この記事の対象: はじめてWeb制作会社に依頼する企業担当者・経営者
読了時間: 約12分
「最初の打ち合わせで、何を聞かれるんだろう」——制作会社に問い合わせた直後、こんな不安を感じたことはないでしょうか。
初回のヒアリングは、制作会社にとってサイトの方向性を決める最重要ステップです。ところが発注側から見ると、雑談のような質問が続いて「結局何が決まったの?」と感じることも少なくありません。
この記事では、制作会社のディレクターが初回の打ち合わせでどんな質問をし、その答えから何を判断しているのかを、できるだけ具体的に開示します。事前に準備しておくと話がスムーズに進む資料リストも載せているので、打ち合わせ前にぜひ目を通してみてください。
ヒアリングの全体像|質問には「順番」と「意図」がある

制作会社のヒアリングは、だいたい次の5つのブロックに分かれています。会社によって順番や表現は違いますが、聞いている中身はほぼ共通です。
| ブロック | 聞いていること | ディレクターが判断していること |
|---|---|---|
| 1. 事業の背景 | 何をしている会社か、強みは何か | サイト全体のメッセージの方向性 |
| 2. 今回の目的 | なぜ今サイトを作る(リニューアルする)のか | ゴール設定と成果指標の候補 |
| 3. ターゲット | 誰に見てほしいのか | 情報設計・導線・トーンの基準 |
| 4. 現状の課題 | 今のサイトや集客の困りごと | 優先的に解決すべき機能・構成 |
| 5. 条件面 | 予算・スケジュール・社内体制 | 提案の現実性、プランの粒度 |
ここで大事なのは、ディレクターはただ「聞いている」のではなく、答えの内容から次の工程で必要な判断材料を集めているという点です。雑談に見える質問にも、たいてい意図があります。
ブロック別|よくある質問と、その裏側の意図

1. 事業の背景を聞く質問
よくある質問例:
- 「御社の事業内容を教えてください」
- 「お客様はどんな方が多いですか?」
- 「競合と比べたとき、御社の強みはどこにありますか?」
- 「創業のきっかけや、大事にしている考え方はありますか?」
ディレクターの頭の中:
最初にこれを聞くのは、サイトの「軸」を決めるためです。デザインのテイスト、キャッチコピーの方向性、掲載する情報の優先順位——すべてここで得た情報が出発点になります。
たとえば「丁寧な手作業が強み」という会社と「スピード対応が強み」という会社では、サイト全体のトーンがまったく変わります。ファーストビューに何を置くか、写真の撮り方をどうするかも、この段階の会話から方向性が見えてきます。
「創業のきっかけ」のような質問は雑談に聞こえるかもしれませんが、ブランディング設計において、その会社がどんな価値観で動いているかは非常に重要な情報です。事業の根っこを理解したうえでデザインに落とし込むことで、「なんかうちっぽくないな」という仕上がりのズレを防げます。
2. 今回の目的を聞く質問
よくある質問例:
- 「今回のサイト制作(リニューアル)のきっかけは何ですか?」
- 「サイトを通じて、最終的にどうなっていたいですか?」
- 「問い合わせを増やしたい、採用を強化したい、など具体的な目標はありますか?」
- 「社内で、今回のプロジェクトはどういう位置づけですか?」
ディレクターの頭の中:
「きれいなサイトを作ってほしい」だけでは、ディレクターは手が動かせません。なぜなら「きれい」の基準は、目的によって変わるからです。
問い合わせを増やしたいなら、CTAボタンの配置や導線設計が最優先になります。採用強化なら、社員インタビューや働く環境の写真が必要になるかもしれません。ブランドイメージの刷新なら、ビジュアルの世界観づくりに比重が寄ります。
目的があいまいなまま進むと、制作の途中で「やっぱりこっちの方向にしたい」という方向転換が起き、工期も費用も膨らみがちです。逆に言えば、目的がはっきりしている発注者ほど、制作はスムーズに進みます。
3. ターゲットを聞く質問
よくある質問例:
- 「サイトを見てほしいのは、どんな人ですか?」
- 「お客様が御社を選ぶ決め手は何だと思いますか?」
- 「今のお客様は、どうやって御社を見つけていますか?」
- 「BtoBですか?BtoCですか?あるいは両方ですか?」
ディレクターの頭の中:
ターゲットの解像度が上がると、サイト設計の精度が一気に変わります。
たとえばBtoBの製造業であれば、サイトを見ているのは購買担当者や技術者です。この人たちは「かっこいいアニメーション」よりも「製品スペックがすぐ見つかること」を求めています。一方、BtoCの美容サロンなら、スマホでの閲覧が大半なので、予約ボタンの押しやすさや施術イメージの写真が優先されます。
「お客様が御社を選ぶ決め手」という質問は、サイトに載せるべき情報の優先順位を判断するためのものです。価格で選ばれているなら料金表を目立たせる、技術力で選ばれているなら実績や工程の紹介を厚くする——答えによって構成が変わります。
4. 現状の課題を聞く質問
よくある質問例:
- 「今のサイトで困っていることはありますか?」
- 「お客様から『サイトがわかりにくい』と言われたことはありますか?」
- 「アクセス解析は見ていますか?気になるデータはありますか?」
- 「今のサイトで、残したい部分と変えたい部分はどこですか?」
ディレクターの頭の中:
リニューアル案件の場合、現状サイトの課題を正確に把握することが提案の精度を左右します。
ここでディレクターが気にしているのは、発注者が感じている課題と、実際のデータが示す課題のズレです。「問い合わせが少ない」と感じていても、アクセス解析を見ると実はそもそもサイトへの流入が少ないのか、流入はあるのに離脱しているのかで、打ち手がまったく違います。
アクセス解析のデータがあるなら、打ち合わせ前に共有しておくと話が早くなります。Google Analyticsの管理画面を見せられる状態にしておくだけでも十分です。
5. 条件面を聞く質問
よくある質問例:
- 「ご予算の目安はありますか?」
- 「公開の希望時期はありますか?」
- 「原稿や写真は御社で用意されますか?」
- 「社内の承認フローはどうなっていますか?最終決裁者はどなたですか?」
ディレクターの頭の中:
予算を聞かれると身構える方が多いのですが、これはディレクターにとって「何を提案できるか」の枠を知るための質問です。
たとえば予算が少なめであればテンプレートを活用した効率的な構成を提案しますし、余裕があればオリジナルデザインに加えてCMS構築や撮影ディレクションまで含めた提案ができます。予算を伝えずに「とにかく見積もりを」と言うと、制作会社はどの粒度で提案していいかわからず、結果として的外れな見積もりが出てくることがあります。
「最終決裁者は誰か」という質問も重要です。担当者と何度も打ち合わせを重ねて方向性を固めたのに、最終段階で決裁者から「全然違う」とひっくり返る——これは制作現場で本当によくあるトラブルです。できれば初回の打ち合わせに決裁者も同席してもらうか、少なくとも方向性の確認ポイントで決裁者の意見を入れる段取りを組んでおくと、後戻りを防げます。
準備しておくと打ち合わせがスムーズになるもの

ヒアリングで聞かれる内容がわかったところで、事前に準備しておくと話が早い資料をまとめます。すべてを完璧に揃える必要はありません。あるものだけでも持っていくだけで、打ち合わせの質がぐっと上がります。
| 準備するもの | なぜ必要か | 用意のコツ |
|---|---|---|
| 会社案内・パンフレット | 事業内容を正確に伝えるため | PDF・紙どちらでもOK |
| 現サイトのURL | 現状の課題を一緒に確認するため | スマホ表示も見ておく |
| アクセス解析データ | 数値ベースで課題を共有するため | GA4の閲覧権限を付与するのが理想 |
| 参考サイト3〜5件 | デザインの好みを共有するため | 「なぜ好きか」をメモしておく |
| ロゴ・ブランドガイドライン | デザインの土台を共有するため | AI形式のロゴデータがあればベスト |
| 競合他社のサイトURL | 差別化のポイントを議論するため | 2〜3社で十分 |
| 写真素材の有無 | 撮影が必要かの判断材料 | 使えそうな写真があれば共有 |
| 社内の承認フロー | スケジュール設計のため | 「誰がOKを出すか」だけでもOK |
参考サイトの選び方
「参考サイトを持ってきてください」と言われて困る方は多いです。ここで大事なのは、同業種のサイトに限定しないことです。
- 配色やフォントの雰囲気が好き → デザインテイストの参考
- 情報の並べ方がわかりやすい → 構成・導線の参考
- 動きやアニメーションが心地よい → 演出の参考
このように「何が良いと思ったか」をセットで伝えると、ディレクターはデザインの方向性をかなり正確に把握できます。「全体的にこのサイトの雰囲気で」だけだと、色のことなのかレイアウトのことなのかフォントのことなのか判断がつきません。
参考サイトを探すには、Webデザインのギャラリーサイトを使うと効率的です。業種やデザインテイストで絞り込めるので、「自社に近いイメージ」を見つけやすくなります。
ヒアリングで「答えに困る質問」への対処法

初回の打ち合わせでは、すぐに答えが出ない質問もあります。よくある「困る質問」と、その場での返し方を紹介します。
「ターゲットは誰ですか?」と聞かれたとき
「みんなに見てほしい」と答えたくなる気持ちはわかります。でも、ターゲットを絞らないとサイトの情報設計は進みません。
答え方のコツは、一番大事なお客様を1人だけ思い浮かべることです。「30代の女性で、子育て中で、Instagramをよく見ていて、価格よりも品質で選ぶ人」——このくらい具体的にできると、ディレクターの頭の中で一気にサイトの形が見えてきます。
全員に刺さるサイトを目指すと、結局誰にも刺さらないサイトになりがちです。
「予算はいくらですか?」と聞かれたとき
正直に答えるのが一番です。「予算が少ないと足元を見られるのでは」と心配する方がいますが、予算を隠すデメリットのほうが大きいです。
予算の幅がわからないと、制作会社は「松竹梅」すべてのパターンを見積もることになり、どれも中途半端な提案になりがちです。「100万円前後で考えています」「50万円以下に抑えたいです」と伝えれば、その範囲でベストな構成を提案できます。
「いつまでに必要ですか?」と聞かれたとき
「できるだけ早く」は避けましょう。制作にかかる期間は、サイトの規模によってざっくり以下のような目安になります。
| サイト規模 | 制作期間の目安 |
|---|---|
| 5ページ程度のシンプルなサイト | 1〜2ヶ月 |
| 10〜20ページの中規模サイト | 2〜4ヶ月 |
| CMS・EC機能付きの大規模サイト | 4〜6ヶ月以上 |
この期間には、原稿の用意や社内確認の時間も含まれます。発注者側の対応が遅れると、そのぶんスケジュールは後ろにずれます。公開希望日から逆算して、余裕を持った相談をおすすめします。
「原稿は用意できますか?」と聞かれたとき
ここで安易に「うちで用意します」と言うと、あとで苦労することがあります。企業サイトの原稿作成は、思った以上に時間と労力がかかります。
原稿の準備に不安がある場合は、正直に「自信がない」と伝えてください。制作会社によっては、ヒアリングをもとにライターが原稿を書くプランを用意していることもあります。費用は上がりますが、クオリティの高い原稿がスケジュール通りに揃うので、結果的にスムーズに進むケースが多いです。
ヒアリングの質は、サイトの質に直結する

ここまで読んで気づいた方もいるかもしれませんが、ヒアリングで制作会社に伝える情報の質が、そのままサイトの仕上がりに反映されます。
情報が具体的な場合
- 提案がピンポイントで的確
- デザインの方向転換が少ない
- 修正回数が減り、公開が早まる
情報があいまいな場合
- 提案が「とりあえず」になりやすい
- 何度もデザイン修正が発生
- スケジュールと費用が膨らむ
左と右で、同じ予算でも仕上がりに大きな差が出ます。ヒアリングは「聞かれたことに答える場」ではなく、「一緒にサイトの土台を作る場」だと考えてみてください。
制作会社のディレクターは、問いを立てることからプロジェクトを始めます。「何を作るか」の前に「なぜ作るか」「誰のために作るか」を掘り下げる。この工程を丁寧にやるかどうかで、できあがるサイトの説得力がまったく変わってきます。
丁寧な制作会社ほど「問いを立てる → デザインに落とし込む → 作りきる → 数字で確かめる → 育て続ける」という流れでプロジェクトを進めています。このプロセスの最初の一歩がヒアリングです。問いの質がその後のすべてに影響するからこそ、最初のステップに時間をかけるわけです。
戦略と制作と運用が分断されると、サイトのメッセージは少しずつぼやけていきます。ヒアリングの場で事業の本質を共有しておくことが、サイトを「作って終わり」にしない第一歩になります。
ヒアリング当日のチェックリスト

打ち合わせ前に、以下の項目をざっと確認しておくと安心です。
- [ ] 会社案内やパンフレットを用意したか
- [ ] 現サイトのURLをメモしたか(ない場合はその旨を伝える)
- [ ] 「なぜ今サイトが必要か」を一言で言えるか
- [ ] 予算の上限を社内で確認したか
- [ ] 公開希望時期を決めたか
- [ ] 最終決裁者が誰かを確認したか
- [ ] 参考サイトを2〜3件ピックアップしたか(「何が好きか」のメモ付き)
- [ ] 当日の出席者と役割を制作会社に伝えたか
すべて完璧にする必要はありません。ただ、このリストの半分でも埋まっていれば、打ち合わせの密度はかなり変わります。
良い制作会社を見分けるヒアリングの特徴

最後に、ヒアリングの場で「この会社は信頼できそうだ」と判断するポイントも紹介しておきます。
丁寧にヒアリングしてくれる会社の特徴:
- 事業内容や強みについて、深掘りする質問をしてくる
- 「なぜそう思いますか?」「それはどんなお客様のことですか?」と具体化を促す
- いきなりデザインの話をせず、目的とターゲットの確認から始める
- わからないことは「わからない」と正直に言い、調べて回答すると約束する
- 打ち合わせ後に、聞いた内容を整理した議事録やヒアリングシートを送ってくる
注意したほうがいい会社の特徴:
- こちらの話をあまり聞かず、自社の実績や機能の説明ばかりする
- 「うちなら大丈夫です」「お任せください」が多く、根拠がない
- 予算を聞いた瞬間に、その金額ちょうどの見積もりをすぐ出してくる
- 初回の打ち合わせでデザイン案を持ってくる(ヒアリング前にデザインが決まっているのは不自然)
ヒアリングは、制作会社を見極める場でもあります。質問の質を観察することで、その会社がどれだけ丁寧にプロジェクトを進めてくれるかが見えてきます。
よくある質問

初回の打ち合わせにはどのくらい時間がかかりますか?
多くの制作会社では、初回ヒアリングに1時間〜1時間半程度を設定しています。事前に会社案内や参考サイトを共有しておくと、当日の時間をより有意義に使えます。
ヒアリングは無料ですか?
初回のヒアリングや相談は無料としている会社がほとんどです。ただし、具体的な調査や提案書の作成に入ると費用が発生する場合があります。事前に「どこまでが無料か」を確認しておくと安心です。
打ち合わせにはオンラインと対面、どちらがいいですか?
どちらでも問題ありませんが、初回は対面やビデオ会議で顔を合わせるほうが、ニュアンスが伝わりやすいです。パンフレットや製品サンプルなど実物を見せたい場合は対面が向いています。2回目以降はオンラインで効率よく進めるケースが一般的です。
制作会社に聞いておくべき逆質問はありますか?
「過去にうちと似た業種のサイトを作った経験はありますか?」「制作中、こちら側が対応することは具体的に何ですか?」「公開後のサポート体制はどうなっていますか?」の3つは、ぜひ聞いてみてください。制作の進め方や相性を判断する材料になります。
複数の制作会社に同時にヒアリングを依頼してもいいですか?
まったく問題ありません。むしろ、2〜3社に声をかけて比較することをおすすめします。各社のヒアリングの進め方や質問の深さを比べるだけでも、信頼できるパートナーを見つける判断材料になります。
まとめ
制作会社のヒアリングは「質問に答える場」ではなく、サイトの土台を一緒に作る共同作業です。
ディレクターが聞いている質問には、すべて意図があります。事業の背景、目的、ターゲット、課題、条件——これらの情報が具体的であればあるほど、できあがるサイトの精度は上がります。
完璧に準備する必要はありません。この記事のチェックリストを使って、答えられる範囲で情報を整理しておくだけで、打ち合わせの質は大きく変わります。「わからないことはわからない」と正直に伝えることも、良いサイトを作るための大事なコミュニケーションです。





