リニューアルガイド

制作会社の変更と引き継ぎ|乗り換え前に確認すべきこと【2026年】

この記事の対象: 今の制作会社との関係を見直したいWeb担当者・経営者
読了時間: 約10分

「今の制作会社を変えたい」——そう感じたとき、すぐに次の会社を探し始めるのは少し危険です。ドメインやサーバーの名義は誰になっているか。デザインデータは手元にあるか。これらを確認しないまま動くと、サイトが一時的に表示できなくなったり、想定外の作り直し費用がかかったりすることがあります。

この記事では、制作会社の変更を考えているWeb担当者に向けて、引き継ぎで確認すべき項目と、揉めやすいポイント、円満に移行するための手順を整理します。前の会社を責める話ではなく、次のパートナーと良い関係を始めるための準備ガイドです。


まず確認する「4つの所有権」

まず確認する「4つの所有権」

制作会社を変えるとき、最初にはっきりさせるべきは「何が自社のもので、何がそうでないか」です。ここが曖昧なまま話を進めると、引き継ぎの段階でトラブルになります。

ドメイン(example.co.jp のようなURL)

ドメインは、会社の住所にあたるものです。これが制作会社の名義で取得されている場合、最悪のケースでは「ドメインを返してもらえない」という事態になりえます。

確認する3つのこと:

  • ドメイン管理会社(お名前.com、ムームードメインなど)のログイン情報が手元にあるか
  • WHOIS検索(「WHOIS ドメイン名」で検索すると使えるサービスが見つかります)で、登録者名義が自社になっているか
  • ドメインの更新費用を誰が払っているか

自社名義であれば、制作会社が変わってもドメインはそのまま使えます。制作会社名義の場合は、移管(名義変更)の手続きが必要です。これは制作会社の協力がないと進められないため、関係が悪化する前に確認しておくのが得策です。

サーバー(サイトのデータが置いてある場所)

サーバーの契約名義も確認が必要です。制作会社が自社のサーバーにまとめてホスティングしているケースでは、乗り換え時にサーバーごと変更しなければなりません。

契約パターン 引き継ぎのしやすさ 必要な対応
自社名義でレンタルサーバー契約 スムーズ FTP・SSH情報を新会社に共有するだけ
制作会社名義でレンタルサーバー契約 やや手間 新サーバーを契約し、データを移行
制作会社の自社サーバーに同居 手間が多い サーバー移行+DNS(ドメインとサーバーの紐付け)変更が必要

CMSの管理者アカウント

WordPress等のCMS(サイトを管理・更新するためのシステム)を使っている場合、管理者権限のアカウントを自社で持っているかを確認します。

制作会社が管理者権限を持ち、自社には「編集者」権限しか渡されていないケースは珍しくありません。管理者権限がないと、プラグインの追加・更新、テーマの変更、新しいユーザーの追加といった操作ができず、新しい制作会社への引き継ぎに支障が出ます。

WordPressの場合、管理画面の「ユーザー」メニューで自分のアカウントの権限グループを確認できます。「管理者」になっていなければ、現在の制作会社に管理者アカウントの発行を依頼してください。

デザインデータ・写真素材

ロゴのAIデータ(Adobe Illustrator形式)、サイトで使用している写真の原本、バナーのPSD(Photoshop形式)ファイルなど、デザインの元データが手元にあるかを確認します。

注意が必要なのは、制作会社が撮影した写真や、制作会社が契約しているストックフォト(有料の写真素材サービス)の素材です。契約内容によっては、こうした素材を引き継げないことがあります。引き継げない場合は、新しい会社で写真を撮り直すか、別の素材を用意する必要が出てきます。

4つの所有権チェック

確認すべき所有権

  • ドメインの名義
  • サーバーの契約名義
  • CMS管理者アカウント
  • デザインデータ・素材の権利

4つすべてが自社にあれば、乗り換えはスムーズに進む

このうち1つでも制作会社側にある場合は、移行前に対応が必要です。すべてが自社にあるなら、制作会社の変更はサーバー情報の共有だけで済むこともあります。


引き継ぎで揉めやすいポイントと対処法

引き継ぎで揉めやすいポイントと対処法

制作会社の変更は珍しいことではありません。ただ、事前に確認していないと想定外のコストや時間がかかることがあります。よく問題になるポイントを先に把握しておきます。

ソースコードの著作権

Web制作の契約では、サイトのソースコード(HTML/CSS/JavaScript/PHPなどのプログラム)の著作権がどちらに帰属するかが明確でないことがあります。

  • 制作費を支払い済みであれば著作権は発注者に移転するという契約が一般的ですが、契約書に明記されていない場合は制作会社に著作権が残ります(著作権法の原則)
  • WordPressのオリジナルテーマを制作会社が開発した場合、「テーマの著作権は制作会社に帰属」としているケースもあります
  • 契約書に「著作権の帰属」の条項がないときは、乗り換えを切り出す前に書面で確認しておくと安全です

独自開発部分の扱い

ECサイトの独自機能や、社内の業務システムとの連携部分など、制作会社がゼロから開発したシステムは、権利関係が特に複雑です。

汎用的なプラグインや既製のテーマは誰でも利用できるため問題になりにくいですが、独自開発の部分は契約に明記がなければ制作会社に著作権が残る可能性があります。引き継ぎ時に「ソースコードは渡せない」と言われた場合、新しい会社で同等の機能を再構築する費用がかかります。

メールやアクセス解析などの外部サービス

見落としがちなのが、サイトに紐づいているアカウントや外部サービスです。

  • Google Analytics(アクセス解析)/ Google Search Console(検索パフォーマンス管理)のアクセス権限
  • SNSアカウントとの連携設定
  • メールフォームの送信先設定
  • SSL証明書(サイトのセキュリティ証明)の管理

これらが制作会社のGoogleアカウント等に紐づいている場合、乗り換え時にデータの閲覧やサイトの管理ができなくなります。特にGoogle Analyticsの過去データは、アクセスを失うと二度と見られなくなるため、早めに自社アカウントへの権限移行を済ませておくべきです。

なお、制作会社との連絡が滞ったまま時間だけが過ぎている場合は、引き継ぎ以前に対応すべきことがあるかもしれません。



乗り換えの手順|円満に移行するための進め方

乗り換えの手順|円満に移行するための進め方

制作会社の変更は、感情的にならず段取りを決めて進めることが大切です。

制作会社の乗り換え手順
現状の棚卸し所有権・契約内容・データの所在を確認
現会社へ連絡変更の意向を伝え引き継ぎ事項を整理
新会社の選定要件と引き継ぎ状況を共有して相談
データ移行サーバー・ドメイン・データの移管を実施
動作確認新環境で表示・機能に問題がないか検証

この中で最も時間がかかるのは「現状の棚卸し」です。ここを丁寧にやるかどうかで、後の工程がスムーズにいくかが決まります。

現会社への伝え方

「他の会社に変えます」と伝えるのは気まずいものですが、制作会社にとってクライアントの移行は日常的に起きることでもあります。

伝えるときのポイント:

  • 感情的な不満ではなく、事実ベースで理由を伝える(「事業の方向性が変わり、求めるサポートの内容が変わった」など)
  • 引き継ぎに必要な協力事項を具体的にリストアップして依頼する
  • 契約書の解約条件(通知期間や違約金の有無)を確認してから連絡する
  • やり取りはメールなど記録が残る形で行う

新しい会社に伝えるべきこと

新しい制作会社には、最初の相談時に以下の情報を共有します。

  • 現在のサイトのURL
  • 使っているCMS・サーバー・ドメイン管理会社の情報
  • 引き継ぎで確認済みの項目と、未確認の項目
  • サイトを変更する目的(デザインの刷新か、機能追加か、運用体制の見直しか)

「何を準備して、何は決めなくていいのか」がわからないときは、依頼前の準備について整理した記事が役に立ちます。


次の会社選びで同じことを繰り返さないために

次の会社選びで同じことを繰り返さないために

制作会社を変えること自体は、事業の変化に応じた合理的な判断です。ただ、「数年後にまた同じ理由で乗り換える」のは避けたいはずです。

契約時に確認しておくべき項目

次の制作会社と契約する際は、以下の点を契約書に明記してもらいます。

確認項目 確認すべき内容
ドメイン・サーバーの名義 自社名義で契約するか、制作会社名義か
著作権の帰属 納品後、著作権は発注者に移転するか
ソースコードの提供 契約終了時にソースコード一式を受け取れるか
CMS管理者権限 管理者アカウントを自社で保持できるか
解約条件 通知期間、違約金、データの扱い
デザインデータの納品 AI・PSD等の元データを受け取れるか

この確認を契約前に済ませておくだけで、次に乗り換えが必要になったときのリスクは大幅に下がります。見積もりの金額だけを比較して決めてしまうと、こうした条件面を見落としがちです。費用の内訳をどう読めばいいかについては、ホームページ制作費用の内訳|見積書の読み方と比較の判断軸【2026年】で詳しく解説しています。

「作って終わり」にならない関係を選ぶ

制作会社を変えたくなる理由として多いのが、「サイトを作ったあと放置されている」「更新を頼んでも動きが遅い」といった、公開後の関係性の問題です。

これは担当者個人の対応力だけの話ではなく、制作会社が「作ったあとの運用」をどう位置づけているかに関わります。サイト制作を「納品したら完了」と捉えている会社と、「公開後も育てていくもの」と捉えている会社では、契約後の動き方がまるで違います。

次の会社を選ぶとき、以下の点を聞いてみてください。

  • 「公開後の運用サポート」がサービスメニューに含まれているか、オプション扱いか
  • 運用フェーズの担当者は、制作時と同じチームが継続するか
  • アクセス解析をもとにした改善提案のサイクルが決まっているか
  • 月あたりの更新対応回数やレポート頻度が契約に明記されているか

制作と運用が別の会社に分かれると、デザインの方向性やブランドのトーンが少しずつずれていくことがあります。戦略・制作・運用を一貫して見られる体制があるかどうかは、次のパートナー選びで見落としがちですが重要なポイントです。

この「分断」がなぜ起きるのか、どう防ぐかについては、こちらの記事で掘り下げています。


よくある質問

よくある質問

制作会社を変えたらサイトは一から作り直しですか?

必ずしも作り直しにはなりません。ドメイン・サーバー・CMSのデータが自社名義で管理されていれば、新しい制作会社にそのまま引き継げます。ただし、前の会社が独自に開発したテーマやシステムの著作権が制作会社側にある場合は、その部分だけ作り直しが必要になることがあります。契約書の著作権条項を確認するのが最初のステップです。

ドメインが制作会社の名義だった場合、取り戻せますか?

ドメインの移管手続きを行えば、自社名義に変更できます。ただし制作会社の協力が必要です。移管にはドメイン管理会社での認証コード(Auth Code)の発行が必要で、通常は制作会社に依頼すれば対応してもらえます。万が一拒否された場合は、JPドメインであればJPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)という仕組みを利用する方法もあります。まずは穏やかに依頼し、やり取りは書面で記録を残しておくことが大切です。

制作会社に「変えたい」と伝えるタイミングはいつがいいですか?

新しい制作会社の候補がある程度決まってから、現在の会社に伝えるのが無難です。先に伝えてしまうと、引き継ぎへの協力が消極的になるケースがあります。契約書に解約の通知期間(「1か月前までに通知」など)が定められている場合は、その期間を考慮してスケジュールを組んでください。

引き継ぎ費用はどのくらいかかりますか?

ケースごとに差がありますが、目安としては、現在の制作会社にデータの書き出しや移管の作業費が発生する場合があります。新しい制作会社側でも、サーバー移行と動作検証の費用がかかるのが一般的です。独自開発のシステムがある場合は費用が大きくなりやすいため、見積もりの段階で引き継ぎの範囲を具体的に伝えてください。

SEO(検索順位)は制作会社を変えると下がりますか?

ドメインを変えずにサイトを移行すれば、影響は最小限に抑えられます。URLの構造を維持する、リダイレクト(旧URLから新URLへの自動転送)を適切に設定する、Search Consoleの設定を引き継ぐ——この3点を新しい制作会社に依頼してください。ドメイン自体を変更する場合はSEOのリスクが大きくなるため、できる限り既存ドメインの移管で対応するのが得策です。


まとめ

制作会社を変えることは、後ろめたいことではありません。事業のフェーズが変われば、パートナーに求めるものも変わります。

大切なのは、感情で動く前に「何が自社のもので、何がそうでないか」を確認すること。ドメイン、サーバー、CMS管理権限、デザインデータ——この4つの所有権を把握しておくだけで、引き継ぎのトラブルは大きく減ります。

そして次の会社を選ぶときは、制作費の安さだけでなく「作ったあとの関わり方」まで含めて判断してください。公開して終わりではなく、数字を見ながらサイトを育てていける関係を選ぶことが、同じ悩みを繰り返さないための備えになります。