リニューアルガイド

Webサイトリニューアルの社内説得|稟議を通す提案の作り方【2026年】

この記事の対象: Webサイトのリニューアルが必要だと感じているが、上司や経営層の承認を得られず困っている企業のWeb担当者
読了時間: 約12分

「うちのサイト、さすがにそろそろ直したほうがいいですよね」——社内でそう口にしたことがある人は多いはずです。ところが「じゃあ稟議を上げて」と言われた途端、手が止まる。何をどう書けば通るのか分からない。とりあえず「デザインが古いので」と書いて出したら、あっさり却下された。そんな経験をした担当者は少なくありません。

リニューアルの稟議が通らない原因は、ほとんどの場合「伝え方」にあります。現場にとっては切実な問題でも、経営層には「今すぐお金をかける理由」が見えていないだけです。

この記事では、リニューアルの必要性を社内で説明し、稟議を通すための資料の組み立て方を具体的に解説します。


「デザインが古い」では稟議が通らない理由

「デザインが古い」では稟議が通らない理由

リニューアルの社内提案で最もよくある失敗が、見た目の問題だけを理由に挙げてしまうことです。

「競合のサイトと比べてデザインが古い」「スマホで見づらい」——これらは現場の人間には説得力がありますが、決裁権を持つ経営層にとっては「だから何?」という話になりがちです。

経営層が稟議書で見ているのは、突き詰めれば次の2点です。

  • その投資は売上やコスト削減にどうつながるのか
  • やらなかった場合に何が起きるのか

「デザインが古い」は、この2点のどちらにも直接答えていません。見た目が古くても問い合わせが来ているなら、経営判断として「今のままでいい」は合理的です。

稟議を通すには、デザインの話を「事業課題」に翻訳する必要があります。逆に言えば、事業課題として整理できれば、経営層が「これは放置できない」と判断する材料になります。Webサイトの効果が出ない理由|見直すべき3つの視点【2026年】も、現状の課題を整理する参考になるはずです。


稟議を通すために揃えるべき3つの材料

稟議を通すために揃えるべき3つの材料

社内提案が通るかどうかは、資料を書き始める前の「材料集め」でほぼ決まります。以下の3つを揃えてから稟議書に取りかかってください。

材料①:現状サイトの数字

まず、自社サイトの現状を数字で把握します。Google アナリティクスや Search Console が入っていれば、以下のデータは自分で取れます。

確認項目 見るべき指標 どこで確認できるか
アクセス数の推移 月間セッション数(過去1年分) Google アナリティクス
流入経路 検索・SNS・直接アクセスの比率 Google アナリティクス
検索での表示回数 インプレッション数・クリック率 Search Console
スマホ比率 デバイス別セッション割合 Google アナリティクス
問い合わせ数 フォーム送信数・電話クリック数 目標設定またはCRMデータ
直帰率・離脱率 主要ページの直帰率 Google アナリティクス

これらの数字が「悪い」こと自体が説得材料になるのではありません。数字の変化の方向が重要です。「去年と比べてアクセスが下がっている」「問い合わせ率が下がり続けている」という傾向を示せれば、「このまま放置すると悪化する」という主張の根拠になります。

解析ツールがまだ入っていない場合は、それ自体が「現状を把握できていない」という問題提起になります。リニューアルと合わせて計測環境を整える提案にすれば、投資の妥当性を示しやすくなります。現状分析の具体的な進め方はWebサイトの課題と現状分析の進め方|リニューアル前にやるべきこと【2026年】でも詳しく解説しています。

材料②:リニューアルしない場合のリスク

経営層は「やる理由」より「やらない場合のリスク」に反応することが多いです。以下の切り口でリスクを整理してみてください。

機能面のリスク

  • SSL(HTTPS)未対応の場合、ブラウザに「保護されていない通信」と表示される
  • スマホ非対応の場合、Google のモバイルファースト インデックスで検索順位が下がる
  • CMS(更新システム)が古いままだと、セキュリティの脆弱性が放置される
  • ブラウザやOSのアップデートで表示が崩れるリスクが年々高まる

事業面のリスク

  • 採用サイトが古いと、求職者の第一印象で候補から外れる
  • 取引先が与信調査でサイトを確認した際、信頼性に疑問を持たれる
  • 競合がリニューアルした場合、相対的に自社の印象が下がる

定量化が難しい項目もありますが、「SSL未対応」「スマホ非対応」のような技術的な問題は客観的に確認できるため、稟議書に盛り込みやすい材料です。

材料③:費用と回収の見通し

稟議で最も聞かれるのは「いくらかかるのか」と「元は取れるのか」です。

制作費用は、サイトの規模・要件・制作会社の体制によって大きく変わります。目安として以下の費用帯を参考にしてください。

サイト規模 ページ数目安 費用帯
シンプルな企業紹介サイト 5〜8ページ 30万〜80万円
中規模コーポレートサイト 10〜20ページ 80万〜200万円
CMS・EC機能を含む大規模サイト 20ページ以上 200万〜500万円

同じページ数でも、オリジナルデザインかテンプレート利用か、CMSの有無、撮影の有無などで大きく変動します。稟議の段階では、複数の制作会社に概算を聞いて「◯万〜◯万円の範囲」と幅を持たせて記載するのが現実的です。見積もりの読み方についてはホームページ制作費用の内訳|見積書の読み方と比較の判断軸【2026年】で解説しています。

回収の見通しは、「問い合わせが月◯件増えれば、◯ヶ月で投資回収できる」というシンプルな計算で示すのが効果的です。正確な予測は難しくても、「現状の月◯件が◯%増加した場合」というシナリオを複数提示すれば、経営層も判断材料にできます。



社内提案資料の構成

社内提案資料の構成

3つの材料が揃ったら、稟議書・提案資料にまとめます。以下の構成で書くと、経営層が判断に必要な情報が過不足なく伝わります。

社内提案資料に入れる項目と順番
現状と課題数字で示す今のサイトの問題点
リスク放置した場合に起こること
目的と方針何を解決するためのリニューアルか
費用と体制概算費用・社内担当・スケジュール
期待効果投資回収の見通し

この順番が重要です。いきなり費用から入ると「高い」という印象だけが残ります。先に課題とリスクを共有してから費用を示すことで、「この問題を解決するための投資」として受け取ってもらえます。

「目的」を一文で言い切る

提案資料で最も大事なのは、リニューアルの目的を一文で言い切ることです。

稟議に書く「目的」の良い例・悪い例

通る書き方

  • 月間問い合わせを◯件→◯件にするため導線を再設計する
  • 採用応募率を改善するため採用コンテンツを強化する

通らない書き方

  • デザインを一新しブランドイメージを向上させる
  • 最新のトレンドに合わせてサイトを刷新する

左は「達成したいこと」、右は「やりたいこと」です。経営層に伝わるのは左のほうです。

目的が「問い合わせ増加」なのか「採用応募の改善」なのか「ブランド信頼性の担保」なのかによって、リニューアルの方針も費用感も変わります。目的が曖昧なまま進めると、プロジェクトの途中で「そもそも何のためにやっているのか」という議論が噴出し、手戻りが発生します。

稟議書の段階で目的を絞り込んでおくことが、プロジェクト成功の第一歩です。目的があいまいなまま制作に入ったプロジェクトは、デザイン案のレビューで「何か違う」が連発し、スケジュールと予算が膨らむ原因になります。

費用の見せ方

稟議書に費用を書く際は、総額だけでなく内訳の大項目を示すと通りやすくなります。

項目 内容 備考
企画・設計 サイト構成・ワイヤーフレーム作成 制作全体の方向性を決める工程
デザイン トップページ+下層ページのデザイン ページ数で費用が変動
構築・コーディング HTML/CSS実装、CMS組み込み CMSの種類で費用が変動
コンテンツ制作 ライティング・撮影 自社で用意すれば圧縮可能
テスト・公開作業 動作検証・サーバー移行 既存サイトからの移行作業含む

金額欄は制作会社から概算見積もりを取って埋めてください。この段階では正式な見積もりでなくて構いません。「概算のため、正式発注時に±20%程度の変動がある」と注記しておけば十分です。

スケジュールの目安

リニューアルの期間は規模によりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

サイト規模 制作期間の目安
小規模(5〜8ページ) 1.5〜3ヶ月
中規模(10〜20ページ) 3〜5ヶ月
大規模(20ページ以上) 5〜8ヶ月

稟議書には「◯月公開を目標」と具体的な時期を入れてください。「なるべく早く」では経営層にスケジュール感が伝わりません。公開希望時期から逆算して、いつまでに制作会社を選定する必要があるかも併記すると、承認を急ぐ理由になります。


決裁者のタイプ別・説得のポイント

決裁者のタイプ別・説得のポイント

同じ資料でも、決裁者が何を重視するかによって強調すべきポイントが変わります。

決裁者のタイプと響く切り口

数字重視タイプ

  • 現状のアクセス・CVの推移を強調
  • 投資回収シナリオを複数提示する

リスク回避タイプ

  • セキュリティや技術的負債を前面に
  • 「やらないリスク」を具体的に列挙する

競合意識タイプ

  • 同業他社のサイトを並べて比較する
  • 業界内での自社の立ち位置を可視化する

決裁者がどのタイプか分からない場合は、3つの切り口をすべて資料に含めておいて、プレゼン時に反応を見ながら強調する箇所を変えるのが現実的です。

競合サイトを比較材料にする場合は、Soreiine!! のギャラリーで同業種のサイトを探して、デザインや構成の参考例として資料に添えると説得力が増します。「同業の会社はこういう構成のサイトに変えている」と見せるだけでも、経営層の危機感に訴えかけられます。


制作会社への相談は稟議の前にやる

制作会社への相談は稟議の前にやる

「稟議が通ってから制作会社を探す」と考える人が多いのですが、実は稟議の前に2〜3社に概算を聞いておくほうがうまくいきます。理由は2つあります。

費用の空欄が稟議の弱点になる。 費用が「未定」の稟議書は、ほぼ通りません。概算でもいいので数字を入れる必要があり、そのためには制作会社にヒアリングするのが最も確実です。

制作会社との会話が提案の質を上げる。 「リニューアルで何ができるか」は、制作のプロと話すことで解像度が上がります。自分だけで考えていたときには気づかなかった課題や選択肢が見えてくることもあります。

この段階での相談は無料で対応してくれる制作会社がほとんどです。正式な見積もりではなく「こういう規模感だとどのくらいの費用と期間がかかりますか」という概算相談で構いません。

相談の際に注目したいのは、戦略・設計の段階を大切にしている会社かどうかです。「なぜリニューアルするのか」という問いを飛ばして、いきなりデザインの話から入る会社だと、公開後に「思っていたのと違う」という事態になりかねません。事業の課題を聞き取ったうえで、サイトの方針を一緒に考えてくれる会社のほうが、公開後の成果につながりやすくなります。なぜWebサイト制作は事業整理から始まるのか|最初に問うべきことで、この「事業理解から始める制作」について詳しく書いています。


稟議が通ったあとにやるべきこと

稟議が通ったあとにやるべきこと

承認が下りたら、すぐにデザインの話に入りたくなりますが、まず以下の3つを固めてください。

  • 社内の担当者と決裁フローを明確にする——誰がどの段階で何を確認するか。ここが曖昧だと、制作の終盤で「聞いていなかった」という人が出てきて手戻りが発生します。担当者の決め方はホームページの社内担当者の決め方|体制づくりで進行が変わる【2026年】を参考にしてください
  • リニューアルの目的を社内で共有する——稟議書に書いた目的を、関係者全員が同じ言葉で説明できる状態にしておきます
  • 現行サイトのコンテンツを棚卸しする——どのページを残し、どのページを統合・削除するかの判断は発注者側の仕事です

リニューアルは、公開したら終わりではありません。公開後にアクセス数や問い合わせ数の変化を追いかけ、ページの改善を続けるところまでを計画に含めてください。「作って納品」で終わるプロジェクトは、稟議で示した期待効果を検証する手段がなくなり、次の投資判断にもつながりません。


よくある質問

よくある質問

リニューアルの稟議書にはどのくらい詳しく書けばよいですか?

A4で2〜3枚が目安です。「現状の課題」「リニューアルの目的」「概算費用」「期待効果」「スケジュール」の5項目を各半ページ程度でまとめてください。詳細な要件定義は稟議が通ってから行うものなので、この段階では概要レベルで十分です。

制作費用の概算はどうやって調べればよいですか?

2〜3社の制作会社に「こういうサイトを作りたいが、費用と期間の目安を教えてほしい」と問い合わせるのが最も正確です。この段階では正式な見積もりではなく概算で構いません。費用相場を自分で調べたい場合は、Soreiine!! のギャラリーで似た規模のサイトを探し、同規模の制作実績がある会社の価格帯を調べる方法もあります。

上司に「今のサイトで問題ない」と言われたらどう返せばよいですか?

「今は問題ない」ことと「今後も問題ない」ことは別です。アクセス数や問い合わせ数の推移を過去1年分のグラフで示し、横ばいか下降傾向であれば「現状維持=緩やかな悪化」であることを数字で伝えてください。技術面では、スマホ対応やSSL対応の有無など客観的に判定できる項目を挙げると、感情論になりにくいです。

リニューアル費用を「投資」として説明するコツはありますか?

「費用」ではなく「投資」として扱ってもらうには、回収の見通しを示すことが欠かせません。たとえば「現在のサイト経由の問い合わせが月5件、受注率20%、平均単価50万円の場合、問い合わせが月2件増えるだけで年間240万円の売上増になる」のように、自社の数字を使った試算を示すと説得力が出ます。

社内でリニューアルに反対する人がいる場合はどうすればよいですか?

反対意見の多くは「費用が高い」「今のままで困っていない」「失敗したらどうする」のいずれかに分類できます。費用については分割払いやフェーズ分けの選択肢を示し、一度に全額が出ていかないことを説明してください。「困っていない」には競合サイトとの比較を、「失敗リスク」には段階的に進められるスケジュールを提示すると、反対理由を一つずつ解消できます。


まとめ

リニューアルの稟議が通らないのは、必要性がないからではなく、伝え方が経営層の判断基準に合っていないだけのことがほとんどです。

押さえるべきポイントを整理します。

  • 「デザインが古い」ではなく「事業課題」として翻訳する
  • 現状を数字で示し、放置した場合のリスクを具体的に列挙する
  • 費用と回収の見通しをセットで提示する
  • 稟議の前に制作会社に概算を聞いておく

大切なのは、リニューアルを「コスト」ではなく「事業課題を解決するための投資」として位置づけることです。そのためには、制作会社に丸投げする前に、自社の事業課題を自分の言葉で整理しておく必要があります。

最初の一歩は、Google アナリティクスを開いて自社サイトの現状を数字で確認すること。その数字が、稟議書の最も強い武器になります。