この記事の対象: ホームページの納品を控えている、または納品直後で修正範囲に悩んでいる企業担当者
読了時間: 約8分
「ここ、ちょっと直してほしいんですが」と制作会社に伝えたら、追加費用を請求された——。
ホームページの納品前後で、こんな場面にモヤモヤしたことはないでしょうか。制作会社側に悪意があるわけではありません。ほとんどの場合、「不具合」と「仕様変更」の線引きが、お互いの間で共有されていなかったことが原因です。
この記事では、どこまでが無償修正でどこからが有償になるのか、その判断基準を整理します。契約前に確認しておくと揉めにくくなる項目もまとめました。これから制作会社に依頼する方も、すでに納品を受けた方も、自社の状況と照らし合わせながら読んでみてください。
納品後の修正で揉めるのは「定義のズレ」が原因

同じ「修正」でも、意味が違う
発注側にとっての「修正」は、「思っていたのと違うから直してほしい」。ここに悪意はありません。お金を払っているのだから、イメージ通りのものが納品されるべきだ、という感覚は自然なものです。
一方、制作側にとっての「修正」には2種類あります。「仕様どおりに動いていない箇所を直す」ことと、「完成後に仕様そのものを変える」こと。前者は制作側の責任で直すべきものですが、後者は新たな作業が発生するため費用がかかります。
この2つが区別されないまま話が進むと、「え、これ追加料金なんですか?」「いや、これは仕様変更なので……」というやり取りが生まれます。
見積書の「修正対応込み」は万能ではない
見積書に「修正2回まで対応」と書かれていても、それが何を指しているかは会社によって異なります。デザイン段階での修正だけを指す場合もあれば、コーディング後の調整を含む場合もある。「修正対応込み」の一文だけで安心するのは危険です。
不具合と仕様変更の違い|判断基準を整理する

ここが一番大事なポイントです。「不具合(バグ)」と「仕様変更」の違いを、具体例で整理します。
無償で対応されるべき「不具合」
不具合とは、「仕様書や合意した内容のとおりに作られていない」状態のことです。2020年の民法改正以降は「契約不適合」と呼ばれ、発注側は修正(追完)を求める権利があります。
具体的には、次のようなケースです。
- リンクをクリックしても正しいページに遷移しない
- スマートフォンで表示が崩れる(レスポンシブ対応が仕様に含まれていた場合)
- お問い合わせフォームの送信ボタンを押してもメールが届かない
- 提供した原稿と異なるテキストが掲載されている
- 対応ブラウザとして契約に明記されたブラウザで表示が大きく崩れる
これらは制作側の実装ミス、または仕様の反映漏れにあたります。納品後であっても、合意した仕様の範囲内であれば無償で修正を求めるのが筋です。
有償になる「仕様変更」
仕様変更とは、「一度OKを出した内容を、あとから変えたい」という依頼です。
- トップページのメインビジュアルを別の写真に差し替えたい
- ナビゲーションの構成を変えて、ページの並び順を入れ替えたい
- 当初の予定になかったページを追加したい
- お問い合わせフォームの入力項目を増やしたい
- 配色やフォントの雰囲気を変えたい
これらは「完成品に対する追加の要望」にあたり、新たな工数が発生します。制作会社が追加費用を提示するのは妥当な対応です。
不具合(無償修正)
- 仕様どおりに動いていない
- 合意した内容と成果物が一致しない
- 制作側の責任で対応すべき
仕様変更(有償対応)
- 合意後に要望が変わった
- 完成品に新しい機能や要素を追加
- 追加の作業工数が発生する
判断に迷ったときは、「これは最初に合意した仕様書(またはデザインカンプ)に載っていたかどうか」を基準にすると整理しやすくなります。
グレーゾーンになりやすい5つのケース
実際の現場では、白黒つけにくいケースもあります。よくあるものと、その判断の目安をまとめました。
| ケース | 判断のポイント |
|---|---|
| 文字サイズを少し大きくしたい | デザイン確定後の変更なので原則は仕様変更。ただし軽微な調整として無償で応じてくれる会社も多い |
| 写真を別のものに差し替えたい | 素材の入れ替え作業は仕様変更。CMSで自分で差し替えられる設計なら費用はかからない |
| スマホで見たら使いにくい | レスポンシブ対応が仕様に含まれていれば不具合。含まれていなければ追加の対応 |
| SEO対策が不十分に感じる | meta情報やalt属性の設定漏れは不具合。検索順位の保証は通常、制作の契約範囲外 |
| ページの表示速度が遅い | 合意した速度基準があれば不具合。基準がなければ改善提案として有償になりやすい |
すべてに共通するのは、「契約時に合意があったかどうか」が分かれ目だということ。つまり、揉めないためには契約前の詰め方が大事です。
修正内容の伝え方そのものに不安がある場合は、こちらの記事も参考になります。
契約前に確認しておきたい6つの項目

修正を巡るトラブルの大半は、契約の段階で「曖昧にしたまま進めた」ことに起因します。遠慮せずに確認しておきたい項目を整理しました。
| 確認項目 | 何を確認するか | 曖昧なまま進めると起きること |
|---|---|---|
| 契約不適合責任の期間 | 納品後いつまで不具合対応が可能か | 「保証期間は終了しています」と断られる |
| 修正回数の定義 | 「修正○回」がどの工程を指すか(デザイン段階か、コーディング後か、全工程か) | 回数を使い切った自覚がないのに追加費用を請求される |
| 対応ブラウザ・デバイス | どのブラウザ・端末での表示を保証するか | 特定の端末で表示が崩れたとき、不具合か仕様外かで揉める |
| 軽微な修正の扱い | テキスト修正や画像差し替えが含まれるか。何件まで対応可能か | テキスト1文字の修正でも費用が発生する |
| 追加費用の単価 | 有償対応が発生した場合の時間単価や最低料金 | 想定外の金額を請求される |
| 保守契約の有無と内容 | 月額保守の対応範囲・料金 | 公開後にトラブルが起きたとき、頼る先がない |
「細かいことを聞いたら嫌がられるかも」と遠慮する方もいますが、こうした確認をきちんとする発注者のほうが、制作側も安心して進められます。聞いて嫌な顔をする会社であれば、公開後の対応にも不安が残ります。
「納品して終わり」にしない付き合い方を考える

ここまで、不具合と仕様変更の線引きや、契約時の確認項目について整理してきました。ただ、一歩引いて考えると、もっと根本的な問いがあります。
ホームページは、納品された時点で完成なのか?
多くの場合、答えはNoです。サイトは公開してからが本番で、実際のユーザーの動きを見ながら調整を重ねていくもの。公開後に「ここを変えたい」と感じるのは、サイトをちゃんと見ている証拠であり、むしろ健全なことです。
問題は、「変えたい」が出てきたときに、誰に・いくらで・どこまで頼めるのかが決まっていないこと。制作した会社と運用を担当する人が別々で、情報の引き継ぎもなければ、小さな修正ひとつにも余計な時間とコストがかかります。結果として「面倒だから放置しよう」となり、サイトの価値が少しずつ下がっていく——。こうしたケースは珍しくありません。
「問いを立てる → デザインに落とし込む → 作りきる → 数字で確かめる → 育て続ける」。こうした一連の流れを分断せずに進める考え方があります。最初にしっかり要件を詰めるから不具合が減り、公開後も数字を見ながら改善を続けるから、そもそも「修正が有償か無償か」で揉める場面自体が少なくなる。戦略と制作と運用がつながっていれば、ちょっとした変更にも文脈が共有されているので、話が早いのです。
制作会社を選ぶ段階で「公開後にどう付き合えるか」まで視野に入れておくと、納品後のストレスはかなり減ります。見積もりの金額だけで比較すると、公開後に頼れる先がなくなるリスクがある点は、頭に入れておいてください。
公開後の運用について詳しくまとめた記事もあります。「納品されたけど、この先どうすれば?」と感じている方は目を通してみてください。
よくある質問

納品後の修正は何回まで無償で対応してもらえますか?
会社によって異なりますが、回数を設けている場合は「デザイン確定前に2〜3回、コーディング後に1回」が一つの目安です。重要なのは回数よりも、「何が修正の対象に含まれるか」を契約時に確認しておくこと。不具合の修正は回数制限とは別に対応してもらうのが一般的です。
テキストの差し替えは不具合ですか?仕様変更ですか?
提供した原稿どおりに反映されていなかった場合は不具合です。「やっぱりこの文章に変えたい」という場合は仕様変更になります。CMSで自分で編集できる設計になっていれば、制作会社に依頼せず自分で対応できます。CMS上でどの範囲を編集できるかは、納品時に確認しておきましょう。
保守契約は必ず結ぶべきですか?
必須ではありませんが、社内にWebに詳しい担当者がいない場合は検討をおすすめします。保守プランの内容は会社によって異なりますが、軽微な修正対応・CMSやプラグインのアップデート・定期バックアップなどが含まれるのが一般的です。保守契約がなければ、トラブル発生時にスポットで依頼することになり、対応まで時間がかかったり、割高になったりする場合があります。
納品後に制作会社と連絡が取れなくなったらどうすればいいですか?
まず契約書を確認し、契約不適合責任の期間内であれば書面(内容証明など)で正式に連絡を入れてください。それでも応答がない場合は、サーバー・ドメイン・CMSの管理権限が自社にあるかを確認し、別の制作会社に引き継ぎを相談する流れになります。管理権限の所在は、契約段階で必ず確認しておきたいポイントです。
契約書がなく口約束で進めてしまった場合はどうなりますか?
メールやチャットのやり取りが合意内容の証拠になることがあります。「この機能を入れてください」「承知しました」といったやり取りが残っていれば、仕様の合意とみなされる場合もあります。今後の依頼・確認は、記録が残る方法で行うようにしましょう。
まとめ
納品後の修正が無償か有償かは、「最初に合意した仕様どおりかどうか」で判断します。
- 仕様どおりに動いていない → 不具合。無償で修正を依頼できる
- 合意後に要望が変わった → 仕様変更。追加費用が発生するのは妥当
揉めないためにできることは、契約前に「何がどこまで含まれるのか」を具体的に確認しておくこと。修正を依頼するときは口頭ではなくテキストで、現象と期待する状態をセットで伝えること。
そしてもう一つ。ホームページは「納品して完成」ではなく、公開後に育てていくものです。制作会社を選ぶ段階で「公開後にどう付き合っていけるか」まで考えておくと、修正を巡るストレスは大幅に減ります。


