リニューアルガイド

Webサイトのデザインの決め方|社内で意見が割れない判断基準

この記事の対象: Webサイトの制作・リニューアルを進めていて、社内でデザインの方向性を決める立場にある担当者
読了時間: 約12分

制作会社からデザイン案が上がってきた。社内に共有したら、「もう少し落ち着いた色のほうがいい」「写真をもっと大きくしたい」「うちの業界っぽくない」と、バラバラの意見が返ってくる。

これは珍しいことではありません。むしろ、ほとんどのWeb制作プロジェクトで起きる光景です。

厄介なのは、どの意見も間違いとは言い切れない点です。デザインの好みに正解はないため、声の大きい人や役職の高い人の意見がそのまま通ってしまう。そういう決まり方をすると、あとから「やっぱり違った」とやり直しになることがあります。

この記事では、デザインを「好み」ではなく「基準」で判断するための考え方と、社内確認をスムーズに進める具体的な手順を整理します。


「好みの問題」になってしまう原因

「好みの問題」になってしまう原因

デザインの議論が紛糾する現場には、共通のパターンがあります。

判断の軸が共有されていない

「かっこいいデザインにしたい」「信頼感のあるデザインにしたい」。一見すると方向性を示しているように見える言葉ですが、「かっこいい」の定義は人によってまったく違います。

ある人にとっての「かっこいい」はミニマルで余白の多いデザイン。別の人にとっては動きのあるインパクト重視のデザイン。判断基準が言語化されていないまま議論を始めると、全員がそれぞれの「かっこいい」を主張し合うことになります。

サイトの「目的」と「相手」が曖昧なまま進んでいる

Webサイトを見るのは、社内の人間ではなく、その先にいるお客さまや求職者です。ところがデザインの社内レビューでは、つい「自分たちが見て気持ちいいか」を基準にしてしまいがちです。

たとえば、20代の求職者に向けた採用サイトなのに、50代の役員が「うちの会社らしくない」と感じてデザインを差し戻す。この場合、役員の感覚が間違っているわけではなく、「誰のためのサイトか」という前提が共有されていなかったことが原因です。

目的の整理に不安がある場合は、制作を依頼する前の段階で「Webサイトの目的が決まらないときの進め方」を参考にしてみてください。

「修正」と「方向転換」の区別がつかない

「ここの色を変えてほしい」は修正ですが、「もっとポップな雰囲気にしてほしい」は方向転換です。この区別がないまま意見を集めると、小さな修正と大きな路線変更が同じ土俵で議論されてしまいます。結果として、つぎはぎのようなデザインになることがあります。


デザインの判断基準を「誰に・何を・どうしてほしいか」に戻す

デザインの判断基準を「誰に・何を・どうしてほしいか」に戻す

デザインの良し悪しを判断するための出発点は、次の3つの問いです。

問い 具体例
誰に 見てもらうサイトか 30〜40代の製造業の購買担当者 / 20代の求職者 / 地域の一般消費者
何を 伝えたいか 技術力の高さ / 働きやすい職場環境 / 商品の価格と品質
どうしてほしいか 問い合わせフォームに進んでほしい / 採用エントリーしてほしい / 来店予約してほしい

この3つが明確であれば、デザインの議論は「好きか嫌いか」から「伝わるか伝わらないか」に変わります。

たとえば、ターゲットが製造業の購買担当者であれば、「派手なアニメーションよりも、製品スペックが一覧で見やすいこと」のほうが優先されるはずです。これは好みの問題ではなく、目的から導かれる判断です。

実際、進め方が上手い制作会社は、デザイン制作の最初のステップを「問いを立てる」に設定しています。デザインの見た目をいきなり議論するのではなく、「誰に・何を・どうしてほしいか」を掘り下げるところから始める。この順序を踏まないまま画面の見た目だけを評価しようとすると、好みの議論が起きやすくなります。

なぜ制作の初期段階で事業理解が必要なのか、その理由を掘り下げた記事もあります。


デザインを評価する5つの観点

デザインを評価する5つの観点

社内でデザインを見るとき、次の5つの観点でチェックすると、個人の好みに左右されにくくなります。

デザイン評価の5つの観点

ターゲットとの整合性

  • 想定ユーザーに合った印象か
  • 年齢層・業界の感覚とズレがないか

情報の優先順位

  • 最も伝えたいことが目立っているか
  • 行動導線が見つけやすいか

ブランドとの一貫性

  • ロゴ・カラー・トーンと合っているか
  • 名刺やパンフレットとの統一感

読みやすさ・使いやすさ

  • 文字サイズや行間は適切か
  • スマホで操作しやすいか

競合との差別化

  • 同業他社と並べて埋もれないか
  • 自社の強みが視覚的に伝わるか

5つの観点はすべて「好き嫌い」ではなく「目的に合っているか」で判断できるものです。社内レビューの場でこの観点を事前に共有しておくと、「なんとなく違う気がする」が「ターゲット層に対して文字が小さすぎるのではないか」のように具体化されます。

それぞれの観点をもう少し詳しく見ていきます。

ターゲットとの整合性

20代向けのサービスサイトに、重厚な明朝体と暗いトーンを使うと、ターゲットとの間に違和感が生まれます。反対に、法律事務所のサイトにポップな配色を使えば、信頼感を損なう可能性があります。

デザインの第一印象が、ターゲットとなる人の「この会社は自分に関係がありそうだ」という感覚を作れるかどうか。ここを基準にしてください。

情報の優先順位

トップページを開いて3秒以内に、「このサイトは何のサイトで、自分に何をしてくれるのか」が伝わるか。ここが曖昧だと、ユーザーは離脱します。

問い合わせボタンや資料請求ボタン(CTA=Call To Action、サイト訪問者に取ってほしい行動を促すボタンやリンクのこと)が、スクロールしなくても見える位置にあるかも確認ポイントです。

ブランドとの一貫性

Webサイトだけを見て判断するのではなく、既存の名刺・封筒・パンフレット・看板といったブランドツールと並べて確認してください。Webサイトだけ雰囲気が違うと、お客さまに「本当に同じ会社?」という違和感を与えることがあります。

戦略・制作・運用がそれぞれ別の担当やベンダーに分断されると、ブランドの表現は少しずつ揺らいでいきます。Webサイトのデザインだけを切り離して議論するのではなく、ブランド全体の中での一貫性を確認する視点が大切です。この点については、「戦略・制作・運用の分断がブランドを薄める理由と、それを防ぐ進め方」もあわせてどうぞ。

読みやすさ・使いやすさ

デザインの見た目が美しくても、文字が読みにくかったり、ボタンが小さすぎてスマホでタップしにくかったりすると、実用面で問題が生じます。デザインの美しさと使いやすさは、どちらかを犠牲にするものではありません。

競合との差別化

同業他社のWebサイトを3〜5社並べて見てみてください。似たような色、似たような写真の使い方、似たような構成になっていることが少なくないはずです。その中で自社のサイトが「何が違うのか」をひと目で伝えられるかどうかは、デザイン段階で確認しておくべきポイントです。

参考サイトを探すときは、Soreiine!!ギャラリーで同業種のサイトを見比べると、デザインの傾向やパターンが掴みやすくなります。



社内確認をスムーズに進める手順

社内確認をスムーズに進める手順

デザインの判断基準が整理できたところで、次は社内でどう確認を回すかです。ここでつまずくケースも多いので、具体的な手順を整理します。

ステップ1:確認者を絞る

デザインの確認に関わる人が多すぎると、意見がまとまりません。理想は3〜5人です。

役割 なぜ必要か
プロジェクト責任者 最終判断を下す人。1人に絞る
現場担当者 日常的にお客さまと接している人。ターゲット感覚を持っている
ブランド管理者 ロゴやカラーなど、ブランドルールを把握している人

「念のため」で全部門に回すと、収拾がつかなくなります。確認依頼を出す前に「誰の意見を反映するか」を決めておいてください。

ステップ2:評価の観点を先に伝える

確認者にデザイン案を渡すとき、「見て感想をください」とだけ言うのは避けてください。先ほどの5つの観点を伝えた上で、「この観点で見てほしい」と依頼します。

具体的には、こうした問いを添えると効果的です。

  • このサイトを初めて見た○○(ターゲット像)は、3秒で「自分に関係あるサイトだ」と感じるか?
  • 一番伝えたい○○(メッセージ)は、スクロールしなくても目に入るか?
  • 名刺やパンフレットと並べたとき、同じ会社のものだと感じるか?

このように問いかけると、「なんか違う」ではなく「ターゲットの年齢層を考えると、もう少し明るいトーンのほうが合うのでは」のように、根拠のあるフィードバックが返ってきやすくなります。

ステップ3:意見を「事実」と「好み」に分ける

集まった意見は、そのまま全部を制作会社に渡すのではなく、いったん整理します。

フィードバックの分類

事実ベースの指摘

  • ロゴの色がガイドラインと違う
  • 電話番号が見つけにくい
  • スマホで文字が小さすぎる

好みベースの意見

  • もっと青っぽいほうがいい
  • 写真を大きくしたい
  • なんとなく堅い印象がする

事実ベースの指摘は、修正すべき点として制作会社に明確に伝えます。好みベースの意見は、「誰に・何を・どうしてほしいか」に照らして、取り入れるかどうかを判断してください。

全部の意見を反映しようとすると、デザインの方向性がぶれます。「この意見は採用する。この意見は今回見送る。理由は○○」と記録しておくと、あとで「なぜこのデザインになったのか」を社内で説明できます。

ステップ4:制作会社への伝え方を整える

制作会社に修正を依頼するときの伝え方で、仕上がりの精度が変わります。

  • ×「全体的にもう少し明るい感じで」
  • ○「ターゲットが20代女性なので、メインビジュアルの背景色をもう少し明るいトーンにしたい。参考として○○のサイトの配色が近いイメージ」

制作会社がヒアリングで何を聞いてくるか、どんな情報があると制作側が動きやすいかについては、「Web制作のヒアリングで何を聞かれる?ディレクターの頭の中」で詳しく解説しています。


デザインの方向性がブレないために、最初に決めておくこと

デザインの方向性がブレないために、最初に決めておくこと

ここまで読んで「確認の仕方はわかったけれど、そもそもデザインの方向性を最初にどう決めればいいのか」と感じた方もいるかもしません。

デザイン制作に入る前に、以下の3点を言語化しておくと、社内レビューの段階で大きくブレることが減ります。

1. ターゲットユーザーの具体化

「30代の経営者」ではまだ広すぎます。「従業員20名規模の製造業で、自社サイトのリニューアルを検討し始めた総務兼任の担当者」くらいまで絞れると、デザインの判断がしやすくなります。

2. サイトのゴール(数値目標)

「問い合わせを増やしたい」ではなく「月の問い合わせ件数を現在の5件から15件にしたい」のように、数字で設定します。ゴールが明確だと、デザインの優先順位も決まります。問い合わせを増やしたいなら、フォームへの導線が最優先です。

3. 参考サイトの共有(理由付きで)

「このサイトがいい」ではなく、「このサイトの○○な部分が、うちのターゲットにも合うと思う」という伝え方をしてください。参考サイトを選ぶときは、同業種に限らず、ターゲットの属性が近いサイトも含めて3〜5サイト用意すると方向性が伝わりやすくなります。

Soreiine!!ギャラリーは業種やテイストで絞り込めるので、社内共有用の参考資料を集めるときに便利です。

ブランディングの観点からデザインの方向性を固めたい場合は、「Webサイトのブランディングの必要性|発注者が制作前に決めておくべきこと」もあわせて読んでみてください。


「デザインの決め方」自体を制作会社に相談してよい

「デザインの決め方」自体を制作会社に相談してよい

ここまで社内での進め方を解説してきましたが、一つ補足があります。

デザインの判断基準を社内だけで作る必要はありません。むしろ、「社内でデザインをどう評価するか」について制作会社に相談するのは、ごく自然なことです。

良い制作会社であれば、デザイン案を出す前に「このデザインをどういう基準で評価してほしいか」を説明してくれます。たとえば、「問いを立てる → デザインに落とし込む → 実装する → 数字で検証する → 改善を続ける」のように段階を踏む進め方をしている制作会社は、最初に「問いを立てる」工程を置くことで、デザインの前段階で「なぜこのデザインなのか」を言語化しています。

この「なぜ」が制作会社と発注者の間で共有されていれば、社内レビューで意見が割れたときも、「この問いに対してどちらが正しい回答か」という判断ができるようになります。

逆に、デザイン案だけポンと送ってきて「どうですか?」と聞く制作会社には、遠慮なく「どういう基準で見ればいいですか?」と質問してみてください。その答え方で、制作会社がデザインをどこまで考えて作っているかがわかります。

制作会社を選ぶ前に、発注者としてどこまで準備すべきかについては以下の記事で整理しています。

Web制作を依頼する前の準備|発注者が決めなくていいこと


よくある質問

よくある質問

デザイン案は何パターンもらうのが普通ですか?

制作会社によって異なりますが、トップページのデザイン案を2〜3パターン提出するケースが多いです。パターン数が多ければ良いというものではなく、事前のヒアリングや要件定義が丁寧であれば1案で方向性が合うことも珍しくありません。見積もり段階で「デザイン案は何パターン出してもらえるか」を確認しておくと安心です。

社長や役員がデザインに口を出してきて困っています。どうすればいいですか?

役職の高い人の意見が絶対になってしまう状況はよくあります。対処法としては、レビューの前に「このサイトのターゲットは○○で、目的は○○です」という前提を書面で共有しておくことです。「好みではなく、ターゲットに伝わるかどうかで判断してほしい」と評価の観点を明示しておくと、個人の好みだけで決まることを防ぎやすくなります。

参考サイトは何サイトくらい用意すればいいですか?

3〜5サイトが適切です。少なすぎると方向性が伝わりにくく、多すぎると「どれが本命かわからない」と制作会社を迷わせます。選ぶときは「このサイトの○○な部分が参考になる」と、どこを見てほしいかを具体的に添えてください。サイト全体の雰囲気だけでなく、レイアウト・配色・フォントの使い方など要素ごとに分けて参考を出すと精度が上がります。

デザインの修正回数に上限はありますか?

多くの制作会社は、見積もりの中に修正回数の上限を設けています。2〜3回程度が一般的で、上限を超えると追加費用が発生することがあります。契約前に必ず確認してください。修正回数を減らすコツは、この記事で紹介した「事実ベースの指摘」と「好みベースの意見」を分けて、まとめて伝えることです。小出しに修正を依頼すると回数を消費してしまいます。

デザインの確認期間はどのくらい取るべきですか?

社内確認には最低でも3〜5営業日を確保してください。確認者が複数いる場合、全員のスケジュールを合わせる時間が必要です。確認期間が短すぎると、十分に検討できないまま「とりあえずOK」を出してしまい、あとから大きな手戻りが発生するリスクがあります。制作会社からフィードバック期限を提示されたら、その日程で社内確認が回せるかを事前に確かめておきましょう。


まとめ

Webサイトのデザインの決め方で最も大切なのは、「好きか嫌いか」ではなく「誰に・何を・どうしてほしいか」に立ち返ることです。

この記事のポイントを振り返ります。

  • デザインの議論が紛糾する原因は、判断基準が共有されていないこと
  • 「ターゲット」「メッセージ」「ゴール」の3つを言語化してからレビューに入る
  • 評価は5つの観点(ターゲット整合性・情報優先度・ブランド一貫性・読みやすさ・差別化)で行う
  • 確認者は3〜5人に絞り、評価の観点を事前に伝える
  • 集まった意見は「事実」と「好み」に分けて、目的に照らして取捨選択する

デザインは見た目の美しさだけの問題ではなく、「誰に、何を届けたいのか」という問いに対する視覚的な回答です。その問いが明確であれば、社内の議論は自然と建設的なものになります。