リニューアルガイド

Web制作を依頼する前の準備|発注者が決めなくていいこと【2026年】

この記事の対象: 初めてWeb制作を外注する企業担当者・経営者
読了時間: 約12分

Web制作を外注しようと考えたとき、「もう少し社内でまとめてから相談しよう」と先延ばしにしていないでしょうか。デザインのイメージ、ページ構成、原稿……全部そろえてから声をかけるのが礼儀だと感じるかもしれません。ただ、実はその”準備”のほとんどは、制作会社と一緒に決めていくものです。

この記事では、相談前に「決めなくていいこと」と「決めておくと話がスムーズに進むこと」を分けて整理します。必要以上に身構えず、適切なタイミングで相談を始めるための判断材料にしてください。


「全部決めてから相談しないと」は誤解

「全部決めてから相談しないと」は誤解

制作会社への相談をためらう理由として、よく聞くのがこんな声です。

  • デザインのイメージが固まっていないのに相談していいのか
  • ページ数も決まっていないのに見積もりを出してもらえるのか
  • 何を伝えればいいかわからないから、もう少し調べてからにしよう

気持ちはよくわかります。ただ、これは制作の進め方を知らないから生まれる不安です。

Web制作は、建売住宅を買うのとは違います。注文住宅に近い進め方で、「何を建てるか」を一緒に設計するところから始まります。打ち合わせの中で要件を整理し、必要な機能やページを洗い出し、予算と照らし合わせて取捨選択する──それが制作会社の仕事です。

むしろ、発注者側で細かく決めすぎてしまうと、かえって問題が起きることがあります。「トップページはこのレイアウトで、この位置にこのボタンを置いて……」と指定しすぎると、制作会社がプロとしての提案を出しにくくなり、結果的にもったいないお金の使い方になります。


相談前に決めなくていい5つのこと

相談前に決めなくていい5つのこと

「決めなくていい」というのは、「考えなくていい」という意味ではありません。なんとなく気になっていること、イメージの断片があるなら、それはそのまま伝えてください。ここで言いたいのは、正解を出してから相談する必要はないということです。

デザインの方向性

「おしゃれな感じ」「信頼感のあるデザイン」程度のふわっとしたイメージで十分です。参考サイトを3〜5つ集めておくと伝わりやすくなりますが、それすら必須ではありません。

デザインの方向性は、事業の目的やターゲットを整理した結果として決まるものです。見た目の好みだけで決めると、「きれいだけど成果が出ないサイト」になるリスクがあります。制作会社のディレクターやデザイナーは、ヒアリングを通じてその会社に合ったデザインの方向性を提案するのが仕事です。

参考サイトを探すなら、Soreiine!!ギャラリーで業種やデザインテイストから絞り込めます。「こういう雰囲気が好き」「ここの構成がわかりやすい」くらいの感覚で十分です。

ページ構成・サイトマップ

「トップ、会社概要、サービス紹介、お問い合わせ、あとはブログ……くらいかな」──この程度の感覚があれば大丈夫です。正確なサイトマップを自分で作る必要はありません。

ページ構成は、サイトの目的とユーザーの行動を考えて設計するものです。「お問い合わせを増やしたい」のか「採用応募を増やしたい」のかで、必要なページもその並べ方も変わります。ここは制作会社の設計力が問われる部分なので、プロに任せたほうが良い結果になります。

原稿・写真素材

原稿と写真は、制作の中盤〜後半で必要になります。相談の時点で完成している必要はまったくありません。

ただし、「原稿は誰が書くのか」は早い段階で確認しておくべきポイントです。自社で用意するのか、制作会社にライティングも依頼するのかで、費用も進行スケジュールも変わります。

写真についても同じで、既存の写真を使うのか、撮影から依頼するのかは見積もりに影響します。素材の有無は「ある・ない・わからない」で伝えれば、制作会社がプランを組み立ててくれます。

技術的な仕様

CMS(WordPress、Shopifyなど)の選定、サーバーの種類、レスポンシブ対応の方法──これらは制作会社が要件に応じて提案するものです。

「WordPressで作ってほしい」という希望があるなら伝えてかまいませんが、「なぜWordPressなのか」の理由が明確でない場合は、制作会社に選定ごと相談するほうが適切です。技術選定は目的から逆算して決めるものなので、発注者が先に決めるべき領域ではありません。

正確な予算額

「100万円です」と正確な数字を出す必要はありません。「50〜100万円くらいで考えている」「上限は200万円」のように幅を持たせて伝えれば十分です。

予算感がまったくわからない場合は、「相場がわからないので、提案と一緒に概算を出してほしい」と伝えてください。制作会社からすると予算の上限がわからないまま提案するのは難しい面がありますが、「まったく見当がつかない」こと自体は悪いことではありません。費用の内訳がどうなっているか知っておくだけでも、見積もりを受け取ったときの理解度が変わります。


決めておくと話がスムーズに進むこと

決めておくと話がスムーズに進むこと

「決めなくていいこと」がある一方で、相談前に整理しておくと最初の打ち合わせの密度が格段に上がるポイントがあります。

なぜサイトを作る(作り直す)のか

これが最も重要な情報です。制作会社はこの「なぜ」を起点にすべてを設計します。

  • 今のサイトが古くなって恥ずかしい
  • 問い合わせが来ない
  • 採用に力を入れたいのにサイトが対応していない
  • 新しい事業やサービスを始める
  • そもそもサイトがない

理由は複数あっても構いません。優先順位がつけられるとさらに話が早くなります。

事業の目的や課題が整理できていないまま制作に入ると、途中で方向性がブレて手戻りが発生します。「なぜWebサイト制作は事業整理から始まるのか」で詳しく解説していますが、制作の出発点は常に「サイトのデザイン」ではなく「事業そのもの」です。

誰に見てもらいたいのか

ターゲットが法人なのか個人なのか、年齢層はどのあたりか、どんな課題を持っている人か。完璧なペルソナ(※ 理想的な顧客像を詳しく定義した資料)を作る必要はありませんが、「誰のためのサイトか」がぼんやりしていると、デザインもコンテンツも決めようがありません。

「30〜40代の経営者」「地元の主婦層」「就活中の大学生」──このくらいの粒度で十分です。

社内の決裁フロー

制作が遅延する最大の原因は、技術的な問題ではなく社内の確認に時間がかかることです。

  • 最終的にデザインを承認するのは誰か
  • 原稿の内容を確認するのは誰か
  • 担当者に決定権があるのか、それとも上長の承認が必要か

これを最初の段階で伝えておくと、制作会社はスケジュールに確認期間を組み込めます。「社長がOKを出さないと進めない」という情報は、隠すよりも早く共有したほうが結果的にスムーズです。

ざっくりとした予算感と希望時期

制作会社は予算感によって提案の方向性を変えます。50万円の予算と300万円の予算では、できることが根本的に違います。「予算は言いたくない」という気持ちもわかりますが、予算を隠すと見当違いの提案を受けてお互いの時間を無駄にするリスクがあります。「50〜100万円くらい」「上限は200万円」のような幅で伝えれば、制作会社は現実的な提案を組み立てられます。

希望時期についても同様です。「来月に公開したい」と「半年後でいい」では、制作会社のチーム編成や進め方が変わります。

伝えること 伝え方の例 制作会社側の効果
目的 「問い合わせを月5件から20件に増やしたい」 成果指標が明確になり、提案の方向が定まる
ターゲット 「製造業の購買担当者」 デザインとコンテンツの方向性が決まる
決裁者 「最終判断は代表、途中確認は自分」 スケジュールの精度が上がる
予算感 「100〜150万円くらいで考えている」 予算に合った現実的な提案ができる
希望時期 「年度内(3月末)に公開したい」 逆算でスケジュールを組める


「決まっていません」はそのまま伝えていい

「決まっていません」はそのまま伝えていい

ここまで「決めなくていいこと」と「決めておくこと」を分けてきましたが、一番大事なのは「わからないことをわからないと言える関係を、最初の相談で作ること」です。

制作の現場でトラブルが起きるのは、情報が不足しているときではなく、不足している情報を隠したまま進んでしまうときです。「まだ決まっていません」「正直よくわかりません」──この一言が言えるかどうかで、プロジェクトの進みやすさが大きく変わります。

制作会社はどうやって「わからない」を整理するのか

経験のある制作会社は、発注者が言語化できていないことを引き出す技術を持っています。ヒアリングで投げかけられる質問には一つひとつ意図があり、雑談のように見えるやりとりの中から事業の本質を探っています。

「御社の強みは何ですか?」と聞かれて即答できなくても問題ありません。「競合と比べてここが違う、と社員が感じていること」「お客様からよく言われること」──こうした問いを重ねながら、強みを一緒に見つけていくのがヒアリングの役割です。

「問いを立てる」から始まる制作プロセス

制作会社の中には、いきなりデザインに入るのではなく、「問いを立てる」ところから始めるところがあります。

たとえば、「問いを立てる → デザインに落とし込む → 作りきる → 数字で確かめる → 育て続ける」という5段階で進める制作会社があります。最初のステップが「デザインする」ではなく「問いを立てる」である点に注目してください。

「問いを立てる」から始まる制作プロセス 5段階
問いを立てる事業の本質と課題を掘り下げる
デザインに落とし込む問いの答えを視覚的に表現する
作りきる品質に妥協せず実装する
数字で確かめる公開後の成果を計測する
育て続ける改善を繰り返して伸ばす

最初に「問い」から入るのは、発注者自身が気づいていない課題や可能性を掘り起こすためです。事業の何が強みで、誰に届けるべきかが明確になれば、デザインの方向性やページ構成はその答えとして自然に決まっていきます。

ここに、発注者が相談前に「正解」を用意しなくていい理由があります。問いを立てるのは制作会社の仕事です。発注者に求められるのは、問いに対して正直に答えること。「決まっていない」も立派な答えのひとつです。

戦略と制作がつながっているかどうか

「戦略と制作と運用が分断されると、サイトの効果は少しずつ薄まっていく」──これは発注者にとっても見過ごせない視点です。

サイトを作ることがゴールではなく、作った後に数字で確かめ、育て続けるところまでが一つの流れです。相談の段階で「公開後のことは後で考えよう」と後回しにすると、戦略→制作→運用がバラバラになり、サイトの効果が時間とともに薄れていくリスクがあります。

最初の相談で「公開後の運用はどう考えていますか?」と聞いてくる制作会社は、この分断を起こさないように意識しているサインです。逆に、作って納品したら終わり、という姿勢の会社は、戦略と制作と運用を一貫して進めることの意味を軽視している可能性があります。


最初の相談を有意義にする3つの心がけ

最初の相談を有意義にする3つの心がけ

「お願いする」ではなく「一緒に考える」スタンスで

制作会社に丸投げするのでもなく、すべてを指示するのでもなく、「一緒に考えるパートナー」として臨むのが理想です。

丸投げすると、制作会社の都合が優先されやすくなります。逆に細かく指示しすぎると、プロの知見が活かされません。「ここは決まっています」「ここは相談したいです」を分けて伝えるだけで、打ち合わせの質が変わります。

複数社に相談して「合う・合わない」を感じる

最低でも2〜3社に相談することをおすすめします。同じ内容を伝えても、返ってくる質問や提案の角度は会社によってまったく異なります。

ここで見るべきは見積もりの金額だけではありません。「この会社は自分たちの課題を理解しようとしてくれているか」を感じ取ってください。いきなりデザイン案やページ構成を出してくる会社よりも、まず事業の目的や課題を深掘りしてくれる会社のほうが、結果として良いサイトにつながる可能性が高いです。

Webディレクターがどんな視点で打ち合わせに臨んでいるかを知っておくと、制作会社の力量を見極める助けになります。

打ち合わせ後に社内共有する前提で臨む

最初の打ち合わせの内容は、ほぼ確実に社内で共有することになります。上司への報告、他部署との連携、決裁者への説明──これらを見越して、打ち合わせ中にメモを取るか、議事録を出してもらえるか確認しておくとスムーズです。

制作会社側も、打ち合わせ後に議事録や提案書を送ってくれるのが一般的です。口頭だけで何も記録を残さない進め方をしている会社は、後のトラブルにつながりやすいので注意してください。


よくある質問

よくある質問

相談だけして依頼しなくても失礼になりませんか?

失礼にはなりません。制作会社にとって初回の相談は「お互いの相性を確かめる場」です。相談したからといって依頼する義務は発生しません。複数社に相談して比較検討するのは業界では当たり前のことです。ただし、他社に決めた場合は一言連絡を入れるのがマナーです。

予算を伝えると、その上限いっぱいの見積もりを出されませんか?

そう感じる気持ちはわかりますが、予算を伝えないデメリットのほうが大きいです。予算がわからないと制作会社は複数パターンを用意するか、平均的な提案しかできず、お互いに時間を浪費します。予算の幅を伝えたうえで「この予算でできる最善の提案をしてほしい」と依頼するのが効果的です。

初回の打ち合わせには何を持っていけばいいですか?

現在のサイトのURL(あれば)、会社案内やパンフレット、競合企業のサイトURLがあると話が早いです。資料がなくても、「なぜサイトを作りたいのか」「誰に見てもらいたいのか」を口頭で伝えられれば、打ち合わせは成立します。気になるデザインのサイトがあればURLを共有しておくと、方向性のすり合わせがしやすくなります。

リニューアルの場合、現サイトの課題を自分で分析しておくべきですか?

自分で分析できればベストですが、必須ではありません。「なんとなく古い」「問い合わせが来ない」という感覚だけでも立派な情報です。現サイトの課題分析は制作会社の仕事の一つなので、アクセス解析ツール(Google Analyticsなど)のアカウントを共有できるようにしておくと、プロの目で分析してもらえます。分析の進め方は「Webサイトの課題と現状分析の進め方」で詳しく解説しています。

相談から公開まで、どれくらいの期間がかかりますか?

サイトの規模や内容によって大きく異なりますが、一般的な企業サイト(10〜20ページ程度)で3〜6か月が目安です。テンプレートを使ったシンプルな構成なら1〜2か月で済む場合もあります。ブランディングから取り組む場合は、戦略設計に1〜2か月、制作に2〜4か月かかるため、半年以上を見込んでおくのが現実的です。


まとめ

制作会社への相談は、すべてが決まってから行うものではありません。

相談前に「決めておくこと」と「決めなくていいこと」

決めておくこと

  • なぜサイトが必要か(目的)
  • 誰に見てもらいたいか
  • 社内の決裁フロー
  • 予算の幅と希望時期

決めなくていいこと

  • デザインの方向性
  • ページ構成・サイトマップ
  • 原稿・写真素材
  • 技術的な仕様
  • 正確な予算額

左側の4つを整理しておけば、最初の相談は十分に成立します。右側の5つは、制作会社と一緒に決めていくものです。

「決まっていないから相談できない」のではなく、「決まっていないからこそ、早く相談したほうがいい」。相談のタイミングが早いほど、選択肢は広がります。