この記事の対象: ノーコードツールと制作会社のどちらに依頼すべきか迷っている事業者
読了時間: 約12分
StudioやWix、Shopifyといったノーコードツールが広く使われるようになり、「コードを書かなくてもホームページが作れる」時代になった。制作会社に頼めば数十万〜数百万円かかるサイトが、月額数千円のツールで作れるなら、そちらを選びたくなるのは当然のこと。
ただ、ノーコードで制作を進めた結果「思ったほど安くならなかった」「途中で制作会社に頼み直した」という話は珍しくない。なぜそうなるのか。費用の内訳を分解すると、ノーコードで削れるのは「コーディング」の部分だけで、設計・原稿・写真・運用といった工程はツールが何であっても変わらないことが見えてくる。
この記事では、ノーコードと制作会社の費用構造の違いを工程ごとに整理し、「自分の会社の場合はどちらが合っているか」を判断できる基準を示す。
ノーコードで安くなるのは「組み立て」の工程だけ

ホームページの制作費は何に使われているか
制作費の中身をざっくり分けると、次の5つの工程になる。
- 企画・設計 — 誰に何を伝えるサイトにするか決める
- デザイン — 見た目・レイアウト・導線を決める
- コーディング(実装) — デザインをWebページとして組み立てる
- コンテンツ制作 — 原稿を書く、写真を撮る・選ぶ
- テスト・公開・運用 — 動作確認、公開作業、その後の更新
ノーコードツールが代替するのは、このうち3番目の「コーディング」。テンプレートを選び、ドラッグ&ドロップでレイアウトを組み、テキストと画像を流し込む。その作業がコードなしでできるのがノーコードの利点であり、裏を返せば、それ以外の工程には手を出してくれない。
コーディング費用は全体の何割か
一般的なコーポレートサイト(5〜10ページ程度)の制作費が80〜200万円だとすると、コーディングにかかる工数は全体の20〜30%程度。ノーコードで理論上削減できるのは制作費全体の2〜3割にすぎない。
残りの7〜8割——企画・設計・デザイン・原稿・写真・テスト・運用——はノーコードでも同じようにかかる。
ノーコードで削れる
- HTML/CSSコーディング
- JavaScriptの実装
- CMSのテーマ構築
ツールに関係なく残る
- サイト設計・情報整理
- デザインの方向性決め
- 原稿ライティング
- 写真撮影・素材準備
- 公開後の更新・運用
左側がノーコードで省ける工程、右側がツールを問わず発生する工程。費用の大半は右側に集中している。「ノーコード=安い」が直感に反して成り立ちにくい理由はここにある。
費用の内訳を工程別に比較する

制作会社に依頼した場合と、ノーコードで自社対応した場合、ノーコードツールの構築を制作会社に頼んだ場合で、費用の出方がどう変わるかを整理する。
| 工程 | 制作会社に依頼 | ノーコード(自社対応) | ノーコード(制作会社経由) |
|---|---|---|---|
| 企画・設計 | 制作費に含まれる | 自分でやる(人件費) | 制作費に含まれる |
| デザイン | 制作費に含まれる | テンプレートを選ぶ | デザイン費が発生 |
| コーディング | 制作費に含まれる | 不要(ツールが代替) | 不要 |
| 原稿・写真 | 別途 or 含む | 自分で用意 | 別途 or 含む |
| ツール利用料 | なし(買い切り納品が多い) | 月額1,000〜5,000円程度 | 月額1,000〜5,000円程度 |
| 運用・保守 | 月額5,000〜30,000円程度 | 自分で対応 | 別途契約 |
表を見ると、ノーコードで自社対応した場合でも「なくなる費用」はコーディングの列だけ。他の行にはすべてコストが残っている。
見落としやすい3つのコスト
1. 自分の時間(人件費)
ノーコードツールの操作を覚え、ページを作り、原稿を書き、写真を選び、公開前にチェックする。本業の傍らでこの作業をすると、2〜3か月はかかることが多い。その間の人件費は「制作費」として計上されないだけで、確実に発生している。
仮に月給40万円の社員が業務時間の3割をサイト制作に使い、3か月かかったとすると、人件費だけで36万円。ノーコードの「ツール代が安い」という利点は、この見えないコストで相殺されることがある。
2. 原稿と写真の準備コスト
テキストや写真は、ツールが何であっても自動では揃わない。プロに依頼する場合、原稿作成で1ページあたり3〜5万円、写真撮影で半日5〜15万円程度が一般的な相場。自分で書くとしても、「何を書くか」の設計がなければ手が止まる。
素材の準備がサイトの出来をどれだけ左右するかについては、以下の記事で詳しくまとめている。
3. 公開後の運用コスト
サイトは作って終わりではない。情報の更新、ドメインやSSL証明書の管理、アクセス状況の確認——これらは継続して発生する。ノーコードツールなら更新操作自体はやりやすいが、「何をいつ更新すべきか」の判断はツールが教えてくれるものではない。
制作費の見積もりを比べるときは、初期費用だけでなく運用費も含めた年間の総額で考えたほうがいい。見積もりの見方について詳しく知りたい場合は、Web制作の見積もり比較|金額だけで選ばないための判断基準を参考にしてほしい。
ノーコードが妥当な条件と、行き詰まる条件

「ノーコードか制作会社か」は、どちらが正解という話ではない。自社の状況次第で合理的な選択が変わる。以下の基準で切り分けられる。
ノーコードで問題なく進むケース
- ページ数が少ない(5ページ以下):会社概要・サービス紹介・問い合わせ程度の構成
- テンプレートのデザインで十分:業種や規模的にオリジナルデザインでなくても支障がない
- 社内にITに慣れた担当者がいる:ツール操作だけでなく、公開後の更新まで回せる人
- ECや予約などの複雑な機能が不要:情報発信が主目的の静的なサイト
- 短期間で公開したい:まず最低限のサイトを立ち上げ、後から育てる方針
途中で行き詰まりやすいケース
- 「参考サイトのようなデザインにしたい」:テンプレートの枠を超える表現を求めると、ノーコードの制約にぶつかる
- ページ数が多い・構成が複雑:20ページを超えるとカテゴリ分けやナビゲーション設計が必要になり、テンプレートでは整理しきれない
- SEOで上位表示を狙いたい:URL構造やメタ情報の細かい制御がツールの仕様で制限されることがある
- 外部システムとの連携がある:基幹システム、CRM、MAツールなどとのデータ連携はノーコードでは困難な場合が多い
- ブランドの統一感を厳密に守りたい:ロゴ・配色・フォント・余白のルールをピクセル単位で揃えるには、テンプレートの微調整では限界がある
ノーコードツールの制約がどういう形で現れるかは、Shopifyでできないこと|依頼前に知るカスタマイズの限界【2026年】がプラットフォーム固有の話として参考になる。ツールは違っても「できることの天井がある」という構造は共通している。
「ノーコードで始めて途中から制作会社」が最も割高になる

ノーコードで作り始めて、途中で壁にぶつかり、制作会社に引き継ぐ——このパターンが費用面ではいちばん非効率になりやすい。
なぜ割高になるのか
制作会社に途中から入ってもらう場合、通常の制作費に加えて以下のコストが上乗せされる。
- 現状把握の工数:既存サイトの構成を確認し、何を活かして何を作り直すか判断する作業。ゼロから始めるよりも手間がかかる
- プラットフォーム移行の手間:WixからWordPress、STUDIOからShopifyなど、ツールを変える場合はデータの移し替えが必要になる
- やり直しコスト:ノーコードで作った部分が制作会社の設計方針と合わなければ、結局ゼロから組み直すことになる
たとえば、最初から制作会社に依頼していれば初期費用だけで済んだものが、ノーコードでの試行期間+プラットフォーム移行+設計やり直しで、当初想定の1.5〜2倍の総額に膨らむことがある。現状把握や移行作業の工数が加算される分、最初からプロに頼むより割高になるのは構造的に避けにくい。
ノーコードで費やした時間とツール費用がそのまま「沈没コスト」になってしまう。途中で切り替える可能性が少しでもあるなら、最初の段階で制作会社に「ノーコード前提の相談」をしておくほうが結果的に安くつく。
ノーコードツールの選定と設計だけ制作会社に依頼し、ページの組み立ては自社で行うという分業も選択肢の一つ。制作会社への相談前に何を準備しておくとスムーズかは、以下の記事でまとめている。
制作会社に払っている費用の正体

「制作会社は高い」と感じるのは自然なことだが、その費用はコーディングだけに支払っているわけではない。
費用に含まれる「見えにくい仕事」
- ヒアリングと要件整理:「何を作るか」を一緒に考える工程。ここを省くと、完成後に「思っていたのと違う」が高確率で起きる
- 情報設計:どのページに何を置くか、ユーザーがどの順番で情報を読むかの設計。テンプレートを選ぶだけでは代替できない
- デザインの意図:見た目をきれいにするだけでなく、「この情報を目立たせる」「この流れで問い合わせに誘導する」という目的を形にする作業
- 品質管理:ブラウザごとの表示確認、リンク切れチェック、表示速度の最適化、アクセシビリティ対応
こうした工程を「全部お任せしたい」と考えるなら、ホームページ制作を丸投げしたい|任せてよい範囲とダメなことを先に読んでおくと、任せてよいことと自社で判断すべきことの線引きがわかる。
「安い制作会社」と「ノーコード自作」は何が違うのか
制作費が安い会社の中には、裏側でノーコードツールやWordPressの既成テーマを使っているところもある。それ自体は悪いことではないが、「テンプレートを使って安い」のか「設計やディレクションを省いて安い」のかは区別しておきたい。
見積もりを比較するときは、以下を確認する。
- 実装方法(フルスクラッチか、ノーコードか、WordPressテーマか)
- デザインはオリジナルかテンプレートベースか
- 原稿と写真はどちらが用意するか
- 公開後のサポート範囲と月額費用
- 納品物の形(サーバーごと引き継ぐのか、アカウント情報の共有だけか)
これらの条件を揃えずに「A社は50万円、B社は150万円」と並べても、金額の比較にはならない。含まれている工程が違えば、費用が違うのは当然のこと。
見積書のどこに注目すれば「条件が同じか」を判断できるかは、Web制作の見積もり比較|金額だけで選ばないための判断基準でも解説している。
費用の目安を先に知りたい方へ
ページ数や必要な機能を選ぶだけで概算を確認できる費用シミュレーターを用意しています。見積書を読み解く前の物差しとしてお使いください。
よくある質問

ノーコードで作ったホームページは検索で上位に出ますか?
ツール自体が検索順位を大きく左右することはない。Googleはコンテンツの質と利便性で評価するため、原稿の中身やページの読みやすさのほうが重要になる。ただしノーコードツールによってはURL構造やページ表示速度に制約があり、SEOの細かい施策が打ちにくい場合がある。検索流入を重視するなら、ツール選定の段階でSEO関連の仕様を確認しておくべき。
ノーコードで作ったサイトをWordPressに移行できますか?
移行自体は可能だが、テキストと画像を手作業で移し替える工程が発生する。ノーコードツールの多くはエクスポート機能が限定的で、デザインやレイアウトはそのまま引き継げない。ページ数が増えるほど移行の手間は大きくなるため、将来的に移行する可能性があるなら、原稿と画像のデータは常に手元にバックアップしておくことを勧める。
制作会社にノーコードツールで構築してもらうことはできますか?
対応している会社はある。STUDIOやShopifyで制作する会社は増えており、プロの設計力を活かしつつ、公開後の更新を自社で行いやすくなるのがメリット。費用はフルスクラッチより抑えられる傾向があるが、設計やデザインの工数は同じようにかかるため「ノーコードだから半額」にはならない。
ノーコードツールの月額費用はどのくらいですか?
無料プランを用意しているツールもあるが、独自ドメインの利用や広告非表示には有料プランが必要。一般的には月額1,000〜5,000円程度が目安で、ECカートやメンバーシップ機能を追加すると月額3,000〜15,000円になることもある。年間だと12,000〜180,000円。制作会社に依頼した場合の月額保守費(5,000〜30,000円程度)と並べて、年間の総コストで比較するとよい。
自社で作るか制作会社に頼むか、判断の分かれ目はどこですか?
いちばんの分かれ目は「サイトに求める役割」。名刺代わりの情報掲載であればノーコードで十分なことが多い。一方、問い合わせ獲得・採用強化・EC販売など事業の成果を求めるなら、設計やコンテンツに投資する意味が出てくる。まずはサイトの目的を整理するところから始めると、必要な投資の規模も自然と見えてくる。
まとめ
ノーコードツールの登場で、ホームページ制作の「組み立て」にかかるコストは確実に下がった。ただし、費用の大半を占める企画・設計・コンテンツ制作・運用は、ツールが変わっても同じように発生する。
判断のポイントは3つ。
- 何が安くなるのか — コーディング費用(全体の2〜3割)が削れる
- 何は変わらないのか — 設計・原稿・写真・運用の費用は同じようにかかる
- 途中で切り替えるリスク — ノーコードから制作会社への乗り換えは割高になりやすい
「ノーコード=安い」と短絡せず、サイトの目的と規模に照らして、最初にどちらのルートで進めるかを決める。それが結果的に、いちばん費用を抑える進め方になる。


