この記事の対象: AIで記事や原稿を書いている制作者・発注担当者
読了時間: 約12分
AIに書かせた原稿を、そのまま公開していいのか。この判断で手が止まる人が増えています。
読むと文章としては整っている。誤字もない。でも何かが引っかかる。その「何か」を言語化できないまま、結局は全文を人が読み直すことになり、「AIで効率化したはずなのに、チェックのほうが時間を食っている」という状態に陥る。制作会社の現場でも、これは実際に起きています。
問題は、AI原稿の粗さが普通の校正では引っかからない場所に出ることです。誤字脱字や表記ゆれを見るチェックリストは、AI原稿の一番危ない部分を素通りします。
この記事では、実際に記事制作を回すなかで固まってきた公開前の品質チェックの観点を、4つの軸に分けて整理します。あわせて、全文を人が読み直す以外の現実的な回し方——どこを機械に任せ、どこを人が見るかの線引きも示します。
AI記事の粗さは「文章の質」ではなく4か所に出る

最初に結論を置きます。AIが書いた記事を公開前にチェックするとき、確認すべきは大きく4つです。
1. 事実の裏取り
- 数字・固有名詞
- 制度・仕様の現在値
- 出典の実在確認
2. 言い切りの強さ
- 断定の根拠があるか
- 断定を避けすぎていないか
3. 言い回しの反復
- 接続詞の癖
- 段落の型の反復
4. 構成の平板さ
- 全見出しが同じ重み
- 一次情報の有無
上にあるものほど公開後の損害が大きく、下にあるものほど見逃されやすい。
この順番には意味があります。1は間違えると訂正・謝罪が発生する。2は信頼を削る。3と4は読者が離脱するだけで実害がないように見えますが、実際にはリピート読者がつかず、指名検索が伸びない形で効いてきます。
そして厄介なのは、下に行くほど「読めば分かる」が効かないことです。1の事実誤認は指摘されれば誰でも分かる。でも「この記事は言い回しが単調だ」は、一本だけ読んでいると気づけません。何本も並べて初めて見える。
なぜ普通の校正では引っかからないのか
従来の校正は、日本語として正しいかを見ます。誤字、脱字、表記ゆれ、てにをは、二重敬語。これらはAI原稿ではほとんど発生しません。むしろ人間が書いた原稿より少ないことが多い。
AI原稿が持ち込むのは、日本語として完璧なのに内容が空洞という状態です。
| 従来の原稿で起きやすい問題 | AI原稿で起きやすい問題 |
|---|---|
| 誤字脱字・表記ゆれ | ほぼ発生しない |
| 文が長すぎて読みにくい | 文の長さは適切に揃っている |
| 論理が飛ぶ | 論理はつながっているが浅い |
| 主張が強すぎる/弱すぎる | 根拠なく断定する/逆に全部を留保する |
| 情報が足りない | 情報量はあるが、どこかで読んだものばかり |
| — | 存在しない数字・出典を自然に混ぜる |
右の列は、どれも「読んで違和感がない」のが特徴です。だから読み直しても見つからない。見つけるには、読むのとは別の動作が要ります。
軸1:事実の裏取り——ここだけは人が一次情報に当たる
もっとも実害が大きく、かつ最も自動化しにくいのがここです。
危ないのは「もっともらしい数字」
AIが事実を誤る場合、明らかにおかしい内容より、ありそうな精度で少しずれているケースのほうが多い。「調査によると約7割が」「業界平均は3か月程度」といった書き方は、それらしく読めてしまいます。
制作現場で決めているのは、次の線引きです。
必ず一次情報に当たる
- 数字が入った文すべて
- 企業名・製品名・サービス名
- 法令・制度・補助金の要件
- ツールの仕様・料金・上限
- 「〜によると」の出典
- 日付・年号・バージョン
書き手の判断として通す
- 経験に基づく傾向の記述
- 手順・進め方の提案
- 考え方・判断軸の整理
- 比喩・言い換え
左側のリストは、例外を作らないことが重要です。「これは常識的な数字だから」と一つ通すと、線引きが崩れます。
特に誤りが集中する3つの領域
実際に運用していると、誤りが出やすい領域は偏っています。
ツールやAPIの仕様・料金。ここは短い周期で変わります。AIの学習データが古ければ、堂々と古い仕様を書きます。しかも直近の年号を但し書きとして添えてくることがある。料金表、プラン内容、上限値、APIのパラメータ——このあたりは全部、公式ページを開いて確認します。
制度・補助金の要件。申請期限、対象事業者、補助率。これらは年度で変わり、間違えると読者に実害が出ます。公募要領のPDFまで開いて、該当の条文を確認するのが最低ラインです。
[ホームページ制作にIT導入補助金は使える?申請前に確認すべきこと【2026年】](https://soreiine.jp/magazine/guide/cm-5258c8ea-it/)
相場・単価の数字。制作費の相場をAIに書かせると、それらしい金額帯が出てきます。ただしその根拠は不明で、いつの時点のものかも分からない。自社の見積実績や、出典が明示された公開調査に当ててから使うべき部分です。特に、実在する企業名やサイト名と金額を並べて書かせるのは避けます。「あの会社のサイトはいくらで作られた」という書き方は、公表された情報でない限り根拠を持てず、相手の信用にも関わります。費用の話は必ず、ページ数・機能・体制といった条件で分けた一般論として書きます。
出典の実在確認を省かない
「〜の調査によると」と書かれていたら、その調査を検索します。この一手間を省くと、存在しない調査を引用した記事が世に出ます。
実務でよくあるのは、調査自体は実在するが、数字が微妙に違うパターンです。丸ごとの捏造より、こちらのほうが見つけにくい。だからリンクを開いて、該当の数字をページ内検索するところまでやります。
存在が確認できない出典は、削除するか、出典なしの一般論に書き換える。「たぶんあると思う」で通さないことが、この工程の全てです。
軸2:言い切りの強さ——両方向にずれる
AI原稿の主張の強さは、両方向にずれます。根拠なく断定するときと、何も言い切らないときがある。
根拠のない断定
「〜すべきです」「〜が最適です」「必ず〜してください」。AIはこの形を好みます。読みやすいし、一見すると頼りになる。
問題は、その断定の根拠が本文のどこにも書かれていないことです。読者が「なぜ?」と思ったときに答えがない。
チェックの動作は単純で、断定している文を探して、その根拠が近くに書かれているかを見るだけです。根拠がなければ、根拠を足すか、断定をやめる。
| 原稿の記述 | 判断 | 直し方 |
|---|---|---|
| 「WordPressが最適です」 | 条件なしの断定 | どんな場合に最適かを付ける |
| 「必ず3社から見積もりを取りましょう」 | 根拠が不明 | なぜ3社なのかを1文足す |
| 「〜は避けるべきです」 | 避ける理由がない | 起きる不都合を具体化する |
| 「規模が20ページを超えるならCMSを検討します」 | 条件付きの判断 | 通す |
全部を留保する逃げ
逆のずれもあります。「ケースバイケースです」「一概には言えません」「状況によって異なります」。
これは事実として正しいのですが、読者が記事を読む前から知っていることです。書いても情報が増えない。
制作会社側が原稿を書くとき、この逃げが出やすい場面は決まっています。金額、期間、そして「どちらを選ぶべきか」。ここで留保すると、読者は判断材料を持たないまま記事を閉じます。
対処は、留保する代わりに条件で分けることです。「ケースバイケース」と書きたくなったら、そのケースを2〜3パターン書き出す。書き出せないなら、自分が分かっていないということなので、そこは調べ直す対象です。
判断軸を条件で分けて示している例として、依頼先の選び方を扱った記事があります。
[フリーランスと制作会社どっちに依頼?違いと費用以外の判断軸【2026年】](https://soreiine.jp/magazine/guide/freelance-vs-agency-which-to-hire-difference/)
一人称と体験の偽装
もう一つ、公開前に必ず潰すのがここです。AIは「筆者が担当した案件では」「実際に試したところ」といった、体験していない体験を書きます。
これは事実誤認より性質が悪い。読者は体験談として読むので、信頼の置き方が変わってしまいます。
原稿から「実際に」「筆者は」「試してみたところ」といった語を全て拾い、その体験が本当にあるかを一つずつ確認する。なければ削る、または本当の経験に置き換える。記事に経験を載せたいなら、AIに書かせるのではなく、人が自分の経験を渡してから書かせる順番にします。
具体的には、執筆の指示を出す前に「この案件でこう詰まった」「この質問を何度も受けた」というメモを箇条書きで渡す。渡していない体験は原稿に出てこないので、指示に無い体験談が出てきたら全部が創作と判断できます。この判定ができるだけで、確認の速度がまるで変わります。
軸3:言い回しの反復——一本では見えない
ここから先は、記事単体ではなく複数本を並べて初めて見える問題です。
接続詞と文末の癖
AIには好む接続詞があります。「さらに」「また」「そして」「加えて」。文末では「〜と言えるでしょう」「〜が重要です」「〜ではないでしょうか」。
一本の記事の中でも多用されますが、本当に問題になるのは記事をまたいだときです。公開した記事が全部「さらに」で段落を始めていると、メディア全体が同じ声で喋っているように読める。個別の記事に問題がなくても、媒体としての信頼が積み上がらない。
これは機械で数えられます。頻出語をカウントして、出現回数が閾値を超えたら赤を出す。人が読んで判断する必要はありません。
| 検出対象 | 目安 | 対処 |
|---|---|---|
| 同じ接続詞 | 1記事で4回以上 | 削るか言い換える |
| 「〜と言えるでしょう」等の推量文末 | 1記事で3回以上 | 断定か削除に寄せる |
| 同じ文末の3連続 | 1か所でも | 1つ崩す |
| 記事間での定型フレーズ | 複数記事に同一表現 | 媒体NGワードに登録 |
この数値は運用しながら調整する前提のもので、絶対的な基準ではありません。重要なのは、閾値を決めて機械に数えさせるという構造のほうです。人の目に頼ると、その日の疲れ具合で通ったり落ちたりします。
段落の型の反復
もっと見えにくいのが、段落の構造そのものの反復です。
AIが書く段落は、「主張を書く→理由を書く→まとめ直す」という同じ型を繰り返す傾向があります。一つひとつは正しい書き方なのですが、これが全段落で繰り返されると、読んでいるうちに拍子が単調になる。
対処としてやっているのは、記事の中に型の違う段落を意図的に混ぜることです。いきなり結論だけの1文段落を置く。逆に前提を長く書いて結論を置かない段落を作る。会話や現場の具体を挟む。
この作業は人がやります。ただし、全文を読み直す必要はありません。見出し直下の段落だけを拾って読めば、型の反復はすぐ見えます。
軸4:構成の平板さ——AIが一番苦手なところ
全ての見出しが同じ重みになる
AIに構成を作らせると、H2が5つ並び、それぞれの下にH3が3つずつぶら下がる、という整った形が出てきます。見た目は整然としている。
でも実際の記事では、重要な章とそうでない章があるはずです。読者にとって本当に価値のある章は長く深く、周辺的な章は短く。この濃淡がないと、読者はどこを読めばいいのか分からない。
濃淡のある構成
- 核心の章に文字数の4割を割く
- 前提説明は短く畳む
- 読者が知っていることは飛ばす
- 章ごとに書き方を変える
AIが出しがちな構成
- 全章がほぼ同じ長さ
- 各章にH3が3つずつ
- 前提から順に全部書く
- 全章が同じ型で進む
チェックの動作は、見出しだけを抜き出して並べて見ることです。本文を読まずに目次だけを見て、「この記事の核心はどこか」が分かるか。分からなければ構成に濃淡がない。
濃淡を作るときに使っているのは、見出しごとに「この章は読者の何を解決するか」を1行で書き出す方法です。同じことを解決している章が2つ出てきたら、片方は畳める。書き出せない章は、そもそも読者のために存在していないので削る。目次だけを見ていると気づけないダブりが、この1行でほぼ全部出てきます。
一次情報が一つも入っていない
平板さの最終的な正体はこれです。どこかで読んだことのある情報だけで構成されている。
AIは学習データにあるものを再構成するので、その媒体でしか読めないものは原理的に出てきません。出せるのは人だけです。
記事に載せられる一次情報には、こういうものがあります。
- 自社で実際に受けた相談の傾向(個別案件が特定されない形で)
- 実際に見積もりを出すときの計算の組み立て方
- ツールを触ってみて詰まった箇所と、その回避方法
- 現場で運用してみて、想定と違った点
- 業界で当たり前だが、発注側には知られていないこと
公開前チェックの最後に置いているのは、「この記事に、他の記事には書いていない情報が1つ以上あるか」という問いです。ここに答えられない記事は、書き直すか公開を見送る。
たとえば費用の話でも、「相場はいくら」だけならどこにでもあります。値段の内訳がどう積み上がっているか、どの条件で金額が動くのかまで踏み込むと、初めてその媒体の記事になります。
[ホームページの維持費は年間いくら?|項目別に積み上げて相場を解説](https://soreiine.jp/magazine/cost/homepage-maintenance-cost-annual-breakdown/)
全文を読み直さずに回す——3段構えの品質チェック
ここまでの4軸を全部、人が全文を読んで見ようとすると破綻します。AIで書く意味がなくなる。
実際に回しているのは、3つの段に分ける形です。
第1段:機械が数えられるものは人が見ない
自動で落とせるのは、次のようなものです。
- 頻出語のカウント(接続詞・文末表現)
- 同じ文末の連続
- 媒体NGワードの検出(「筆者」「私たち」など、媒体で使わないと決めた語)
- 見出し階層の破綻(H2の下にいきなりH4など)
- 文字数と見出し数のバランス
- 数字を含む文の抽出(後段で人が見るためのリスト作り)
最後の項目が効きます。数字を含む文だけを機械で抜き出してリスト化すると、人が裏取りする対象が明確になる。長い記事でも、数字入りの文が十数本に絞れれば、人はその十数本だけを確認すればいい。全文を読む必要がありません。
この抽出は正規表現で十分に組めます。全角・半角の数字、「約」「以上」「以下」「割」「倍」を含む文を拾い、行番号付きで出す。特別なツールを買う必要はなく、テキストエディタの検索機能と手元のスクリプトで足ります。
第2段:人が見るのは4種類だけ
第1段を通ったら、人が見るのは限定された箇所です。
| 見る対象 | 何を判断するか | 目安時間 |
|---|---|---|
| 数字・固有名詞を含む文 | 出典に当たって正しいか | 1本あたり1〜3分 |
| 断定している文 | 根拠が本文にあるか | まとめて5分 |
| 見出しの一覧 | 構成に濃淡があるか | 3分 |
| 「実際に」「試した」を含む文 | 体験が実在するか | 2分 |
長文の記事でも、ここまでで30〜40分程度に収まります。全文を丁寧に読み直すより短く、しかも見落としが減る。人の集中力は全文に薄く配るより、限定した箇所に厚く配るほうが精度が出ます。
このとき、確認した結果をその場で原稿に書き込まないことも決めています。裏取りの最中に文章を直し始めると、確認の手が止まって残りが雑になる。確認は確認で最後まで通し、修正はまとめて後からやる。順番を分けるだけで、同じ工数でも精度が上がります。
第3段:通し読みは修正後に1回だけ
第2段の修正を反映してから、最初から最後まで1回通して読みます。ここで見るのは、読んでいて拍子が単調でないかという一点だけです。
事実確認も断定チェックも第2段で済んでいるので、この通し読みは速く回せます。引っかかる箇所があれば止めて直す。引っかからなければ公開。
AIにチェックさせるなら、書かせたAIとは分ける
「チェックもAIにやらせればいい」という話が出ますが、注意点が一つあります。
書いたAIに同じ原稿をチェックさせても、自分の誤りは見つけにくい。事実の誤りを指摘させても「問題ありません」と返ってくることが多い。裏取りの工程を代替するものではありません。
AIに任せて効果があるのは、判断ではなく抽出です。
- 「この原稿から数字を含む文を全部抜き出して」
- 「断定している文を全部抜き出して」
- 「同じ趣旨を繰り返している段落のペアを挙げて」
抽出させて、判断は人がやる。この分担なら精度が落ちません。逆に「この原稿は公開していいですか」と聞くのは、質問の形が間違っています。抽出を頼むときも、要約させずに原文のまま引用させるのが肝心です。要約されると、確認すべき数字や言い回しがその時点で変形してしまいます。
発注側がチェックできるようにする——納品時の取り決め

ここからは発注者側の話です。制作会社やライターに記事を発注していて、成果物にAIが使われている場合、何を取り決めておくべきか。
「AIを使ったか」を聞いても意味がない
まず、この質問は実務的に機能しません。使っていないと答えられれば確認しようがないし、使っていても部分的な利用なら線引きが曖昧です。
聞くべきなのは、どうチェックしているかです。
発注時に確認する4項目
| 確認項目 | 望ましい回答 | 危ない回答 |
|---|---|---|
| 数字・出典の確認方法 | 一次情報に当たって確認している | 「信頼できる情報源から」 |
| 事実誤認が出た場合の対応 | 修正と再発防止の手順がある | 「起きないようにしています」 |
| チェックの担当 | 書いた人とは別の人が見る | 書いた人が見直す |
| 納品物の責任範囲 | 契約書に記載がある | 口頭のみ |
3番目が地味に効きます。書いた人が自分の原稿をチェックする体制だと、人間でもAIでも見落としが増える。別の目が入る体制かどうかは、金額にも表れる部分です。
チェック工数は見積に載っているか
AI活用で制作費が下がる、という話の裏で、チェック工数が見積から消えていることがあります。
執筆の単価は下がったが、その分のチェックが誰もやっていない。結果として、公開後に発注側が誤りを見つけて差し戻す、という形で工数が発注側に移っているだけ、というケースです。
見積を見るときは、「執筆」の項目だけでなく「校正」「ファクトチェック」「編集」に相当する項目があるかを確認します。これが無い見積は安く見えますが、その工程が消えているか、発注側に移っているかのどちらかです。
見積の項目が何を意味するかという読み方は、工程が省かれる構造を扱った記事でも整理しています。
[格安ホームページが安い理由と注意点|省かれる工程の見抜き方【2026年】](https://soreiine.jp/magazine/cost/homepage-cheap-reason-caution-process-guide/)
公開後の訂正フローを先に決めておく
そして、これが一番抜けやすい取り決めです。
事実誤認は、どれだけチェックしても完全にはゼロになりません。重要なのは、見つかったときにどう直すかを先に決めておくことです。
- 誰が訂正を判断するか
- 訂正の記載を記事に残すか、黙って直すか
- 制作会社の責任で直すのか、追加費用が発生するのか
- 対応の期限は何日か
このうち「訂正の記載を残すか」は、媒体の姿勢が出る部分です。黙って直すほうが体裁はいいのですが、読者が古い情報を根拠に動いている可能性を考えると、日付付きで訂正を記載するほうが誠実です。
検収の条件に「事実確認」が含まれているかどうかも、先に決めておく対象です。検収の範囲が「表記と体裁」までなら、公開後に見つかった事実誤認は発注側の負担になります。ここを曖昧にしたまま納品を受けると、訂正のたびに費用と責任の話から始めることになります。
この型を運用に載せるときの落とし穴
最後に、実際に回してみて分かった注意点を3つ。
チェックリストを長くしすぎる
観点を増やすほど精度が上がる気がしますが、項目が20を超えると誰も使わなくなります。使われないチェックリストは、無いのと同じです。
この記事で挙げた4軸のうち、実務で毎回見ているのは実質「数字」「断定」「見出しの濃淡」「一次情報の有無」の4点です。それ以外は機械に寄せています。
機械の検出結果を無条件で直す
反復語の検出は便利ですが、検出されたから直す、という運用にすると文章が壊れます。同じ語を意図的に繰り返している箇所もある。
検出はあくまで「ここを見てください」という指差しで、直すかどうかは人が決める。この線引きを崩すと、機械的に言い換えた不自然な日本語が残ります。
チェックの記録を残さない
同じ誤りが繰り返し出る場合、それはプロンプトや指示の構造に原因があります。記録がないと、毎回その場で直して終わりになり、根本が直りません。
やっているのは単純な記録です。「どの記事で、どの軸の、どんな誤りが出たか」を1行ずつ残す。何本か溜まれば傾向が見えて、指示の側を直せます。
記録から実際に見えてくるのは、たいてい指示の抜けです。出典の形式を指定していなかったから出典が曖昧になる。読者の前提知識を書いていなかったから前提説明が冗長になる。原稿を直すより、指示を1行足すほうが、次の記事から効きます。
チェックは減らすものではなく、同じチェックを二度やらなくて済むように仕組みへ移していくものです。
よくある質問
AIで書いた記事は検索で不利になりますか
書き方がAIかどうかではなく、記事の中身が評価されます。問題になるのは、一次情報がなく、どこかで読んだ内容の再構成で終わっている記事です。これは人間が書いても同じ評価になります。AIを使っていること自体より、公開前の品質チェックを省いた結果として内容が薄くなることのほうがリスクです。
AIが書いた記事だと明記する必要はありますか
一律の法的義務があるとは言えませんが、媒体として方針を決めておくべきです。明記するかどうかより、事実誤認があったときに誰が責任を持つかを社内で決めておくほうが実務的に重要です。外部に発注している場合は、その責任範囲を契約書に書いておきます。
公開前チェックにどれくらい時間をかけるべきですか
記事の性質によります。数字や制度を扱う記事は執筆時間と同程度、場合によってはそれ以上かかります。考え方や手順を整理する記事なら、それより短く回せます。一律の目安を決めるより、「数字を含む文が何本あるか」で必要時間を見積もるほうが実態に合います。
AIのファクトチェックツールを使えば人の確認は不要になりますか
現時点では不要にはなりません。ツールが得意なのは、確認すべき箇所を抽出することです。抽出された箇所が正しいかを一次情報に当たって判断する部分は、人が担当する前提で設計してください。抽出の自動化だけでも、確認にかかる時間はかなり短縮できます。
社内で記事を書く場合、品質チェックの担当は誰にすべきですか
書いた人とは別の人が望ましいです。書いた本人は内容を理解しているので、抜けている前提や根拠のない断定に気づきにくくなります。人員が足りない場合は、書いた直後ではなく1日空けてから見る、という運用でも効果があります。
まとめ
AI記事の公開前チェックで見るのは、4か所です。
- 事実の裏取り — 数字・固有名詞・出典は例外なく一次情報に当たる
- 言い切りの強さ — 根拠のない断定と、全部を留保する逃げの両方を潰す
- 言い回しの反復 — 機械で数えて、直すかは人が決める
- 構成の平板さ — 見出しだけを並べて濃淡を見る。一次情報が1つ以上あるか
そして回し方は3段。機械で落とせるものは人が見ない。人が見るのは抽出された箇所だけ。通し読みは修正後に1回。
この型の狙いは、チェックを増やすことではありません。人の集中力を、機械にできない判断だけに配ることです。数字の裏取りと、一次情報が入っているかの判断。この2つだけは人がやる必要があり、それ以外は仕組みに寄せられます。
発注側として見るべきポイントは、見積にチェック工数が載っているか、書いた人とは別の目が入るか、公開後の訂正フローが決まっているか。この3点を発注前に確認しておくと、公開後に慌てる場面がかなり減ります。
