デザイン

UX改善の事例と効く順番|どこから手を付けるか【実例つき】

この記事の対象: 自社サイトやサービスのUI/UXを改善したいが、どこから手を付けるか決めきれない制作者・事業担当者
読了時間: 約11分

UX改善で最初にやることは、デザインを直すことではありません。「どこでユーザーが詰まっているか」を観測で特定することです。見る場所は、ページ別の直帰率・フォームの通過率・サイト内検索のクエリ・スマホとPCの指標差の4つで足ります。この4つを見れば、ほとんどのサイトで改善候補が2〜3個は浮かびます。この記事では、この「発見」の具体的な見方から、優先順位の付け方、そしてSoreiine!!のギャラリー掲載サイトがどこをどう解いているかまで、明日のミーティングで使える判断軸として整理します。


UX改善は何から始めるか|最初に見る4つの場所

「かっこよくしたい」は改善の出発点にならない

UX改善の相談で最初に出てくる言葉は、だいたい次のどれかです。

  • 「なんとなく古い感じがする」
  • 「競合サイトの方がきれいに見える」
  • 「社内で評判が悪い」

どれも観測ではなく感想です。感想からスタートすると、作り手の好みが改善案になり、公開後に「変わった気はするが数字は同じ」という結末になります。UX改善で最初にやるべきは、感想を観測に変換することです。「古い感じがする」の裏側には、行間が詰まっている・情報の優先順位が付いていない、といった具体的な症状が必ずあります。症状を特定できれば、改善は作業になります。

見る場所は4つで足りる

観測の入口は、最初は絞った方がうまくいきます。

見る場所 何がわかるか 詰まりのサイン
ページ別の直帰率・滞在時間 どのページで見切られているか 流入は多いのに滞在が極端に短い
フォームの入力開始→送信の通過率 申し込み導線のどこで落ちるか 入力は始まるのに送信に届かない
サイト内検索のクエリ ユーザーが探して見つからなかったもの ナビゲーションにある語で検索されている
スマホとPCの指標差 レイアウトが片方で壊れていないか スマホだけCVRが著しく低い

4つ目のスマホとPCの差は特に見落とされます。制作側はPCの大きな画面で作業するため、スマホで起きている詰まりに気づきにくい構造があります。

候補が出たあとは、次の3層を順に回すと検証がブレません。

UX改善を回す3つの層
発見どこで離脱・迷いが起きているかを観測で特定する
仮説なぜ詰まるのかを1文で言語化し、打ち手を1つに絞る
検証変更後に同じ指標を見て、動いたかどうかを判定する

発見だけやって満足する、あるいは仮説を立てずにいきなり作り直す——このどちらも、改善したかどうかを判定できません。進め方の全体像は、指標の決め方まで含めてこちらに詳しくまとめています。

計測環境そのものが整っていない場合は、改善の前に観測の土台から作る必要があります。


事例で見るUX改善の勝ちパターン|Soreiine!!掲載サイトの読み方

ここからは実際のサイトを見ながら、「何が良いのか」を分解します。ギャラリーを眺めるときは、きれいだと感じた理由を必ず言葉にしてください。言語化できた分だけ、自分のサイトに移植できます。

※以下はSoreiine!!ギャラリー掲載サイトからの抜粋です。掲載サイトの選定・講評はSoreiine!!編集部が行っています。特定のサイト名や制作費については、個別事例に紐づけず一般化して扱っています。

事例1:ファーストビューで「誰向けか」を確定させている

見どころ:スクロールせずに、業種・対象顧客・提供価値の3つが読み取れる構成。

多くのサイトのファーストビューは、大きな写真とキャッチコピー1行で終わります。見た目は整いますが、「で、これは何の会社なのか」が確定しないまま次のセクションに送られ、ここで離脱が起きます。参考になる構成は、キャッチコピーの直下に補足の1文を置いているタイプです。

  • キャッチコピー:情緒に訴える短い言葉
  • 補足の1文:業種・対象・提供価値を事実で書く
  • ボタン:次に取ってほしい行動を1つだけ

この3段構成なら、情緒で惹きつけつつ、事実で確定させられます。移植のしかた:既存サイトのファーストビューに補足1文を足すだけで検証できます。改修としては最小で、効果は測りやすい部類です。

事例2:ナビゲーションの項目数を絞り、迷いを消している

見どころ:グローバルナビが5項目前後に収まり、それぞれの語が「ユーザーの言葉」になっている。

改善前のサイトでよくあるのは、ナビが8〜10項目に膨らみ、「事業案内」「サービス紹介」のように社内の言葉が並んでいる状態です。ユーザーは自分が探しているものがどれに入っているか判断できません。

ナビゲーション整理の考え方

ユーザーの言葉で切る

  • できること
  • 実績
  • 料金
  • 問い合わせ

社内の言葉で切る

  • 事業案内
  • サービス紹介
  • 企業情報
  • IR情報

左のほうが項目数が少ないだけでなく、「料金」のようにユーザーが実際に知りたいことが名前になっています。移植のしかた:サイト内検索のクエリを1か月ぶん眺めて、頻出する語をナビの名前に採用します。

レイアウトの選び方そのものに迷う場合は、カラム数の判断基準をこちらで整理しています。

事例3:CVボタンの前に「不安」を潰している

見どころ:申し込み・購入ボタンの手前に、料金・納期・条件がすでに書かれている。

CVが止まる場所は、ビジュアルではなく情報の欠落であることが少なくありません。「料金がいくらか分からない」「いつ届くか分からない」という不安が、ボタンを押させない最大の理由です。評価が高いサイトは、CV直前のブロックで次を完結させています。

  1. 料金・送料:条件まで含めて明示
  2. 納期・対応スピード:数字で書く
  3. 制約・返品条件:可否と期限を1行で書く

「よくある質問ページに書いてある」では足りません。ユーザーはそこまで見に行かないからです。CV導線のどこで止まりやすいかは、チェックポイントごとに整理しています。


改善の優先順位は「コスト×影響範囲」で決める

全部やろうとすると1つも終わらない

観測で候補が複数出たとき、すべてに着手すると全部が中途半端になります。優先順位は次の2軸で機械的に決めます。

影響範囲が広い 影響範囲が狭い
改修コストが低い 最優先。すぐ着手する 手が空いたときに
改修コストが高い 企画化して段階的に やらない判断も検討

左上(低コスト×広範囲)に入るのは、ファーストビューへの補足1文の追加、ナビの項目名の変更、CTAボタンの文言変更(「詳しくはこちら」→「料金を見る」)、フォームの入力項目を減らすなどです。どれも数時間〜1日で終わり、主要導線に効きます。ここを片付けてから、デザイン刷新のような大きな話に進むのが順番です。

「デザイン刷新」は最後に検討する

全面リニューアルは影響範囲が最大ですが、コストも最大です。しかも、改善点を特定しないまま作り直すと、うまくいっていた部分まで壊れることがあります。先に小さい改善を回し、どこが効いたかを把握してからリニューアルに入ると、残すべきものと変えるべきものが分かった状態で設計できます。

リニューアルの発注を検討する段階なら、依頼内容の整理から始めると見積の比較がしやすくなります。


改善を実装に落とすときの実務ポイント

変更は1回に1つだけにする

複数の変更を同時に公開すると、どれが効いたか分からなくなります。検証を成立させたいなら、変更は分けて出します。まとめて出した時点で検証は諦めている、と自覚しておく必要があります。

数字が動くまでの期間を決めておく

変更後、いつ判定するかを先に決めます。流入が多いページは2週間、少ないページは1か月以上、または定性評価に切り替えます。流入が少ないページでは数字で判定できるだけのサンプルが集まらないため、ユーザーテストや社内の第三者レビューの方が正確です。

編集者が壊せない構造にしておく

改善したレイアウトが、運用の中で崩れていくのはよくある話です。CMSで自由に組めるようにしすぎると、公開後にデザインが原型をとどめなくなっていきます。改善したルールを構造として固定しておくと、更新のたびに崩れることを防げます。

「いつ・何を・なぜ変えたか」の記録も残してください。スプレッドシート1枚で十分で、日付・対象・変更内容・仮説・結果の5列があれば、次の改善を考えるときの材料になります。


よくある質問

UX改善はどこから始めるのが正解ですか?

観測から始めてください。ページ別の直帰率、フォームの通過率、サイト内検索のクエリ、スマホとPCの指標差——この4つを見れば改善候補が浮かびます。感想ではなく症状を特定してから手を動かすと、空振りが減ります。

デザインを全面リニューアルすれば改善しますか?

必ずしもそうはなりません。改善点を特定しないまま作り直すと、うまくいっていた部分まで変わってしまい、数字が下がることがあります。小さい改善を先に回して効いた要素を把握してから、リニューアルに進む順番が安全です。

改善の効果はどのくらいの期間で判定すればいいですか?

流入が多いページなら2週間、少ないページなら1か月以上が目安です。流入が少ないページは統計的に判定できるサンプルが集まらないため、ユーザーテストや第三者レビューで評価するほうが正確です。

複数の改善を同時に公開してもいいですか?

同時に出すと、どの変更が効いたか分からなくなります。検証したいなら1回に1つが原則です。スケジュールの都合でまとめて出す場合は、「今回は検証を諦めている」と関係者の間で合意しておくと、後から議論が混乱しません。

事例を参考にするとき、何を見ればいいですか?

きれいだと感じた理由を言葉にしてください。「余白が広い」ではなく「見出しと本文の間隔が本文の行間より広く取られていて区切りが分かる」というレベルまで分解すると、自分のサイトに移植できます。分解できない要素は、真似しても再現しません。


まとめ

UX改善は、次の順番で固定すると迷いません。

  1. 観測で症状を特定する(感想を観測に変換する)
  2. 仮説を1文で書き、打ち手を1つに絞る
  3. 低コスト×広範囲のものから着手する
  4. 判定期間を決めてから公開する
  5. 記録を残し、次の材料にする

事例を見るときは、きれいさではなく「何を解いているか」を読んでください。ファーストビューの補足1文、ユーザーの言葉で切られたナビ、CV直前に置かれた料金と条件——どれも見た目の話ではなく、ユーザーが詰まる場所を先回りして外した結果です。

Soreiine!!のギャラリーは、その「解き方」を並べて見られる場所として使えます。自社サイトの改善候補を1つ決めて、同じ課題を解いている掲載サイトを探すところから始めてみてください。