リニューアルガイド

Webサイトの目標設定|発注者が押さえるKPIの決め方【2026年】

この記事の対象: 自社サイトのリニューアルや新規制作を検討している企業担当者・経営者
読了時間: 約10分

サイトを公開したあと、「問い合わせが増えたかどうか」だけで成果を判断していないでしょうか。

問い合わせ件数はわかりやすい指標です。ただ、それだけを見て一喜一憂していると、本当は成果が出ているのに「効果がない」と打ち切ってしまったり、逆に見当違いの施策に費用をかけてしまったりすることがあります。

この記事では、Webサイトの目標をどう設定すればいいか、公開直後・3ヶ月後・1年後で何を見ればいいかを段階別に整理します。「数字を見て判断する」ための土台の作り方を、制作会社との付き合い方も含めてまとめました。


「問い合わせ件数」だけを追うとどうなるか

「問い合わせ件数」だけを追うとどうなるか

問い合わせ件数は「最終結果」の指標です。これだけを見て判断していると、いくつかの問題が起きます。

途中のつまずきに気づけない

問い合わせに至るまでには、サイトへの流入が増え、ページが読まれ、信頼が生まれるという段階があります。最終結果だけを追っていると、途中のどこでつまずいているかがわかりません。

「3ヶ月経っても問い合わせが来ない。このサイトは失敗だ」と結論づけてしまうケースは多いですが、実際には検索からの流入が順調に伸びていて、もう少しで成果につながる状態かもしれません。あるいは、流入はあるのにページの内容が読者の期待と合っておらず、すぐ離脱されている可能性もあります。途中の指標を見ていなければ、どちらなのか判断がつきません。

件数を追って「質」が下がる

「とにかく問い合わせを増やしたい」と考えると、広告で流入を増やしたり、問い合わせフォームのハードルを極端に下げたりする方向に走りがちです。結果として、対応に時間を取られるだけで受注や商談につながらない——という状況に陥ります。

問い合わせの「件数」ではなく「質」を見ることが大事ですが、そのためには何をもって「質が高い」と判断するのか、あらかじめ基準を決めておく必要があります。

リニューアルの判断がつかない

目標が「問い合わせが増えるかどうか」だけだと、サイトをリニューアルすべきかどうかの判断材料も足りません。いまのサイトの効果が出ない理由がデザインなのか、導線なのか、そもそもの集客なのかを切り分けるには、複数の指標で現状を把握しておくことが前提になります。


公開直後・3ヶ月後・1年後で見る指標は違う

公開直後・3ヶ月後・1年後で見る指標は違う

Webサイトは公開した瞬間に成果が出るものではありません。段階ごとに「何をもって”うまくいっている”と言えるか」が変わります。

サイト公開後の評価は段階で変わる
公開直後正しく動いているか確認する
1〜3ヶ月流入と回遊の傾向をつかむ
3ヶ月〜1年行動の質を評価する
1年以降事業成果と照合する

この段階を飛ばして最初から「問い合わせ件数」を追うと、正しい判断ができません。それぞれの時期に何を見ればいいか、具体的に整理します。

公開直後(〜1ヶ月):「ちゃんと届いているか」

この時期に問い合わせ件数を気にしても仕方ありません。見るべきは「サイトが正しく機能しているか」「想定した相手に届き始めているか」です。

指標 何を見るか 判断の目安
ページ表示速度 主要ページが快適に表示されるか 3秒以上かかるページは改善対象
インデックス状況 検索エンジンにページが登録されたか Google Search Console(検索の管理ツール)で確認
流入元の内訳 どこからアクセスが来ているか 直接入力・SNS・検索の比率を把握する
直帰率 1ページだけ見て離脱した人の割合 70%を超えていたら内容や導線を見直す
スマートフォン比率 モバイルからの閲覧割合 業種にもよるが50〜80%が一般的

この段階の目標は「異常値がないかチェックすること」です。数字の大小を競うのではなく、表示崩れや未登録ページがないかを確認します。

1〜3ヶ月後:「読まれているか」

検索エンジンにサイトが認識され、少しずつ流入が増えてくる時期です。ここで見るのは「来てくれた人が、ちゃんとページを読んでいるか」です。

指標 何を見るか 判断の目安
検索流入数の推移 週単位で前の週と比べて増えているか 右肩上がりの傾向があれば順調
検索キーワード 狙ったキーワードで表示されているか Search Consoleの検索クエリで確認
ページ別の閲覧数 どのページがよく見られているか 想定と実態のズレを把握する
平均エンゲージメント時間 ページに滞在している時間 サービス紹介ページで30秒未満なら要改善
回遊率 1人あたり何ページ見ているか 2ページ以上なら興味を持って見ている

この時期に問い合わせが少なくても、流入が増えていて滞在時間も伸びていれば「順調に育っている」と判断できます。逆に、流入はあるのに直帰率が高ければ、ページの内容やデザインが訪問者の期待と合っていない可能性があります。

ここで正しく判断するには、そもそもサイトの目的が明確になっていることが前提です。まだ整理できていない場合は、指標を設定する前にそちらを固めてください。

3ヶ月〜1年:「行動につながっているか」

流入が安定してきたら、ようやくコンバージョン(問い合わせや資料請求などの成果行動)を評価する段階です。ここでも「件数」だけではなく「質」を見ます。

指標 何を見るか 判断の目安
コンバージョン率(CVR) 訪問者のうち何%が行動したか 業種やターゲット層で大きく変わるため自社の過去データとの比較が最も確実
コンバージョン経路 どのページを経由して成果に至ったか 主要な導線パターンを把握する
問い合わせの質 商談や受注につながっているか 営業担当と情報を突き合わせて確認
リピーター率 再訪問者の割合 継続的に関心を持たれているかの指標になる

コンバージョン率の「一般的な目安」はネット上に多く出回っていますが、業種・商材・単価・ターゲット層によってまったく違います。他社の数字と比べて一喜一憂するよりも、リニューアル前の自社データとの比較が最も信頼できる判断材料です。リニューアル前の数値を残しておくと、改善の前後を比較することができます。

1年以降:「事業に貢献しているか」

1年を超えると、サイトの成果を事業全体の数字と照らし合わせて評価できるようになります。

  • Web経由の問い合わせが受注全体のうち、どのくらいの割合を占めているか
  • Web経由で獲得した顧客の単価は、ほかのチャネルと比べてどうか
  • サイトがあることで営業活動の効率が上がっているか(商談前に読まれているか)

ここまで来ると、「Webの指標」ではなく「経営の指標」として扱うことになります。最初からここを目標にすると抽象的すぎて具体的な施策が打てないため、段階を追って指標を具体化していく流れが大切です。



目標を決める手順|何から始めればいいか

目標を決める手順|何から始めればいいか

「段階ごとに指標が違う」と理解しても、実際にどう決めればいいか迷うことは多いはずです。4つのステップに分けて整理します。

ステップ1:サイトの役割を言語化する

まず、このサイトに何を期待しているのかを明確にします。よくある役割は次のとおりです。

  • 集客: 新規の見込み客を獲得する
  • 信頼構築: 検討中の相手に「ここなら任せてよさそうだ」と思ってもらう
  • 採用: 求職者に会社の雰囲気や方針を伝える
  • 既存顧客対応: サポート情報や更新情報を届ける

1つのサイトが複数の役割を持つこともありますが、優先順位をつけないと指標がぼやけます。「一番の目的は何か」を1つだけ選ぶところから始めてください。

この作業は事業整理そのものです。誰に何を届けたいのかを言葉にできないまま制作に入ると、完成後に「何を基準に評価すればいいかわからない」という状態になります。

ステップ2:成果指標(KGI)を1つ決める

サイトの役割が決まったら、「最終的にどうなれば成功か」を1つの数字で表します。これがKGI(重要目標達成指標)です。

サイトの役割 KGIの例
集客 月間の有効問い合わせ数(商談につながった件数)
信頼構築 指名検索数(社名やサービス名で検索される回数)
採用 応募者数、または説明会予約数
既存顧客対応 サポートページの閲覧数、電話問い合わせの減少率

ポイントは「問い合わせ件数」ではなく「有効な問い合わせ件数」のように、質を含めた定義にすることです。何をもって「有効」とするかは、営業やカスタマーサポートの担当者と一緒に決めてください。

ステップ3:中間指標(KPI)を段階ごとに設定する

KGI(最終目標)に至る途中経過を測るのがKPI(重要業績評価指標)です。前のセクションで紹介した段階別の指標から、自社に関係のあるものを選びます。

気をつけたいのは、KPIを増やしすぎないことです。段階ごとに2〜3個、合計で5〜8個程度に絞らないと、何を見ればいいのかわからなくなります。「全部の数字を追う」のではなく「いまの段階で意味のある数字だけ見る」と割り切ることが運用を続けるコツです。

ステップ4:現状を記録して「出発点」を残す

新規サイトの場合はゼロからのスタートですが、リニューアルの場合は現状の数字を記録しておくことが欠かせません。Google Analytics(アクセス解析ツール)やSearch Console(検索パフォーマンス管理ツール)の画面をスクリーンショットや表で残しておきます。

改善前の数字がなければ、改善後に「良くなったのかどうか」を比較できません。社内で「リニューアルして本当に効果があったのか」と聞かれたときに、数字で説明できるかどうかはここにかかっています。


制作会社と目標をどう共有するか

制作会社と目標をどう共有するか

目標を設定しても、制作会社と共有できていなければ活かせません。「きれいなサイトを作ってください」だけでは、完成後に何を基準に評価するかが宙に浮いたままです。

見積もり前に伝えておくこと

制作会社に相談する際、デザインの好みや機能の要望とあわせて、次の情報を伝えてください。

  • サイトに期待する役割(集客・信頼構築・採用など)
  • 最終的な成果指標(KGI)として考えていること
  • 公開後にどのくらいの期間で成果を判断したいか
  • 社内で誰がサイトの数字を見る役割を担うか

この情報があると、制作会社側も「どの指標を改善するための設計をすればいいか」が明確になります。デザインの方向性を決めるときにも、「見た目の好み」ではなく「この指標を上げるにはどうすべきか」という議論がしやすくなります。丸投げにせず、任せる範囲と自分で決める範囲を整理しておくと、やり取りがスムーズに進みます。

公開後の振り返りを最初に決めておく

「作って終わり」にならないために、公開後の振り返りタイミングを制作開始前に決めておくことが有効です。

公開後の振り返りサイクル
1ヶ月後不具合・表示の確認
3ヶ月後流入・回遊の傾向を共有
6ヶ月後CVRと問い合わせの質を評価
1年後事業成果と照合し次の施策を検討

このサイクルを回すには、戦略を立てた人・デザインを作った人・数字を見る人がバラバラにならないことが前提になります。制作と運用を別々の会社に頼むと、「作ったときの意図」が共有されず、数字を見ても改善の方向が定まりにくくなることがあります。

制作会社を選ぶ際に、「公開後の数字はどう確認しますか?」「振り返りの打ち合わせはありますか?」と聞いてみてください。その答えから、「作って納品したら終わり」なのか「公開後も一緒に育てる前提」なのかが見えてきます。戦略・制作・運用が一貫している体制かどうかは、長期的にサイトの成果を左右する大きな要素です。


よくある質問

よくある質問

KPIは何個くらい設定すればいいですか?

段階ごとに2〜3個、合計で5〜8個が目安です。多すぎると管理しきれず、結局どれも見なくなります。「公開直後に見る指標を3つ、3ヶ月後に切り替える指標を3つ」くらいから始めて、慣れてきたら調整するのが現実的です。

Google Analyticsを使ったことがなくても、自分で数字を見られますか?

基本的な指標(ページ閲覧数・流入元・直帰率など)は、Google Analyticsの標準レポート画面で確認できます。操作に不安がある場合は、制作会社に初期設定と見方の説明を依頼してください。最初に30分ほどのレクチャーを受ければ、月次の確認作業は自分でできるようになります。

公開直後に問い合わせが来ないのは普通ですか?

普通です。検索エンジンにサイトが認識され、検索結果に安定して表示されるようになるまでに1〜3ヶ月かかるのが一般的です。公開直後の訪問者は、既存の取引先や名刺交換した相手からの直接アクセスが中心になります。焦らず、まずは「ページが正しく表示されているか」「検索エンジンに登録されているか」の確認に集中してください。

制作会社に「KPIを一緒に設定してほしい」と頼んでもいいですか?

頼んで構いません。むしろ、目標を共有しないまま進めるほうがリスクがあります。ただし、目標設定はデザインやコーディングとは別のコンサルティング業務にあたる場合もあるため、対応範囲と費用を事前に確認しておくと安心です。

BtoBとBtoCでKPIは変わりますか?

変わります。BtoBは検討期間が長いため、問い合わせ件数よりも「資料ダウンロード数」や「指名検索数」のほうが実態に合うケースがあります。BtoCは購入や予約など直接的なアクションをKPIにしやすい傾向があります。自社の商材と顧客がどのように検討・購買するかに合わせて選んでください。


まとめ

Webサイトの目標設定は、「問い合わせ件数を増やす」の一言では済みません。公開直後・数ヶ月後・1年後で見るべき指標は異なり、段階に応じた評価基準を持っておくことが、正しい判断と改善につながります。

手順を振り返ります。

  1. サイトの役割を1つに絞って言語化する
  2. 最終的な成果指標(KGI)を1つ決める
  3. 中間指標(KPI)を段階ごとに2〜3個設定する
  4. 現状の数字を記録して出発点を残す
  5. 制作会社と目標を共有し、振り返りのタイミングを決める

数字は「報告するため」ではなく「次に何をするか決めるため」に見るものです。問い合わせ件数という最終結果だけを追って焦るのではなく、手前の指標を確認することで、いま何がうまくいっていて何を変えるべきかが見えてきます。