リニューアルガイド

Shopifyでできないこと|依頼前に知るカスタマイズの限界【2026年】

この記事の対象: ShopifyでのEC構築・リニューアルを検討している事業者
読了時間: 約10分

Shopifyは「ノーコードで何でもできる」と紹介されることが多いプラットフォームです。実際、テーマを選んで商品を登録するだけでECサイトは動き始めます。ただ、制作会社にカスタマイズを依頼する段階になると「それはShopifyではできません」と言われる場面が出てきます。

チェックアウト画面の制限、テンプレート言語Liquidの壁、アプリを入れても埋まらない要件——。こうした境界線は、要件を固める前に知っておかないと手戻りが大きくなります。この記事では、Shopifyでの構築を検討している方が「依頼する前に把握しておくべきカスタマイズの限界」を、制作側の視点から整理します。


Shopifyの設計思想が「できないこと」を決めている

Shopifyの設計思想が「できないこと」を決めている

自由度と引き換えに得ているもの

Shopifyの制約を「不便だ」と感じる前に、その設計思想を理解しておくと話が早くなります。

Shopifyはサーバー管理、セキュリティパッチの適用、決済まわりの法的対応をプラットフォーム側が一括で引き受けてくれます。運営者がインフラを気にせず販売に集中できるのは、この仕組みがあるからです。

裏を返すと、サーバーに直接触れない、データベースを自由に操作できない、コアのシステムを書き換えられない、ということでもあります。WordPressのように「すべて自分で管理する代わりにすべて自由にいじれる」世界とは前提が違います。

制限の3つのレイヤー

Shopifyのカスタマイズ制限は、大きく3つのレイヤーに分かれます。自社の要件がどこに該当するかを把握しておくと、制作会社との話がスムーズに進みます。

レイヤー 内容 制限の強さ
チェックアウト・決済 購入手続き画面、決済処理 最も強い(Plus以外はほぼ変更不可)
システム・データ構造 URL構造、データベース、サーバー設定 強い(変更手段がない)
フロントエンド・デザイン 見た目、レイアウト、機能追加 比較的柔軟(Liquid・アプリで対応可)

上の2つは制作会社の技術力でどうにかなる話ではなく、Shopifyの仕様としてできないことです。ここを要件に含めてしまうと、あとから根本的な見直しが必要になります。


チェックアウト画面——最も制限が厳しい領域

チェックアウト画面——最も制限が厳しい領域

通常プランではほぼ手を加えられない

Shopifyの通常プラン(Basic・Shopify・Advanced)では、チェックアウト画面のカスタマイズはかなり限られています。できるのはロゴの差し替え、色の変更、フォントの調整程度です。入力項目の追加・削除、レイアウトの変更、独自のステップ追加といったことは基本的にできません。

よくある要望として「購入画面に配送希望日の入力欄を追加したい」「ギフトラッピングの選択をチェックアウト内で出したい」といったものがありますが、通常プランでは対応できません。アプリを使ってカート画面(チェックアウトの手前)で代替する形になることがほとんどです。

Shopify Plusなら解決するのか

Shopify Plusでは「Checkout Extensibility」という仕組みを使い、チェックアウト画面に独自のUI要素を追加できます。ただし、Shopify Plusは月額のコストが大きく変わるプランです。

「チェックアウトのカスタマイズが本当に必要か」は、Shopifyを選ぶかどうかの判断に直結します。要件定義の段階で制作会社に確認しておくべきポイントの筆頭です。


Liquidテンプレートでできる範囲と、できないこと

Liquidテンプレートでできる範囲と、できないこと

Liquidとは

Liquidは、Shopifyのテーマ(見た目の部分)を構成するテンプレート言語です。HTMLの中にLiquidのタグを書くことで、商品名や価格などの動的なデータを表示する仕組みになっています。テーマのカスタマイズは、基本的にこのLiquidを編集する作業です。

Web制作の経験がない方には馴染みがないと思いますが、「見た目を作るための専用言語」くらいの理解で十分です。

Liquidで対応できること

  • 商品ページ・コレクションページ・固定ページのレイアウト変更
  • オリジナルのセクション(ページの構成パーツ)を自作する
  • 条件分岐による表示の切り替え(在庫の有無、タグの有無など)
  • メタフィールドを使った追加情報の表示

テーマの見た目に関わる部分は、LiquidとHTML/CSS/JavaScriptを組み合わせることで、かなり自由にカスタマイズできます。管理画面から並び替えや内容の編集ができるパーツを自作することも可能です。セクションの仕組みについては以下の記事で詳しく触れています。

Liquidでは対応できないこと

一方、以下のような要件はLiquidだけでは実現できません。

  • URL構造の変更: 商品ページは /products/商品ハンドル で固定されており、/shop/カテゴリ名/商品名/ のような階層構造にはできません。コレクションのURLも同様に /collections/ハンドル で決まっています
  • サーバーサイドの処理: Liquidはあくまで表示用のテンプレート言語です。在庫の複雑な計算や外部APIとのリアルタイム連携といったバックエンドのロジックは書けません
  • データベースの拡張: 商品に標準で用意されていない情報を独自のテーブルとして持つことはできません。メタフィールドで補える範囲には限りがあります

URL構造の固定は、SEO上の要件がある場合に問題になりやすいポイントです。既存サイトのURL構造を引き継ぎたいケースでは、リダイレクトで対応するのが一般的ですが、完全に同じ構造を再現することはできません。


アプリで解決できること、できないこと

アプリで解決できること、できないこと

アプリが得意な領域

Shopifyのアプリストアには数千のアプリが並んでおり、標準機能にない機能を後から追加できます。定番的な用途をいくつか挙げます。

  • レビュー・口コミ表示: 商品ページに購入者のレビューを表示する
  • 配送日時指定: カート画面で配送希望日や時間帯を選べるようにする
  • 定期購入(サブスクリプション): 定期便の仕組みを追加する
  • ポイント・会員ランク: 購入金額に応じたポイント付与やランク制度を導入する
  • SEO関連: メタタグの一括編集、構造化データの自動出力など

こうした「多くのECサイトに共通する要件」に対しては、すでに実績のあるアプリが複数存在しています。Liquidの編集なしで導入できるケースも多いです。

アプリでも埋まらない要件

ただし、アプリには以下のような限界があります。

  • 複数アプリの連携: アプリAとアプリBのデータを連動させたい場合、アプリ同士が対応していない限り実現しにくい
  • 日本市場固有の要件: 掛け払い、請求書払い、領収書の自動発行など、日本の商習慣に合わせたアプリは選択肢がまだ限られている
  • 基幹システムとのリアルタイム連携: 自社の在庫管理や受注管理とリアルタイムに同期したい場合、アプリだけでは対応しきれないことがある
  • デザインの完全な統合: アプリが出力するUIはテーマのデザインと完全には馴染まないことがあり、見た目を合わせるにはLiquidやCSSの追加調整が必要になる

「アプリで足りるか、テーマ改修が必要か」の線引き

制作会社に相談する前に、次の表で要件を整理しておくと判断しやすくなります。

アプリ導入 vs テーマ改修の判断基準

アプリで対応しやすい

  • 多くのECに共通する汎用機能
  • 見た目の差異をある程度許容できる
  • アプリの管理画面で設定変更が完結
  • 月額コストを受け入れられる

テーマ改修が必要

  • 自社独自の業務フローに関わる
  • ブランドの世界観に完全に合わせたい
  • 外部システムとの双方向連携がある
  • ロジックや項目の変更が頻繁に発生

どちらに該当するかで、依頼内容も見積もりの規模も変わります。要件をまとめる段階で「これはアプリで済むのか、開発が必要なのか」を分けておくと、制作会社側も正確な見積もりを出しやすくなります。


アプリ導入後に効いてくる4つの論点

アプリ導入後に効いてくる4つの論点

アプリは「入れて終わり」ではありません。導入後に見えてくる問題がいくつかあり、制作会社がこのあたりを丁寧に説明しないことも少なくないため、発注側で把握しておきたいところです。

月額コストの積み上がり

アプリの多くは月額課金制です。1つあたりの金額は小さく見えても、5つ、10個と増えていくと月額の合計は無視できない額になります。無料枠のあるアプリもありますが、商品数や注文数が増えると有料プランへの移行を求められるケースがあります。最新の料金は各アプリのページで必ず確認してください。

導入前に「どのアプリにいくらかかるか」を一覧にして、年間の合計を出しておくことをおすすめします。

表示速度への影響

アプリを追加すると、ページの読み込みが遅くなることがあります。とくにお客様の目に見える画面にJavaScriptを追加するタイプのアプリ——レビュー表示、ポップアップ、チャットウィジェットなど——は影響が出やすい部類です。

1つ1つの影響は小さくても、積み重なると体感できるレベルの遅延になります。表示速度はコンバージョン率に直結するため、アプリの数は「本当に必要なもの」に絞るのが原則です。

解約時に残るもの・消えるもの

見落としがちなのが、アプリを解約したときに何が起こるかです。たとえばレビューアプリを解約すれば、蓄積した口コミデータがすべて失われる可能性があります。定期購入アプリを切り替える場合は、既存の契約者のデータ移行が大きな課題になります。

「このアプリをやめたとき、何が残って何が消えるのか」は導入前に確認しておくべき項目です。聞けば教えてもらえますが、聞かなければ説明されないことが多いポイントでもあります。

管理画面を触る人の負担

アプリごとに管理画面が異なるため、運用担当者は複数の管理画面を行き来することになります。設定方法も画面デザインもアプリによってバラバラで、英語のみの管理画面も珍しくありません。

社内でShopifyの管理画面を触る人が決まっている場合、その人の負担がどれくらい増えるかも判断材料に入れてください。運用体制の考え方についてはホームページの社内担当者の決め方|体制づくりで進行が変わる【2026年】も参考になります。


アプリを選ぶときに見るべき5つのポイント

アプリを選ぶときに見るべき5つのポイント

制作会社がアプリの選定をしてくれる場合でも、発注側で最低限チェックしておきたい項目があります。

チェック項目 確認の観点
最終更新日 半年以上更新されていないアプリは、Shopifyのアップデートに追従できていない可能性がある
日本語対応の範囲 管理画面だけ日本語でフロントは英語、あるいはその逆というケースがある。お客様が見る画面と、運用担当者が触る画面の両方で確認する
サポート体制 問い合わせが英語のみのアプリもある。トラブル時に日本語で相談できるかは運用の安心感に直結する
テーマとの相性 カスタマイズ済みのテーマではアプリの表示が崩れる場合がある。導入前にテスト環境で確認する
低評価レビューの中身 星の数より、低評価に書かれた具体的な不満が参考になる。「サポートが遅い」「特定環境で動かない」など

「制作会社が推奨するアプリだから大丈夫」と思いがちですが、運用するのは自社のスタッフです。管理画面の使いやすさやサポートの言語は、使い始めてからの満足度に大きく影響します。


要件を出す段階で制作会社に確認すべきこと

要件を出す段階で制作会社に確認すべきこと

ここまでの内容をふまえ、制作会社への依頼時に確認しておきたい項目をまとめます。

  • チェックアウトまわりの要件は実現可能か——通常プランで対応できるのか、Plusが必要になるのか
  • URL構造の制約は問題ないか——SEOの観点でURL構造に要件がある場合、Shopifyの固定構造で支障がないか
  • 必要なアプリの一覧と月額の目安——見積もりに含まれるアプリの名前・役割・月額感を一覧で出してもらう
  • アプリなしで実現する機能はどこまでか——テーマのカスタマイズだけで対応する部分を明確にする
  • 将来の拡張で制約にぶつかりそうな箇所——今は不要でも、今後の事業展開でShopifyの制限に引っかかりそうな点がないか

こうした確認項目を手元に持っておくと、打ち合わせで的確な質問ができます。制作会社への依頼前の準備についてはWeb制作を依頼する前の準備|発注者が決めなくていいこと【2026年】でも具体的に解説しています。

ShopifyをECだけでなくコーポレートサイトとしても使う場合は、考慮すべき点がさらに増えます。ECとコーポレートサイトを1つのShopifyで運用する選択肢と、そのメリット・デメリットについては以下の記事で整理しています。


よくある質問

よくある質問

Shopifyでできないことは事前にわかりますか?

この記事で挙げたチェックアウト、URL構造、データベースの制約は公開情報として把握できます。ただし、自社固有の要件が制限に該当するかどうかは、制作会社に具体的な要件を伝えて確認する必要があります。依頼時には「できないことを先に明示してほしい」と伝えておくのが確実です。

アプリを入れればほとんどの機能は追加できますか?

レビュー、定期購入、配送日時指定など一般的なEC機能はアプリで対応できることが多いです。ただし、自社独自の業務フローや基幹システムとの連携はアプリだけでは対応できないケースがあります。アプリの数が増えると月額コストと表示速度に影響するため、「入れれば解決」とは限りません。

Shopify Plusにすればすべて自由にカスタマイズできますか?

Plusではチェックアウト画面のカスタマイズが可能になるなど、通常プランにはない自由度があります。ただし、URL構造やデータベースの制約はPlusでも変わりません。月額コストが大きく上がるプランなので、チェックアウトのカスタマイズが本当に必要かどうかを慎重に判断してください。

WordPressから移行した場合、できなくなることはありますか?

WordPressはサーバーに直接アクセスできるため、PHPでの自由なカスタマイズやプラグインの制限なしの追加が可能でした。Shopifyに移行すると、URL構造の自由度、データベースの直接操作、サーバー設定の変更などが制限されます。移行前に現サイトの機能をすべて洗い出し、Shopify側で代替手段があるかを確認することが重要です。

制作会社に「Shopifyでは難しい」と言われたらどうすればいいですか?

まず「難しい」の中身を具体的に確認してください。「Shopifyの仕様上不可能」なのか「やれるが開発コストが高い」のか「アプリで代替できるが制約がある」のかで対応が変わります。不可能であれば要件の優先度を見直すか、別のプラットフォームも含めた再検討になります。1社の判断だけで決めず、別の制作会社にも相談してみることで、本当にできないのか確認できる場合もあります。


まとめ

Shopifyは強力なECプラットフォームですが、「何でもできる」わけではありません。チェックアウト画面の制限、URL構造の固定、アプリに依存する機能追加のコストとリスク——。こうした境界線を依頼前に把握しておけば、「あとから聞いていない」という事態は防げます。

要件を出す段階で大切なのは、自社がやりたいことを「Shopifyの制約に照らしてどこまで実現可能か」で仕分けること。制作会社に丸投げするのではなく、この記事の確認項目を手元に持って打ち合わせに臨んでみてください。

制作会社の側も、発注者がShopifyの制限を理解したうえで相談してくれると、最初から現実的な提案ができます。結果として、お互いに無駄のない進め方になるはずです。