業界・事例

金融・証券・保険Webサイトデザイン事例|掲載6件を分類してわかったこと

この記事の対象: 金融・VC・フィンテック系サイトを担当するWeb制作者、金融関連のサイトリニューアルを検討している発注者
読了時間: 約9分

Soreiine!!ギャラリーで金融・証券・保険カテゴリに分類されるサイトは6件です。決して多い数ではありませんが、色とレイアウトの選ばれ方には明確な偏りがありました。今回はこの6件を全て具体的に見ながら、「なぜ金融系はこの見せ方に寄るのか」を制作者目線で掘り下げます。


数字で見る金融系サイトの傾向

まず全体像から確認します。6件のカラー内訳とレイアウト内訳は以下の通りです。

カラー系統 件数
ブラック系 3件
ホワイト系 2件
ベージュ系 1件
レイアウト 件数
シングルページ 3件
1カラム 2件
グリッドレイアウト 1件

最多はブラック系(3件)とシングルページ(3件)。6件という母数では統計的な断定はできませんが、この2つが重なって現れている点は見逃せません。金融・VC系のサイトでは「暗い背景+縦一直線に読ませる構成」が一つの型として選ばれやすいと考えられます。

金融系6件のカラー傾向

ブラック系(3件)

  • Endex AI
  • スパイラルキャピタル
  • LENZ&Co.

ホワイト・ベージュ系(3件)

  • デライト・ベンチャーズ
  • Solflare
  • Coral Capital

同じ「金融・投資」でも、暗色でシリアスに攻める陣営と、明色で親しみやすさを狙う陣営に分かれています。

なぜブラックが選ばれるのか。金融というジャンルは「信頼」と「知性」を短時間で伝える必要があるサイトです。派手な色や賑やかな装飾は、資産や投資判断を扱う場において「軽さ」の印象につながりかねません。黒背景は光量を絞ることで視線を情報そのものに集中させ、装飾を削ぎ落とした分だけ「本気度」を演出できる、という制作側の計算が働いていると見ています。


実例で見る6サイトの作り

ブラック系×ミニマル構成が刺さる2社

スパイラルキャピタル(soreiine.jp掲載ページ / 公式サイト)は、6件の中でも最もストイックな作りです。ダークグレーから黒に沈む背景に、白文字のナビゲーションだけが浮かぶ。ABOUT、FUND、TEAM、PORTFOLIOという投資家向けの動線が整然と並び、装飾的な演出は一切ありません。

【制作者目線】ここまで要素を削ると「何もしていないサイト」に見えるリスクがありますが、逆に言えば余白と黒地のコントラストだけで成立させる自信の表れとも読めます。フォントサイズと行間の設計が甘いと途端に安っぽく見えるため、実装難度としてはむしろ高いパターンです。

【発注者目線】VC企業がターゲットにするのは投資家や起業家という、情報リテラシーの高い層です。派手な訴求より「無駄がない=プロフェッショナルである」というメッセージの方が刺さります。装飾費を削ってタイポグラフィと余白設計に予算を寄せる、という判断は理にかなっています。

LENZ&Co.(soreiine.jp掲載ページ / 公式サイト)も同じ漆黒ベースですが、こちらは実績としてスポーツクラブのブランディング事例をファーストビューに大きく配置しています。クラブカラーの鮮やかな配色が暗い背景に浮かび上がる構成です。

【制作者目線】黒背景は「何を置いても映える」という強みがあります。実績のビジュアルにブランドカラーが強い案件がある場合、背景を無彩色に振ることで実績側の色が主役になり、結果的に説得力が増します。IRクリエイティブファームという「クリエイティブと金融の橋渡し」を掲げる業態にとって、実績訴求は最も速い信頼構築の手段です。

【発注者目線】自社の実績を「言葉」ではなく「絵」で見せられるなら、その絵を主役にする設計は正解です。特にIR・金融周りのクリエイティブ会社は「実際に何を作れるのか」が伝わらないと発注に至りません。

資金調達実績を信頼の担保に使うEndex AI

Endex AI(soreiine.jp掲載ページ / 公式サイト)は「AI Built For Excel」を掲げるフィンテック系AIサービスです。黒背景に白いセリフ体の大きなタイポグラフィという、他2社と同じブラック系ですが、こちらは単一ページの縦スクロールで情報を積み上げる1カラム構成です。

【制作者目線】ページ上部に投資家からの資金調達を発表するバナーを配置し、下部には大手金融機関での導入実績を示す企業ロゴを流す。この「上で信頼の種をまき、下で回収する」構成は、フィンテック系のリードジェネレーションサイトによく見られる型です。メールアドレス入力とRequest Accessボタンという、アーリーアクセス募集特有のCTA設計も特徴的です。

【発注者目線】まだ一般公開前のサービスが「出資元」「導入を検討している企業層」を前面に出すのは、実績のない段階で信頼を補うための定石です。プロダクト自体をまだ見せられないフェーズでは、誰が自分たちを信じているかを見せることが最速の説得材料になります。

明色で「金融らしさ」を崩しにいく3社

一方、ホワイト・ベージュ系を選んだ3社は、金融系サイトにありがちな硬さをあえて崩しています。

デライト・ベンチャーズ(soreiine.jp掲載ページ / 公式サイト)は、ベージュの落ち着いた背景に「世界を動かす事業をつくろう。」というコピーをオレンジのアンダーラインで強調しています。人物写真とイラストを組み合わせたグリッドレイアウトで、Vision、Venture Investmentといったセクションがカード型に並びます。

【制作者目線】グリッドレイアウトは情報量が多くなりがちなVC系サイトと相性がよく、各セクションの粒度を揃えて配置できるため、読み手が迷わず情報を拾えます。経営陣の写真を大きく配置している点も特徴で、顔を見せることで「誰がやっているか」を早い段階で伝える設計です。

【発注者目線】VCという業態は「この人たちに預けて大丈夫か」を問われる商売です。経営陣の顔を隠さず出す設計は、透明性の担保として機能します。金融系だからといって無機質に振り切る必要はなく、人の顔を見せる選択肢も十分に有効だと分かる事例です。

Coral Capital(soreiine.jp掲載ページ / 公式サイト)はさらに大胆で、クリーム色の背景にコーラルピンクの有機的な波形グラフィックを配置しています。

【制作者目線】VCサイトの「常識」である硬さ・重さを意図的に外し、グラデーションのテクスチャで柔らかさと奥行きを表現しています。見る角度によって印象が変わる繊細な処理は、単純な色選びだけでなく質感の作り込みまで踏み込んでいる証拠です。

【発注者目線】起業家に寄り添う姿勢を「言葉」ではなく「デザインの手触り」で先に伝えている点が秀逸です。特にアーリーステージのスタートアップを支援するVCであれば、堅苦しさより「話しかけやすさ」を優先する判断は、ターゲット層とのミスマッチを防ぎます。

Solflare(soreiine.jp掲載ページ / 公式サイト)はSolanaブロックチェーン対応の暗号資産ウォレットで、ホワイト系・1カラムに分類されています。フィンテック系サービスとして、セキュリティの信頼感と先進的なUI/UXが同時に求められる難しいジャンルです。

【発注者目線】暗号資産という「新しい金融」領域では、既存の金融機関が持つ重厚感よりも、テクノロジー企業らしい軽快さの方がユーザー層に合う場合があります。ジャンルとしての「金融らしさ」と、ターゲット層の期待値は必ずしも一致しないことを示す例です。



自社サイトに活かすポイント

今回の6件から読み取れることをまとめます。

  • ブラック系×シングルページ/1カラムは「情報を絞って信頼感を出す」王道パターン。要素を削れる分だけ、タイポグラフィと余白の精度が結果を左右します
  • 明色系を選ぶ社は、ターゲットが「起業家」「個人ユーザー」など、金融機関の堅さを求めていない層であることが多いようです。誰に向けたサイトかで色の方向性は変わります
  • 実績・出資元・導入企業を見せる構成は、フィンテック系で特に有効。プロダクトそのものより先に「誰が信じているか」を伝える設計です
  • グリッドレイアウトは情報量の多いVC系と相性が良いが、母数は1件のみのため、シングルページほど強い傾向とは言えません

自社サイトを金融・投資・フィンテック系で作る場合、まず「硬さで攻めるか、柔らかさで崩すか」の方向性を決めてから配色に入ると、今回のような明確な型に沿った設計がしやすくなります。

実装面では、黒背景でタイポグラフィを主役にする場合、画像の遅延読み込みとLCP改善が効いてきます。ファーストビューのテキストが白セリフ体のような大きい要素になるケースでは、周辺画像の読み込み順序次第で体感速度が変わるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。

グリッドレイアウトのようにセクションをカード型で並べる構成をWordPressで組む場合は、カスタム投稿タイプの一覧テンプレートが土台になります。Vision、Venture Investmentのようにカテゴリごとに情報を管理したいなら、こちらの実装手順も参考になります。


よくある質問

金融系サイトは黒背景にした方が信頼感が出ますか?

Soreiine!!掲載の6件では黒背景が3件と最多でしたが、明色でも信頼感を出している事例(デライト・ベンチャーズなど)があります。黒背景は装飾を削って情報に集中させる効果がありますが、絶対条件ではありません。ターゲット層が経営陣の顔や実績を見たいのか、洗練された抽象表現を求めているのかで判断すべきです。

シングルページと1カラムはどう使い分けるべきですか?

シングルページは1つのランディングページ内で完結させたい場合、1カラムは複数ページに分けつつ各ページの情報を縦一直線に読ませたい場合に向いています。今回の6件ではどちらも金融系で採用例があり、情報量とページ構成の意図次第で選ぶべきものです。

VC・投資系サイトでグリッドレイアウトを使うメリットは何ですか?

Vision、Venture Investmentのようにカテゴリの異なる情報を並列に見せたい場合、グリッドレイアウトは情報の粒度を揃えて配置できる利点があります。ただし今回の6件では1件のみの採用にとどまっており、シングルページほど強い傾向ではありません。

フィンテック系の新規サービスで実績が少ない場合、どう信頼を作ればよいですか?

Endex AIの事例のように、自社の実績ではなく「出資元」や「導入を検討している企業層」を見せる方法があります。プロダクトそのものをまだ公開できない段階では、誰が自分たちを支持しているかを伝えることが有効な代替手段になります。