リニューアルガイド

ホームページの社内担当者の決め方|体制づくりで進行が変わる【2026年】

この記事の対象: ホームページの新規制作・リニューアルを控えた企業の担当者候補、管理職、経営者
読了時間: 約12分

ホームページの制作を外注しようとしたとき、最初にぶつかる壁は「社内で誰が窓口になるか」です。

制作会社を探すより前に、この問題で数週間が過ぎてしまうケースは珍しくありません。「Webに詳しい人がいない」「総務が兼務すればいいのでは」「社長が直接やり取りすれば早い」──どれももっともらしく聞こえますが、どれにも落とし穴があります。

この記事では、制作会社側から見た「こういう体制だとプロジェクトが止まりやすい」「こうしてもらえると進みやすい」という実感をもとに、社内担当者の決め方と体制づくりを整理します。技術の知識は関係ありません。必要なのは、役割の線引きと、決裁の段取りです。


「誰がやるか」が決まらないとき、何が起きているのか

「誰がやるか」が決まらないとき、何が起きているのか

ホームページ制作の社内担当者がなかなか決まらない会社には、共通するパターンがあります。

「詳しい人がいない」は本当の理由ではない

「うちにはWebに詳しい人がいないから」という理由で担当者が決まらない──制作会社側からすると、これはよく聞く言葉です。ただ、実はあまり本質的な問題ではありません。

ホームページ制作の社内担当者に求められるのは、HTMLやデザインの知識ではなく、次の3つです。

  • 社内の意見を集約できること:各部署の要望を聞き、優先順位をつける
  • 制作会社との窓口になれること:やり取りの頻度を保てる
  • 決裁者に確認を取れること:判断が必要な場面で、止めずに上に持っていける

技術的な判断は制作会社がします。社内担当者の仕事は「会社としての意思決定を、適切なタイミングで伝えること」です。逆に言えば、Web知識がゼロでも、この3つができる人なら十分に務まります。

担当者不在で起きる典型的な停滞

担当者が曖昧なまま制作を始めると、こんなことが起きます。

場面 起きること
ヒアリング 出席者が毎回変わり、前回の話が白紙に戻る
デザイン確認 「私では判断できない」が繰り返され、2〜3週間止まる
原稿準備 誰が書くか決まっておらず、納期直前に慌てる
最終確認 初めて見た役員が「全部やり直し」と言う

制作会社としては、どれだけ良い提案を用意しても、社内で受け止める人がいなければ前に進めません。ヒアリングの時点で「誰に聞けば最終的な答えが出るのか」が見えている会社と、見えていない会社では、同じ制作期間でも完成度がまったく違ってきます。

ヒアリングで制作会社がどんなことを聞いてくるのか気になる方は、こちらの記事も参考にしてみてください。


兼務か専任か──判断の分かれ目

兼務か専任か──判断の分かれ目

社内にWeb専任の担当者を置けるかどうかは、会社の規模や状況によって異なります。どちらが正解ということではなく、それぞれの条件と限界を知っておくことが大切です。

兼務と専任の向き不向き

兼務で回せるケース

  • 5〜10ページ程度の企業サイト
  • 制作期間が2〜3か月
  • 大きな機能追加がない
  • 決裁者との距離が近い

専任を検討すべきケース

  • 20ページ以上またはEC機能あり
  • 制作期間が半年を超える
  • 複数部署の調整が必要
  • 公開後の運用更新も視野に入れている

目安として、制作期間中に週5時間以上の対応が継続的に発生しそうなら、専任を検討する価値があります。兼務の場合、本業の繁忙期と制作のピークが重なると確認が滞り、プロジェクト全体が遅延します。

兼務で回すときの現実的な工夫

兼務担当者がうまく機能している会社に共通するのは、次のような段取りです。

  • 確認のサイクルを固定する:「毎週金曜に制作会社からの確認事項をまとめてもらい、翌週水曜までに返す」など、リズムを決めておく
  • 判断基準を先に決めておく:デザインの方向性や優先するページなど、大きな判断は制作開始前に社内で合意しておく
  • 「わからない」を早めに言う:制作会社への返答に迷ったとき、黙って抱え込まず「判断に迷っている」と伝えるだけで、制作側は代替案を出しやすくなる

デザイン確認で社内の意見が割れるのはよくあることです。そうなったときの判断基準を事前に持っておくと、担当者の負担は大きく減ります。判断基準の考え方については「Webサイトのデザインの決め方|社内で意見が割れない判断基準」で詳しく整理しています。

専任を置く場合に見落としがちなこと

専任担当者がいれば安心かというと、別のリスクがあります。担当者に情報が集中しすぎて、その人が異動・退職したときにすべてがブラックボックスになるケースです。

これを防ぐには、制作中のやり取りや決定事項を社内の共有フォルダやチャットツールに残しておくことが有効です。制作会社に「議事録を共有してほしい」と依頼するのも、遠慮する必要はありません。むしろ、そうした依頼を快く受けてくれるかどうかが、制作会社の姿勢を見るひとつの指標にもなります。


決裁者をいつ巻き込むか──「最後にひっくり返る」を防ぐ

決裁者をいつ巻き込むか──「最後にひっくり返る」を防ぐ

制作の現場で、もっとも避けたいのが「最終確認で決裁者がちゃぶ台返しをする」場面です。これは制作会社だけでなく、間に立った担当者にとっても大きなストレスになります。

なぜ最後にひっくり返るのか

原因はシンプルで、決裁者が途中経過を見ていないからです。

ホームページ制作では、初期の方向性決め(サイトの目的・ターゲット・構成の設計)でほぼ全体の骨格が決まります。デザインが進み、コーディングに入ったあとに「そもそもの方向性が違う」と言われると、工程の大部分をやり直すことになり、追加費用が発生する場合もあります。

決裁者に確認を入れるタイミング
設計段階目的・構成を決裁者と共有する
デザイン段階トップページ案で方向性の確認を取る
実装〜公開細部の確認は担当者の判断に任せる

決裁者にすべての打ち合わせに出てもらう必要はありません。ただし、最低でも2つのタイミングで目を通してもらうことで、大きな手戻りはほぼ防げます。

  • サイトの目的と構成を決めた段階:「誰に向けて、何を伝えるサイトにするか」に合意をもらう
  • トップページのデザイン案が出た段階:ビジュアルの方向性を確認する

この2回の確認を飛ばして進めると、担当者は常に「これで本当にいいのだろうか」という不安を抱えたまま判断を重ねることになります。情報設計の進め方自体に迷いがある場合は「Webサイトの情報設計とページ構成|社内都合で並べない進め方【2026年】」も参考にしてください。

決裁者が忙しくて時間が取れない場合

「社長が忙しくて確認の時間が取れない」という状況はよくあります。その場合は、次の方法が現実的です。

  • デザイン案をPDFで共有し、「3営業日以内にご指摘がなければこのまま進めます」と期限付きで確認を取る
  • 判断が必要なポイントを3つ以内に絞り、選択肢の形で提示する(「AとBのどちらにしますか」で聞く)
  • 「ここまでは担当者の判断で進めてよい」という権限の範囲を、あらかじめ決裁者と合意しておく

制作会社に「決裁者の確認タイミングをスケジュールに組み込んでほしい」と伝えておくと、最初から確認待ちの期間を織り込んだ進行表を作ってもらえます。


担当者が板挟みにならない体制の作り方

担当者が板挟みにならない体制の作り方

社内担当者がもっとも疲弊するのは、制作会社と社内の上司・他部署の間で板挟みになるときです。制作会社からは「早く素材をください」と言われ、社内からは「本業が忙しいのにそんなことまでやるの?」と言われる。この状態が続くと、担当者のモチベーションが下がり、プロジェクト全体が停滞します。

窓口は1人に絞る

制作会社との連絡窓口は、原則として1人に絞ります。複数人が別々に制作会社に連絡すると、情報が錯綜し、矛盾した指示が飛ぶことになります。

ただし、「窓口が1人」と「すべてを1人で決める」は違います。窓口担当者の役割は、社内の意見を集約して制作会社に伝えること。判断そのものを1人で背負う必要はありません。

社内の合意形成プロセスを先に決める

制作が始まる前に、次のことを社内で決めておくと、担当者の負担が大きく減ります。

決めておくこと 具体的な内容
確認に関わる人 デザイン確認は誰が見るか(全員か、代表者か)
意見が割れたときの決め方 多数決か、特定の人が最終判断するか
確認の期限 制作会社からの確認事項に何営業日以内に返すか
担当者の権限範囲 テキスト修正レベルは担当者判断でOK、など

これらを決めないまま走り出すと、確認のたびに「誰に聞けばいいんだろう」「この変更は自分の判断で進めていいのだろうか」と迷うことになります。

制作会社に期待してよいこと・してはいけないこと

良い制作会社であれば、社内体制づくりについてもアドバイスをくれます。次のようなことは遠慮なく相談して構いません。

  • 確認のタイミングやスケジュールの組み方
  • 社内説明用の資料づくりのサポート
  • 素材(写真・原稿)の準備リストの提示
  • 「どこまでが制作会社の仕事で、どこからが社内の仕事か」の線引き

一方で、社内の人間関係や組織の意思決定そのものは、制作会社にはどうにもできません。「部長を説得してほしい」「他部署に原稿を書くよう指示してほしい」といったことは、社内で解決する領域です。

制作に入る前の準備として「何を決めておくべきで、何は制作会社に任せていいのか」を整理しておくと安心です。「Web制作を依頼する前の準備|発注者が決めなくていいこと【2026年】」で詳しくまとめています。


公開後のことまで考えた体制にする

公開後のことまで考えた体制にする

ホームページは公開して終わりではなく、公開後の更新・改善が成果を左右します。制作時の担当者が公開後も運用に関わるのか、別の人に引き継ぐのかを、できれば制作中に決めておきたいところです。

制作と運用が切れると起きること

制作時と運用時で担当者が変わること自体は問題ありません。ただ、引き継ぎがないまま担当が変わると、「なぜこの構成にしたのか」「この機能は何のために入れたのか」がわからなくなります。結果として、場当たり的な更新が積み重なり、サイト全体の方向性がぼやけていきます。

戦略と制作と運用が分断されると、ブランドは少しずつ薄まっていきます。これは制作の現場で繰り返し実感することです。公開時にどれだけ練り込んだサイトでも、運用段階で意図が引き継がれなければ、半年もすれば整合性が崩れてきます。

「育て続ける」を前提にした体制

制作会社のなかには、「企画 → 設計 → 制作 → 検証 → 改善」というサイクルの最後に「改善・運用」を工程として組み込んでいるところがあります。公開後の運用まで最初から視野に入れている制作会社は、制作中から「公開後に誰がどう更新するか」を確認してきます。

逆に、納品して終わりの制作会社だと、運用の体制は発注側が自力で考えなければなりません。発注先を選ぶとき、「公開後のことをどこまで一緒に考えてくれるか」は、見積もり金額と同じくらい重要な判断材料です。

制作会社を選ぶ際の判断基準を体系的に整理したい場合は、公開前に確認しておくべきポイントをまとめた「ホームページ公開前チェックリスト|見落としやすい確認項目まとめ【2026年】」も参考にしてください。

運用が属人的になって止まってしまう問題については、こちらの記事で原因と対策を掘り下げています。


よくある質問

よくある質問

Web担当者にはどのくらいのWeb知識が必要ですか?

HTMLやデザインの専門知識は必要ありません。制作会社とのやり取りを滞りなく進められること、社内の意見をまとめて判断を伝えられることのほうが重要です。技術的な判断は制作会社が行うので、社内担当者に求められるのは「会社としてどうしたいか」を整理して伝える力です。

社長が直接やり取りするのは避けたほうがいいですか?

社長が方向性を決めること自体は理想的ですが、日々の確認作業まで社長が担うと、多忙でレスポンスが止まりやすくなります。方向性の判断は社長、日常のやり取りは別の担当者という分担が現実的です。社長が唯一の窓口だと、出張1回でプロジェクトが1〜2週間止まることもあります。

担当者が途中で異動になったらどうすればいいですか?

制作中の決定事項や経緯が記録に残っていれば、引き継ぎは十分に可能です。議事録・デザイン案への決定理由・残タスクの一覧を共有フォルダに集約しておくことが備えになります。制作会社にも早めに担当変更を伝え、引き継ぎの打ち合わせを1回設けてもらうのが理想です。

他部署から「聞いていない」と言われるのを防ぐには?

制作開始時に、関係部署へ「ホームページのリニューアルを進めます。確認をお願いする時期が来たら連絡します」と一報を入れておくだけで、かなり違います。全員を巻き込む必要はなく、「いつ・何を確認してもらうか」を明確にしておくことがポイントです。

制作会社に体制の相談をしてもいいのですか?

むしろ歓迎されます。「社内で誰が何を担当すればいいか」「確認フローをどう組めばいいか」といった相談は、制作会社にとってもプロジェクトをスムーズに進めるための重要な情報です。見積もり依頼の段階で体制の悩みを伝えておくと、それを前提にしたスケジュールや進め方を提案してもらえます。


まとめ

ホームページ制作の成否は、デザインのクオリティや制作会社の腕だけで決まるわけではありません。社内で誰が担当し、どういう体制で進めるかが、プロジェクトの進行速度と最終的な仕上がりに直結します。

この記事のポイントを整理します。

  • 担当者に必要なのはWeb知識ではなく、社内調整力と判断を伝える力
  • 兼務で回す場合は、確認サイクルと判断基準を事前に固めておく
  • 決裁者には「設計段階」と「トップページデザイン案」の最低2回、確認の場を設ける
  • 窓口は1人に絞り、担当者の権限範囲を社内で明確にしておく
  • 公開後の運用まで見据えた体制を、制作の段階から設計する

担当者選びや体制づくりに万能のテンプレートはありませんが、「何を決めておけば担当者が動きやすくなるか」を先に考えること。それがスムーズな制作の第一歩です。