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ホテル・旅館Webサイトデザイン事例6選|傾向を分類してわかったこと

この記事の対象: 宿泊業のWebサイトを制作・発注しようとしている担当者、制作会社のデザイナー
読了時間: 約9分

Soreiine!!に掲載されているサイトのうち、ホテル・旅館業のカテゴリに分類されるサイトは6件です。掲載サイト全体からすればごく一部ですが、この6件を横に並べて眺めてみると、業種としての共通した振る舞いが見えてきます。カラーはベージュ系が最多、レイアウトは6件中5件がシングルページ。偶然とは言い切れない偏りです。この記事では、その数字の裏側にある「なぜそうなるのか」を制作者目線で解き明かしながら、実際に掲載されている6サイトの事例を一つひとつ見ていきます。


数字で見るホテル・旅館サイトの傾向

まず根拠となるデータを示します。Soreiine!!掲載のホテル・旅館サイト6件について、カラーとレイアウトを集計した結果です。

カラー系統 件数
ベージュ系 2件
ネイビー系 1件
ブルー系 1件
レッド系 1件
ブラウン系 1件
レイアウト 件数
シングルページ 5件
スプリットレイアウト 1件

サンプル数が6件という点は正直に断っておきます。統計的に「ホテル業界はこうだ」と言い切れる規模ではありません。ただし、これは偶然の産物というより、宿泊業というビジネスの性質が自然とデザインをこの方向へ寄せている結果だと考えられます。その理由を、カラーとレイアウトそれぞれで見ていきます。

なぜベージュ系が選ばれるのか

ベージュ系が2件で最多だったのは、宿泊業が売っているものの正体を考えると納得がいきます。ホテルや旅館が提供する価値は、部屋の広さや設備のスペックではなく「そこで過ごす時間の質」です。強い彩度の色は視覚的に主張が強く、ユーザーの感情を素早く動かせる反面、緊張感や刺激を伴います。一方でベージュのような低彩度・高明度の色は、視線に負荷をかけずに「くつろぎ」「安心」といった感覚を静かに伝えられます。ホスピタリティ産業のブランディングにおいて、色が持つ緊張感の低さは重要な設計変数です。

なぜシングルページが多いのか

レイアウトでシングルページが6件中5件を占めたのも、業種特有の事情が背景にあります。宿泊施設のWebサイトは、コーポレートサイトのように「事業内容」「沿革」「IR情報」といった複数カテゴリの情報を体系立てて見せる必要が薄く、伝えるべきは基本的に「その宿でどんな時間が過ごせるか」という一点に集約されます。訴求すべき情報の種類が絞られているぶん、複雑なグローバルナビゲーションでユーザーを分岐させるより、上から下へスクロールするだけで世界観と情報が順番に開示されるシングルページ構成のほうが、離脱を防ぎながら没入感を保てます。

ホテル・旅館サイトが選ばれやすい理由の構造

シングルページ(5件)

  • 情報を絞り世界観に集中
  • スクロールだけで完結し離脱しにくい
  • 予約導線を1本に絞れる

階層型サイト(1件)

  • 施設・客室情報が多い場合に有効
  • 比較検討を促す構成に向く

今回の6件では、比較検討よりも世界観の伝達を優先したサイトが多数派だった。


掲載6サイトの事例を1つずつ見る

掲載6サイトの事例を1つずつ見る

ここからは実際にSoreiine!!に掲載されている6サイトを、制作者目線でどこが工夫されているかを見ていきます。

グローカリーホテル建屋のブランドサイト

Glocally Hotel TATEYA は、ベージュの柔らかい背景に、雲から顔を出す鳥のようなキャラクターが描かれたローディング画面から始まります。グローカル(グローバル×ローカル)をコンセプトにしたホテルらしく、帽子をかぶった愛嬌のあるキャラクターが最初の数秒でブランドの個性を印象づけます。

Webサイトの評価は、コンテンツが表示されてから始まるものだと思われがちですが、実際にはローディング画面もユーザー体験の一部です。ここで「ただ待たせる」のではなく「ブランドの世界観を先に見せる」設計になっている点が、このサイトの巧みなところです。温かみのあるベージュトーンがホスピタリティを感じさせ、コンテンツへの期待感を高めています。

制作者としては、ローディング演出に凝るとページの表示速度と体感速度がトレードオフになりやすい点は意識しておきたいところです。画像やアニメーションを軽量に保つ工夫については、画像 遅延読み込みでLCP 改善|loading属性とサイズ指定の実装 が参考になります。

愛犬と過ごす古民家リトリートの宿

群馬県赤城山にある愛犬と過ごす古民家リトリート のサイトは、障子越しに差し込む柔らかな光と縁側の風景をフルスクリーンで見せる構成です。「古民家で過ごす静かな時間」というコピーが縦書きで配置され、和の世界観を強調しています。

このサイトの巧みな点は、ダークトーンの写真によって古民家の重厚感と静寂を表現しながら、「愛犬同伴可能」という独自のコンセプトをヘッダーのロゴ脇にさりげなく記していることです。強いメッセージは大きく、補足情報は小さく——という優先順位づけが、情報の粒度をきちんと整理していることを物語っています。ターゲットとなる愛犬家に対して、押しつけがましくなく、しかし見落とされない位置に情報を置く配慮がうかがえます。下部にお知らせバーも設置されており、季節情報の更新にも対応できる作りです。

小松の古民家宿泊施設Komado

石川県小松市の分散型ホテルNIPPONIA小松のサブブランド、Komado は、深い赤色のファーストビューが印象的なサイトです。下部には畳と障子の和室写真がわずかに覗く構成になっており、「Explore Komado」という控えめなCTAボタンが探索心を誘います。

赤という強い色を主役に据えながら、下に隠れた和室写真とのコントラストで「古民家の温もり」と「現代的なデザイン」の融合を視覚的に伝えているのが特徴です。ミニマルな構成で余計な要素を排し、宿の空気感そのものをデザインの主題にしている点は、情報量で押すのではなく、印象で語るアプローチと言えます。

ディズニークルーズのシンガポール就航案内

ディズニー・アドベンチャー号のシンガポール就航案内 は、6件の中では唯一「宿泊施設そのもの」ではなく「旅行商品のプロモーション」という性格を持つサイトです。ブルー基調のカラーリングで海と空の開放感を表現し、クルーズ船の壮大なスケール感を全面に押し出しています。

船内施設やエンターテインメントの魅力を写真とコピーで丁寧に紹介し、予約への導線もスムーズに設計されています。ブランドとしての世界観を保ちながら、最終的にコンバージョン(予約)へ確実に誘導する構成は、プロモーション型サイトとして参考になる点です。

モンゴル星空ツアーの旅行サイト

モンゴルの星空ツアー は、今回の6件の中で唯一スプリットレイアウトを採用しているサイトです。左に満天の星空と旅人のシルエット、右にモンゴルの草原と騎馬の写真を配置し、対比によってスケール感を演出しています。

スプリットレイアウトが機能する条件
左右で異なる情景を持つ星空と草原、夜と昼のような対比軸がある
両方の写真が単体で強い片方が弱いと左右のバランスが崩れる
コピーで橋渡しする「大地と共鳴する完全オーダーメイドの旅」が両方をつなぐ

「大地と共鳴する完全オーダーメイドの旅」というコピーが、この対比を1つの物語としてまとめています。スプリットレイアウトは、左右それぞれの写真が単体でも強度を持っていないと間延びして見えてしまう構成ですが、このサイトはダークな配色で世界観を統一することで、その弱点を回避しています。

強羅花壇 富士の高級旅館サイト

箱根の名旅館・強羅花壇の新施設、GORA KADAN FUJI は、6件の中で最もミニマルなデザインです。淡いベージュグレーの背景に、セリフ体のロゴタイプだけが画面中央に佇んでいます。

装飾を一切排し、ブランド名だけで存在感を示すという判断は、実は相当な自信がないとできません。情報を足りないと感じさせずに「これで十分」と思わせるには、フォントの選定、余白の取り方、ロゴそのものの完成度のすべてが高い水準にないと成立しないからです。ローディングアニメーションの円形モチーフも控えめに配置され、高級旅館にふさわしい静寂と格式を画面全体で体現しています。


新聞・出版・書籍のWebサイトデザイン事例6選|傾向を分類してわかったこと

自社サイトに活かすなら

ここまで見てきた6サイトの事例から、宿泊業のサイトを企画・発注する際に押さえておきたいポイントを整理します。

制作者目線で考えるべきこと

  • 色は「宿泊体験の温度感」を象徴する要素として選ぶ。強い色を使うなら、必ずどこかに静けさとのコントラストを設計する(Komadoの赤×和室写真のように)
  • シングルページを選ぶなら、情報を削ぎ落とす勇気が要る。伝えたいことを全部詰め込むと、シングルページの利点である「没入感」が崩れる
  • ローディング画面や余白も、コンテンツの一部として設計する。待たせる時間をブランド体験に転用できないか検討する

発注者目線で考えるべきこと

  • 「うちの宿の魅力は何か」を一言に絞ってから発注する。情報を多く伝えたい気持ちは分かるが、6件中5件がシングルページを選んでいる背景には、絞り込みへの合意形成がある
  • 客室数や比較検討要素が多い施設(複数プラン、複数棟など)は、シングルページよりも階層型の構成が向く場合がある。自施設がどちらのタイプかを事前に整理しておく
  • ミニマルなデザインを希望するなら、それを支えるだけの写真素材とコピーのクオリティが前提になることを理解しておく。デザインの見た目だけを条件で決めず、素材の質と制作会社の力量をセットで見積もっておくと、発注後の認識ズレを防げる

実装面では、シングルページのサイトでも見出しごとに構造を整理しておくと、後からのメンテナンスや検索エンジンへの見え方が改善します。WordPressで構築する場合は、WordPress管理画面カスタマイズ完全ガイド|クライアント納品前に隠す項目と実装コード や WordPress子テーマの作り方|最小構成とfunctionsの書き方 も参考にしてください。

また、写真やビジュアルを主体とするサイトは表示速度が犠牲になりがちです。特にファーストビューにフルスクリーン写真を使う構成が多かった今回の6件のような設計では、読み込み速度の最適化が体験の質に直結します。

シングルページ内で複数のセクションを見せる際、タブやアコーディオンで情報を整理したい場合は、以下の実装ガイドも役立ちます。


よくある質問

ホテル・旅館サイトはシングルページとページ分割、どちらを選ぶべきですか

伝えるべき情報が「世界観」に集約できるなら、シングルページのほうが没入感を保ちやすいです。一方、客室タイプやプランの比較検討をユーザーに促したい場合は、階層型のページ構成のほうが情報を整理しやすくなります。今回のSoreiine!!掲載6件では、6件中5件がシングルページを選んでおり、世界観訴求を優先する傾向が見られました。

ホテルサイトのカラーはベージュ系にしないといけませんか

そうとは限りません。今回の6件でも、ネイビー系、ブルー系、レッド系、ブラウン系がそれぞれ1件ずつ採用されており、ベージュ系は2件にとどまります。ベージュが選ばれやすい理由は「くつろぎ」や「安心感」を静かに伝えやすいからですが、Komadoのように深い赤を大胆に使い、ミニマルな構成と組み合わせることで独自の世界観を作っている事例もあります。色は施設のコンセプトに合わせて選ぶのが基本です。

ミニマルなデザインにすると情報が足りないと思われませんか

デザインの完成度とコピー・写真の質が伴っていれば、情報量の少なさはむしろ「自信の表れ」として受け取られます。強羅花壇 富士の高級旅館サイトのように、ロゴタイプだけで構成されたサイトでも高級感と格式を十分に伝えられます。ただし、これは装飾を削ぎ落とせるだけの素材とブランド力が前提になるため、発注段階で「何を削れて、何を削れないか」の合意を制作会社と取っておくことが重要です。

ホテルサイトの表示速度が遅くなりがちなのはなぜですか

フルスクリーンの写真や動画をファーストビューに使う構成が多いためです。世界観を伝えるうえで高解像度のビジュアルは欠かせませんが、最適化を怠るとページの表示に時間がかかり、ユーザーの離脱につながります。画像の遅延読み込みやサイズ指定など、基本的な最適化を組み込んだ実装が必要です。

この記事で紹介した事例のデータはどこまで信頼できますか

Soreiine!!に掲載されているサイトのうち、ホテル・旅館カテゴリに分類される6件を対象にした集計です。母数が小さいため、業界全体の統計として断定はできませんが、掲載サイトの実例として傾向を読み取る参考にはなります。今後掲載数が増えれば、この記事の集計も更新していく予定です。