にも満たない
まず金額の骨格から押さえます。WordPressのテーマ変更にかかるお金は、大きく3層に分かれます。
| 層 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| ① テーマ代 | テーマ本体のライセンス料 | 0円〜3万円台(買い切り・複数サイト可のものが多い) |
| ② 移行作業費 | 設定移植・デザイン再現・表示崩れの修正 | 15万〜120万円 |
| ③ 復旧・再構築費 | 前テーマ依存の機能を作り直す | 0円〜80万円(依存の量次第) |
見積もりが高く見える原因はほぼ②と③です。①は誤差のような金額でしかありません。
ここを誤解したまま相見積もりを取ると、「A社は30万、B社は120万。B社はぼったくり」という読み違いが起きます。実際には、B社が③まで含めて見積もり、A社が②だけを見ていた——というケースが少なくありません。金額の差ではなく、見積もりに含まれている層の差を見てください。
費用は左から右へ行くほど跳ね上がります。見積もりを比べるときは「どこまで含んでいますか」を必ず聞いてください。
なぜテーマを変えると作業が発生するのか
WordPressのテーマは、見た目を差し替える皮ではありません。投稿の中身以外の多くが、テーマ側に保存されているからです。
テーマを切り替えると、次のものは原則としてリセットされます。
- テーマカスタマイザーで設定した色・フォント・ロゴ・レイアウト
- テーマ独自のウィジェットとその配置
- テーマ付属のショートコード(
[box][btn]のような独自タグ) - テーマ同梱のスライダー・料金表・タブなどの機能
- 記事本文に埋め込まれた、テーマ専用のブロックやパターン
投稿データそのもの(タイトル・本文・画像)はデータベース側に残るので消えません。ただし本文の中にテーマ専用のショートコードが書かれていると、切り替えた瞬間に文字列がそのまま表示されます。「[btn href=…]」という文字が記事に出てしまう、あの状態です。
記事数が多いサイトほど、この置換作業に工数がかかります。ここが見積もりの分かれ目になります。
パターン別・テーマ変更の費用相場

「ケースバイケース」で終わらせないために、現場で頻出する4パターンに分けて金額帯を出します。前提はいずれも既存サイトが稼働中で、公開したまま切り替えるケースです。
| パターン | 状況 | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| A. 同系統テーマへの載せ替え | ブロックテーマ同士、または同じ制作元の後継テーマ | 15万〜35万円 | 2〜3週間 |
| B. 別系統テーマへの載せ替え | クラシックテーマ → ブロックテーマなど系統が変わる | 40万〜90万円 | 1〜2か月 |
| C. 見た目も作り直す | テーマ変更に合わせてデザインも刷新 | 80万〜200万円 | 2〜3か月 |
| D. オリジナルテーマ化 | 既製テーマをやめて専用テーマを起こす | 150万〜400万円 | 3〜4か月 |
A. 同系統テーマへの載せ替え(15万〜35万円)
いちばん軽いパターンです。同じ思想で作られたテーマ同士なら、設定項目の対応関係が取りやすく、記事本文への影響も限定的です。
含まれる作業:
- テスト環境の構築とバックアップ
- テーマ設定の移し替え(手作業。自動移行ツールは基本的にない)
- メニュー・ウィジェットの再設定
- 全ページの表示確認と崩れ修正
- 本番反映と反映後の確認
20ページ程度の小規模サイトなら15万円台、50ページを超えると確認工数だけで膨らみ30万円台に寄ります。費用はページ数よりも「確認すべきテンプレートの種類数」で動くと考えてください。トップ・一覧・記事詳細・固定ページ・問い合わせで5種類、そこに会社概要や採用など独自レイアウトが増えると加算されます。
B. 別系統テーマへの載せ替え(40万〜90万円)
クラシックテーマからブロックテーマへ移る場合など、テンプレートの仕組みごと変わるケースです。ここから金額が一段上がります。
上がる理由は3つあります。
- テンプレートを作り直す必要がある——PHPテンプレートからブロックテンプレートへ、構造から書き換える
- 記事本文の一括置換が要る——旧テーマのショートコードを、新しい形式に変換する
- プラグインの相性確認が増える——テーマ依存で動いていたプラグインが効かなくなる
特に2が見落とされがちです。記事が300本あって、そのうち120本に独自ショートコードが使われている——という状況は珍しくありません。置換は正規表現で機械的に処理できますが、処理前の棚卸しと処理後の目視確認に時間がかかります。
C. 見た目も作り直す(80万〜200万円)
テーマを変えるついでにデザインも刷新するパターン。実質はリニューアルです。この場合、テーマ変更は手段であって目的ではないので、見積もりは「デザイン費+実装費+移行費」の積み上げになります。
このパターンを選ぶなら、テーマ変更として発注せず、リニューアルとして要件を書いたほうが結果的に安くなります。「テーマ変更でお願いします」と言うと、制作会社は既存デザインの再現を前提に見積もるので、後から「ここも変えたい」が積み上がって追加費用になるからです。
要件の書き方は下の記事にテンプレートを置いています。
D. オリジナルテーマ化(150万〜400万円)
既製テーマをやめて、そのサイト専用のテーマを起こすパターン。テーマ自体の制約から解放される代わりに、保守の責任がすべて自社側に来ます。
判断軸はシンプルで、次のどれかに当てはまるなら検討の価値があります。
- 既製テーマのカスタマイズ費が、年間で50万円を超えている
- テーマのアップデートのたびに表示が壊れて、その復旧に費用が出ている
- 更新を担当する社内メンバーが、テーマの複雑さで手が止まっている
逆に、月数回の記事更新しかしないサイトでオリジナルテーマを起こすのは、費用に見合いません。
見積もりが膨らむ「見えない5項目」

ここからが本題です。制作会社の見積書に項目として出てこないのに、実際には工数を食っている部分を挙げます。この5つを発注時に自分から確認できると、見積もりの精度が上がり、追加費用も防げます。
1. テスト環境の用意(5万〜15万円)
稼働中のサイトのテーマを本番でいきなり切り替える制作会社は、まともなところなら存在しません。必ずステージング環境(本番の複製)を作って、そこで切り替え・確認をしてから本番に反映します。
サーバーによってはステージング機能が標準で付いているので、その場合は費用が下がります。契約しているサーバーにステージング機能があるかどうかを、見積もり依頼時に伝えてください。これだけで数万円変わります。
2. 記事本文の一括置換(記事数に比例)
前述のショートコード置換です。相場としては、対象記事50本までで5万〜10万円、300本規模で20万〜40万円といったところ。ただし置換パターンの種類数のほうが効きます。1種類のショートコードを300本置換するより、10種類を80本に散らばったまま置換するほうが高くつきます。
発注前に自分で確認できることがあります。WordPress管理画面の投稿一覧で検索窓に [ を入れて検索すると、ショートコードを含む記事がだいたい拾えます。その件数を見積もり依頼書に書くだけで、各社の見積もり精度が揃います。
3. 独自機能の再実装(0円〜80万円)
テーマに付いていた機能を、別の手段で用意し直す作業です。よくあるのは次のようなもの。
| 前テーマの機能 | 代替手段 | 費用感 |
|---|---|---|
| 目次の自動生成 | プラグイン導入 | 1万〜3万円 |
| 記事ランキング | プラグイン or 自作 | 3万〜15万円 |
| 会員限定エリア | プラグイン(有料の場合が多い) | 10万〜40万円+年額 |
| 独自の商品一覧・実績一覧 | カスタム投稿タイプで再構築 | 20万〜80万円 |
| 予約フォーム | 外部サービス連携 | 10万〜30万円+月額 |
いちばん怖いのが最後から2番目です。実績一覧や商品一覧が、テーマ独自の投稿タイプで作られていると、テーマを外した瞬間にデータごと管理画面から見えなくなります。データは消えていませんが、表示も編集もできない状態になります。
これを避けるには、テーマ変更前に「カスタム投稿タイプがどこで定義されているか」を確認し、テーマ側で定義されているならプラグイン側へ移す作業を先に挟みます。この作業は10万〜25万円程度で、テーマ変更本体とは別に見積もられるのが普通です。
4. 再検証すべきものの洗い出し(5万〜20万円)
テーマを変えると、見た目以外にも影響が出ます。
- 計測タグ——テーマのヘッダー設定欄に直接貼られていた場合、切り替えで消えます
- 構造化データ——テーマが出力していた場合、新テーマでは形式が変わることがあります
- 問い合わせフォーム——動作は残りますが、見た目が崩れて送信ボタンが押せなくなる例があります
- 表示速度——テーマによって読み込むファイルが変わるので、速くも遅くもなります
計測タグは特に見落とされます。テーマの設定欄に貼ってある計測コードは、テーマを変えた瞬間に消え、そのまま誰も気づかずに数か月分のデータが欠ける——これは実際によく起きます。タグマネージャー経由に移してからテーマを変えるのが安全です。
5. 切り替え後の様子見期間(0円〜10万円)
本番反映した直後が、いちばん問題が出る時間帯です。全ページを確認していても、検索経由でしか来ない古いページや、特定の環境でだけ起きる崩れは残ります。
契約に「反映後2週間の不具合対応」が含まれているかを確認してください。含まれていない見積もりは、その分安く見えているだけです。この期間の対応を別途対応にすると、1件あたり2万〜5万円の作業費が発生します。
追加費用を防ぐ、発注前の3ステップ
追加費用は「制作会社が後出しした」から発生するのではなく、発注時点で情報が足りていなかったから発生します。着手後に判明した作業は、見積もりに入っていないので当然追加になる。ここは制作会社を責めても解決しません。
先に情報を出しておくのがいちばん効きます。
この3つをやるだけで、見積もりの差が「会社ごとの単価差」に収束します。情報を渡さないまま取った見積もりは、各社が別々の想定で出しているので比較になりません。
ステップ1:棚卸しシートを自分で作る
制作会社に渡す情報として、最低限これだけあれば見積もりの精度が揃います。
| 項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 固定ページ数 | 管理画面「固定ページ」の件数 |
| 投稿記事数 | 管理画面「投稿」の件数 |
| ショートコードを含む記事数 | 投稿一覧で [ を検索 |
| 使用中プラグイン一覧 | 「プラグイン」画面のスクリーンショット |
| 現在のテーマ名・バージョン | 「外観 → テーマ」 |
| カスタム投稿タイプの有無 | 管理画面左メニューに「投稿」「固定ページ」以外の項目があるか |
| サーバー名・プラン | 契約情報 |
このシートを渡すだけで、各社の見積もりは驚くほど揃います。逆に言えば、この情報がないまま出てきた見積もりは、後から必ず動きます。
ステップ2:「今と同じ見た目」なのか「変えていい」のかを決める
これが金額をいちばん左右する条件です。
新テーマの標準デザインに合わせる
- 再現作業がほぼ不要で費用が下がる
- 期間も短く済む
- 社内の合意形成だけ先に必要
今の見た目を完全再現する
- CSSの書き足しが大量に発生
- 新テーマの利点を潰すことがある
- 費用が1.5〜2倍になりやすい
テーマを変える目的が「更新しやすくする」「速くする」なのであれば、見た目の完全再現にこだわらないほうが目的に近づきます。逆に、ブランドの規定が厳しくて1pxも動かせないなら、その条件を最初に伝えないと後で揉めます。
ステップ3:子テーマの扱いを確認する
現在のサイトが子テーマで運用されているかどうかで、話が変わります。子テーマに独自のCSSやPHPが書かれている場合、その中身は新テーマには引き継がれません。
「子テーマに何がどれだけ書かれているか」は、制作会社が最初に見る場所です。ここが薄ければ移行は軽く、分厚ければ移行は重い。自社で把握していなくても構いませんが、「前の制作会社が触っていた」という事実だけは伝えてください。
子テーマの仕組みそのものについては下の記事にまとめてあります。
テーマ変更で「安く済ませる」ための判断
費用を下げる方法は3つしかありません。作業を減らすか、条件を緩めるか、時期をずらすかです。
移行の範囲を切る
全ページを一度に移すのをやめて、テンプレートの種類ごとに段階移行する方法があります。トップと記事詳細だけ先に移し、採用ページや古いキャンペーンページは後回しにする。閲覧数の少ないページに同じ確認工数を払う必要はありません。
アクセス解析で下位のページ群を特定し、「これは今回の対象外」と明記して見積もりを取ると、確認工数が減ります。対象を絞った分だけ、確認・修正の工数は素直に下がります。
記事本文の置換を社内でやる
ショートコード置換は、機械的な作業の割に単価が付きます。パターンが1〜2種類で記事数が50本以下なら、社内でやったほうが早く安いこともあります。
ただし一括置換プラグインを使った作業は、失敗すると全記事が壊れます。必ずバックアップを取ってから実施すること、そして「これは自社でやります」と制作会社に明言して責任範囲を分けておくことが条件です。曖昧なままだと、壊れたときにどちらが直すかで揉めます。
更新の少ない時期に合わせる
急ぎの案件は割増になります。制作会社の見積もりには「並行案件の中で優先して押し込む分」が乗るからです。
繁忙期に重ねない、キャンペーン直前に入れない。この2つを避けるだけで、同じ内容でも見積もりが下がることがあります。
テーマ変更を決める前に、実例を見て判断する
見積もりの妥当性を判断するのに、いちばん効くのは実物を見ることです。「このくらいの構成・このくらいの見せ方のサイトを作るには、どの程度の作り込みが要るのか」は、言葉で説明されるより実物を見たほうが早く掴めます。
Soreiine!!のギャラリーでは、WordPressで構築されたサイトを構成やジャンルから絞って見られます。テーマ変更を検討している段階で使うなら、次の見方をおすすめします。
- 自社と同じ規模のサイトを探す——ページ数・情報量が近いものを見て、自分のサイトの立ち位置を測る
- テンプレートの種類数を数える——トップ以外にどんなレイアウトがあるかを数えると、確認工数の見当がつく
- 更新頻度の高そうな部分を見る——お知らせ・実績・ブログがどう組まれているかで、移行の重さが変わる
制作会社との打ち合わせに「このサイトのような構成にしたい」と実物を持ち込むと、話が一気に具体化します。言葉で「シンプルに」「きれいに」と伝えるより、実例を1本持っていくほうが、見積もりの誤差が減ります。
ギャラリーを参考サイト選びの道具として使うなら、気になったサイトをブックマークして3〜5本に絞り、共通点を書き出しておくと、要件書がそのまま書けます。
費用の目安を先に知りたい方へ
ページ数や必要な機能を選ぶだけで概算を確認できる費用シミュレーターを用意しています。見積書を読み解く前の物差しとしてお使いください。
よくある質問
WordPressのテーマを変えると、記事は消えますか?
投稿・固定ページのタイトルと本文、画像はデータベースとメディアライブラリに保存されているので消えません。ただしテーマ専用のショートコードやブロックを使っていた部分は、切り替え後に文字列のまま表示されたり、レイアウトが崩れたりします。作業前に必ずバックアップを取ってください。
テーマ変更だけなら10万円以下でできませんか?
ページ数が10以下で、ショートコードや独自機能をまったく使っておらず、見た目の再現も求めないなら可能性はあります。ただし稼働中のサイトでテスト環境の用意と表示確認を含めると、15万円前後が現実的な下限です。それを大きく下回る見積もりは、どの工程を省いているかを確認してください。
テーマ変更でSEOの順位は下がりますか?
URLと本文が変わらなければ、順位が構造的に下がることはありません。ただし見出しタグの階層が変わる、構造化データが消える、表示速度が落ちる、内部リンクの配置が変わる——これらは順位に影響します。切り替え前後で同じページの表示速度と見出し構造を比較し、変わっていないことを確認する工程を見積もりに含めてもらってください。
有料テーマを買い直す必要はありますか?
多くの有料テーマは買い切りで複数サイトに使えますが、ライセンスの条件はテーマごとに異なります。1サイト1ライセンスのものもあれば、更新権が年額のものもあります。テーマ代自体は費用全体の1割にも満たないので、金額で選ぶより、移行後の保守のしやすさで選ぶほうが結果的に安くなります。
前の制作会社と連絡が取れなくても、テーマ変更はできますか?
できます。必要なのはサーバーの管理画面とWordPressの管理者権限の2つだけで、前の制作会社の協力は必須ではありません。ただし子テーマに独自のコードが書かれている場合、その意図を読み解く調査工数が乗るので、費用は上振れすると見ておいてください。
まとめ
WordPressのテーマ変更で見積もりが高く見えるのは、テーマ代ではなく移行作業費を見ているからです。判断材料を整理します。
- 費用の9割以上は移行作業費——テーマ代は0〜3万円台で、金額の判断材料にならない
- 相場は4パターン——同系統15万〜35万円、別系統40万〜90万円、デザイン刷新80万〜200万円、オリジナル化150万〜400万円
- 膨らむのは5項目——テスト環境・本文置換・独自機能の再実装・再検証・様子見期間
- 追加費用は情報不足から生まれる——棚卸しシートを自分で作って全社に同じ情報を渡す
- 見た目の条件が金額をいちばん動かす——完全再現を求めると1.5〜2倍になる
最初にやるべきは、管理画面を開いてページ数・記事数・プラグイン一覧を数えることです。この30分の作業が、見積もりの精度と後の追加費用を決めます。





