この記事の対象: 建築会社・工務店・不動産会社のWeb担当者、制作会社のデザイナー
読了時間: 約9分
Soreiine!!ギャラリーに掲載されている全162件のサイトから、建築・住宅・不動産業種のものを抜き出すと9件でした。件数だけ見ると小さな母集団ですが、色使いとレイアウトの分布には明確な偏りが出ています。今回はこの9件を実際に見ながら、「なぜこの業種はこのデザインに寄っていくのか」を制作者目線とビジネス目線の両方から読み解いていきます。
数字で見る傾向:ホワイト系5件、1カラム5件が最多

まず結果から。カラー(色調)の内訳はこうなりました。
| カラー傾向 | 件数 |
|---|---|
| ホワイト系 | 5件 |
| グリーン系 | 2件 |
| ブラウン系 | 1件 |
| ブルー系 | 1件 |
レイアウトの内訳はこちらです。
| レイアウト | 件数 |
|---|---|
| 1カラム | 5件 |
| シングルページ | 3件 |
| スプリットレイアウト | 1件 |
カラー傾向
- ホワイト系 5件
- グリーン系 2件
- ブラウン系 1件
- ブルー系 1件
レイアウト
- 1カラム 5件
- シングルページ 3件
- スプリットレイアウト 1件
9件という母数は決して大きくないので、「業界全体の統計」として一般化するのは早計です。ただ、この偏りは偶然ではなく、業種が持つ構造的な理由から説明がつきます。以下、実例を見ながら掘り下げていきます。
なぜホワイト系が過半数を占めるのか

建築・住宅・不動産のサイトが白を基調にする理由は、単に「清潔感があるから」だけでは説明が足りません。この業種が売っているのは、突き詰めれば「空間」そのものです。空間を写真で見せるとき、背景色が主張しすぎると写真の質感や光の入り方が伝わりにくくなります。だから多くのサイトが、写真を邪魔しない余白としての白を選んでいるのだと考えられます。
リビタ創立20周年記念サイト
リビタ創立20周年記念サイトは、白い余白を基調に、人物やオフィス、カフェなどの写真をコラージュ風に不規則に重ねて配置しています。
【制作者目線】写真1枚では伝えきれない「20年で手がけてきた事業の幅」を、コラージュという手法で一画面に凝縮しているのが巧みです。整列させず、あえて重なりを作ることで、静的な情報の羅列ではなく歩みの厚みを感じさせています。右下に添えられた「創立20周年を機に、新たなステートメントをつくりました。」というメッセージも、コラージュの賑やかさと対照的な静かなトーンで置かれていて、読ませる場所を意図的に絞っています。
【発注者目線】周年サイトは往々にして「これまでの実績を並べるだけ」になりがちですが、このサイトは過去の紹介で終わらせず、末尾で「新ステートメント」への期待感につなげています。周年施策を発注するなら、振り返りと今後の方針転換をワンセットで設計するという発想は参考にできます。
光溢れるリノベーションマンションのショーケース
sumai.rebita.co.jpは、窓から光が差し込む内観写真をフルワイドで展開する、白基調のシンプルな1カラムサイトです。
【制作者目線】ロゴをテキストではなく写真に自然に溶け込ませている点がポイントです。ブランディング要素を主張させず、住空間そのものを主役にする判断が徹底されています。物件情報への導線も装飾を削ぎ落としたシンプルな作りで、「見せる」と「探す」の役割を分離しています。
【発注者目線】リノベーション物件は「Before/After」を語りたくなりがちですが、このサイトは完成後の暮らしの魅力だけをストレートに見せています。ターゲットが「すでに住みたいイメージを持っている層」なのか「まだ検討段階の層」なのかで、見せ方を変える判断基準として参考になります。
シンプルを極めた塗装会社のブランドサイト
tetoは、真っ白な画面にロゴだけを配置した、ホワイト×シングルページの中でも最もミニマルな事例です。
【制作者目線】塗装会社が「真っ白なキャンバス」を体現するというコンセプトの一致が秀逸です。手書き風の「teto」のロゴタイプに温かみがあり、paintというサブテキストだけで業種を控えめに伝える引き算の設計になっています。情報量を絞ることで、ローディング後のコンテンツへの期待値を上げる導入としても機能しています。
【発注者目線】情報を削ることは勇気が要る決断ですが、ブランドの世界観が明確であれば「何もない画面」自体が強いメッセージになります。ただしこれは、コンセプトが固まっている場合に効く手法であり、まだブランドの軸が定まっていない段階でやると単に情報不足のサイトに見えてしまうリスクもある点は留意すべきです。
グランレブリーの注文住宅ブランドサイト
grandereverie.jpは、フランス語由来のブランド名を持つ注文住宅ブランドのサイトです。ホワイト系・1カラムというこの業種の典型的な構成を取っています。
【制作者目線】注文住宅というジャンルは施工事例の見せ方が肝になります。1カラムのレイアウトは、事例写真とコンセプト説明を上から下へ順に読ませる導線と相性がよく、スクロールという単純な動作だけでユーザーを迷わせずに誘導できる設計です。
【発注者目線】ブランド名に上質さを込める手法は、価格帯の高い商材ほど効きやすい傾向があります。注文住宅のように検討期間が長い商材では、サイト単体で契約に至ることは少なく、ブランドの世界観を印象づけて資料請求や来場予約につなげる「入口」としての役割が重要になります。
情報を絞って見せるという発想は、事例ページや会社概要ページの情報設計にも応用できます。削るべき情報と残すべき情報の判断基準は、「良い会社概要ページの作り方|情報を削ることで信頼度を上げる設計術」で詳しく解説しています。
グリーン・ブラウン・ブルー系の3件が示す「差別化」の方向性

ホワイト系以外の4件は、いずれも「業界の型からあえて外れる」または「和・上質さを演出する」という、明確な意図を持った色選択をしています。
株式会社桐山組のコーポレートサイト
桐山組は、鮮やかなグリーンの背景に「キリがないほど、桐山組。」という遊び心あるコピーを大きく配置した、業界内では異色のファーストビューを持つサイトです。
【制作者目線】長い歴史を持つ建設会社が、あえて若々しく活気ある色使いに振り切っている点が興味深いところです。英語と日本語のタイポグラフィを組み合わせることでモダンさを担保しつつ、社名を活かした言葉遊びのコピーで記憶に残る仕掛けを作っています。ナビゲーションに「3分でわかる桐山組」という項目を用意し、訪問者の関心の入口を明確に用意している設計も丁寧です。
【発注者目線】建設業は良くも悪くも「堅実・保守的」なイメージで語られがちな業界です。その中であえて大胆な色使いをすることは、採用サイトとしての機能も含めて「若い世代に届く会社」という印象を作る戦略として理解できます。老舗であることと、古くさく見えることは同じではない、という好例です。
品格漂う積水ハウスの賃貸住宅ブランドサイト
シャーメゾンは、日本庭園を望むエントランス写真をグリーン基調で見せる、賃貸住宅ブランドのサイトです。
【制作者目線】「賃貸住宅にも確かな品質と住み心地」というメッセージを、和の庭園ビジュアルで裏付けている構成です。緑の庭園と木の温もりが調和したビジュアルは、コピーの主張を言葉だけに頼らせず、視覚的な説得力を持たせています。
【発注者目線】賃貸住宅は一般的に「持ち家に比べて質が劣る」という先入観を持たれやすいカテゴリです。このサイトは高級分譲マンションのようなビジュアル表現をあえて賃貸ブランドに用いることで、その先入観そのものに挑む設計になっています。カテゴリの固定観念を崩したいときの構成として参考になります。
上質な暮らしを約束するマンションブランドサイト
バンベールは、エントランスの高級感ある写真をスプリットレイアウトで見せるブラウン系のサイトで、9件の中で唯一のスプリットレイアウト事例です。
【制作者目線】石材とウッドの質感が伝わる写真選びが秀逸で、「信頼のブランドが贈る上質の邸宅」というコピーがブランドの格を裏付けています。スプリットレイアウトは、1つの画面内で複数の情報(昼夜の表情や複数のアングル)を同時に見せられる利点があり、高級感を伝える写真点数が多いブランドサイトと相性がよい構成です。来場予約・資料請求・オンライン相談というCTAも整理されており、閲覧から行動への導線が途切れていません。
【発注者目線】9件中唯一のスプリットレイアウトという事実は、この構成が「使いどころを選ぶ」ことを示しています。情報量やコンバージョン経路が複雑な高額商材では効果的ですが、シンプルに世界観だけを伝えたい場合はむしろ1カラムやシングルページの方が適しています。
大阪ガス都市開発のNEXT21実験住宅
TRANS×HOMEは、淡いブルーグレーの背景に日本語テキストがアニメーションで表示される、9件中唯一のブルー系事例です。
【制作者目線】次世代の住まいのあり方を提案する実験的なプロジェクトという性質上、先進性と知性を感じさせる配色が選ばれています。テキストアニメーションによる演出は、静的な情報発信ではなく「未来を提示する」というプロジェクトの立ち位置を視覚的に補強しています。
【発注者目線】このサイトは物件情報や販売を目的にしたものではなく、都市開発企業としての社会的意義や研究的な姿勢を伝えるプロモーションサイトです。直接のコンバージョンを狙わないサイトだからこそ、業界の定番色から離れた配色を選べているとも言えます。目的がブランディングか営業かによって、色選びの自由度は変わってくるという好例です。
こうした企業の姿勢や世界観を伝えるサイトほど、AI検索時代のエンティティ定義やクローラー許可の設計を制作の初期段階から組み込んでおく必要があります。具体的な設定方法は「AI検索(AEO/GEO)で引用されるためのサイト設計チェックリスト」にまとめています。
自社サイトに活かすポイント

ここまでの実例を踏まえると、建築・住宅・不動産業種のサイト設計には次のような判断軸が見えてきます。
1. 写真が主役の商材は、白を「消す色」として使う。 リノベーションや注文住宅のように、完成後の空間を見せることがコンバージョンに直結する商材では、背景色を目立たせないことが正解になりやすい傾向があります。
2. あえて外す判断は、ブランドの立ち位置が明確なときだけ機能する。 桐山組のグリーンやシャーメゾンの和のビジュアルは、「業界の型を知った上で、意図的に外している」から効いています。単に目立たせたいという理由だけで色を選ぶと、伝えたいメッセージとのズレが生まれる危険があります。
3. レイアウトは情報量とCTAの複雑さで決める。 情報を順に読ませたいなら1カラム、世界観をひと目で伝えたいならシングルページ、複数の訴求軸を同時に見せたいならスプリットレイアウトという住み分けが、今回の9件からも読み取れます。
自社サイトのリニューアルを検討する際は、「この業界だから白」「この業界だからグリーン」と安易に決めるのではなく、自社が伝えたいのが「空間の魅力」なのか「企業としての姿勢」なのかを最初に言語化することが、色とレイアウトの選択を誤らないための出発点になります。
3カラムのような情報量の多いレイアウトが今回の9件に1件もなかったことも、この業種の特徴を示しています。レイアウト設計の基本的な考え方は、以下の記事も参考になります。
よくある質問

建築・住宅・不動産のサイトはなぜ白基調が多いのですか?
売っている商材が「空間」であることが大きな理由です。写真の質感や光の入り方を邪魔しないために、背景色を目立たせず余白として白を使う設計が多く見られます。今回のSoreiine!!掲載9件でも5件がホワイト系でした。
業界のイメージと違う色を使っても効果はありますか?
あります。桐山組のグリーンやシャーメゾンの和の演出のように、業界の定番から意図的に外す設計は差別化に効きます。ただし、ブランドが伝えたいメッセージと色の意図が一致していることが前提です。目立たせるためだけに色を選ぶと逆効果になりかねません。
1カラムとシングルページはどう使い分ければよいですか?
情報量や訴求内容によって決まります。物件情報や施工事例など複数の情報を順に読ませたい場合は1カラム、ブランドの世界観をひと目で伝えたい場合はシングルページが向いています。今回の9件では1カラムが5件、シングルページが3件でした。
スプリットレイアウトはどんな場合に向いていますか?
高級マンションやブランドサイトのように、情報量やコンバージョン経路が複雑な高額商材で効果を発揮しやすい構成です。今回の9件中では唯一バンベールのサイトが採用しており、昼夜の表情など複数のビジュアルを同時に見せる目的で使われていました。
この9件の傾向は業界全体に当てはまりますか?
Soreiine!!掲載162件のうち建築・住宅・不動産は9件と母数が限られるため、業界全体の統計として断定はできません。ただし色とレイアウトの偏りには、商材の性質(空間訴求か姿勢訴求か)による構造的な理由があり、傾向として参考にする価値はあります。

