この記事の対象: リニューアルの社内稟議・企画書を作成する必要があるWeb担当者
読了時間: 約8分
「リニューアルしたいのは決まっている。でも、上司を説得する企画書が書けない」——Web担当者にとって、制作会社を探す前に立ちはだかる最初の壁が「社内承認」です。
制作会社側の立場で数多くの企画書を見てきましたが、承認が通る企画書と通らない企画書には明確なパターンがあります。通る企画書は「やりたいこと」ではなく「やるべき理由」が具体的。通らない企画書は「デザインが古い」だけで終わっています。
この記事では、社内承認を通すために必要な8つの要素とROI(投資対効果)の算出方法を解説します。
なぜ企画書が必要なのか
「うちは口頭で稟議が通るから」という会社もあるかもしれません。しかし企画書を作るメリットは、承認を得ることだけではありません。
- プロジェクトの目的が明確になる: 書き出す過程で「本当に必要なリニューアルか?」を自問できる
- 制作会社への発注がスムーズになる: 企画書がそのままRFP(提案依頼書)のベースになる
- プロジェクト終了後の効果測定ができる: 事前に設定したKPIと比較して成果を検証できる
RFPの作成方法は「RFPの書き方完全ガイド」で詳しく解説しています。企画書が通ったら、次はRFPの作成に進みましょう。
企画書に必要な8つの要素
1. 現状の課題と数値データ
「デザインが古い」だけでは説得力がありません。数字で課題を示しましょう。
| データ | 確認ツール | 説得力のある書き方 |
|---|---|---|
| 月間アクセス数の推移 | GA4 | 「過去1年で月間PVが30%減少」 |
| 問い合わせ件数 | CRM/フォームログ | 「月平均5件→競合他社は月20件」 |
| ページ表示速度 | PageSpeed Insights | 「スコア35点。ユーザーの53%が3秒以上の表示で離脱」 |
| スマホ対応状況 | Mobile-Friendly Test | 「モバイルフレンドリーテスト不合格」 |
| 検索順位 | Search Console | 「主要キーワード3語で50位以下」 |
上司が気にするのは「なんとなく古い」ではなく「このままだと会社にどんな損失があるか」です。
2. リニューアルの目的(ビジネスゴール)
課題に対して「リニューアルで何を達成するのか」を明記します。
悪い例: 「デザインを一新して企業イメージを向上させる」
良い例: 「リニューアルにより、以下の3つのKPIを達成する」
– 問い合わせ数: 月5件 → 月15件(3倍)
– 直帰率: 72% → 50%以下
– PageSpeedスコア: 35点 → 80点以上
3. ターゲットユーザーの明確化
サイトを「誰のために」リニューアルするのかを定義します。社内の「なんとなくリニューアル」を防ぐためにも重要な項目です。
例: 「メインターゲット: 従業員50〜300名のBtoB製造業の経営企画部門。年齢層35〜55歳。サプライヤー選定時にWebサイトで情報収集する層」
4. 競合サイトとの比較
経営層を動かすのに最も効果的なのが「競合との比較」です。
| 比較項目 | 自社 | 競合A社 | 競合B社 |
|---|---|---|---|
| デザイン更新年 | 2019年 | 2024年 | 2025年 |
| スマホ対応 | 一部未対応 | 完全対応 | 完全対応 |
| ブログ更新頻度 | 月1回 | 週2回 | 週1回 |
| 問い合わせ導線 | フォームのみ | チャット+電話+フォーム | 電話+フォーム |
競合の参考サイトはSoreiine!!ギャラリーで同業種から探すと、デザイン面での具体的な比較がしやすくなります。
5. リニューアル内容(スコープ)
何をリニューアルするのかを具体的に定義します。
- デザイン: 全ページフルリニューアル / トップ+主要ページのみ
- 機能: CMS導入、問い合わせフォーム改善、ブログ機能追加
- コンテンツ: 事例ページ新設、サービスページ再構成
- SEO: リダイレクト設計、構造化データ、Core Web Vitals改善
「あれもこれも」と詰め込むとコストが膨らむので、フェーズ分け(Phase 1で最低限、Phase 2で追加機能)の提案が現実的です。
6. 概算予算とROI
ここが企画書のハイライトです。上司が最も知りたいのは「いくらかかるのか」と「投資に見合うのか」の2点。
費用の概算:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| デザイン・制作費 | 120〜180万円 |
| コンテンツ制作(原稿・写真) | 20〜40万円 |
| 年間運用保守費 | 12〜24万円 |
| 合計(初年度) | 152〜244万円 |
費用の詳しい相場は「ホームページリニューアルの費用相場」を参照してください。
ROIの算出例:
リニューアルにより問い合わせ数が月5件→15件に増加。成約率10%・顧客単価100万円と仮定すると、増加分の年間売上は (15-5)×0.1×100万円×12ヶ月 = 1,200万円。リニューアル費用200万円に対してROI 600%。
数字は仮定でも構いません。「もし〇〇が改善したら、これだけの効果が見込める」というシナリオを示すことが重要です。BtoCやECサイトの場合は、CVR改善による売上増加率で試算すると説得力が出ます。
7. スケジュール
経営層は「いつ完成するのか」を知りたい。ざっくりでもスケジュールを示しましょう。
| フェーズ | 期間 | 内容 |
|---|---|---|
| 企画・選定 | 1ヶ月 | RFP作成、制作会社選定、契約 |
| 設計 | 1ヶ月 | ワイヤーフレーム、デザインカンプ |
| 制作・開発 | 1.5〜2ヶ月 | コーディング、CMS構築、コンテンツ入力 |
| テスト・公開 | 2週間 | 動作確認、修正、本番公開 |
| 合計 | 約4ヶ月 |
リニューアルプロジェクト全体の進め方は「WEBサイトリニューアルの進め方完全ガイド」で10ステップにまとめています。
8. リスクと対策
「リスクも想定しているのか」と経営層に聞かれたときの備えです。
| リスク | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 検索順位の一時的な低下 | 流入減 | 301リダイレクト設計を必須要件に |
| プロジェクトの遅延 | 機会損失 | バッファ期間2週間を確保 |
| 予算超過 | コスト増 | 追加費用の承認フローを事前に設定 |
上司を説得する3つのコツ
企画書の内容が完璧でも、プレゼンの仕方で結果は変わります。
1. 「コスト」ではなく「投資」として語る
「200万円かかります」ではなく「200万円の投資で、年間1,200万円の売上増が見込めます」。フレーミングを変えるだけで印象が大きく変わります。
2. 「やらないリスク」を強調する
「リニューアルする場合」だけでなく、「このまま放置した場合」のシナリオも提示しましょう。「競合がリニューアルを完了しており、このまま放置すると問い合わせの流出が加速する」——経営層はリスク回避に敏感です。
3. 段階的な投資を提案する
「200万円を一括で承認してほしい」より、「Phase 1で100万円、成果を確認してからPhase 2に50万円」のほうが承認のハードルは下がります。
制作会社の選び方については「WEB制作会社の選び方完全ガイド」も参考にしてください。
まとめ
社内承認を通すリニューアル企画書に必要な8つの要素を解説しました。
- 現状の課題と数値データ
- リニューアルの目的(KPI)
- ターゲットユーザー
- 競合サイトとの比較
- リニューアル内容(スコープ)
- 概算予算とROI
- スケジュール
- リスクと対策
最も大切なのは「なぜ今リニューアルが必要なのか」を数字で示すこと。感覚ではなくデータに基づいた企画書であれば、経営層の心を動かせるはずです。
