この記事の対象: Webサイトの保守契約を検討している、または月額費用の内訳に疑問を感じている事業者
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Webサイトを公開したあと、制作会社から「月額の保守費用」を提案された経験はないでしょうか。月に数千円から数万円。何に使われているのか分からないまま払い続けている、あるいは「本当に必要なのか」と判断できないまま契約しているケースは少なくありません。
保守費用は「作って終わり」にしないための必要経費ですが、中身を理解していないと、過剰な契約をしてしまったり、逆に必要な作業を外してコストを削ったつもりがトラブルで余計に出費が膨らんだりします。
この記事では、月額保守費用を構成する項目を一つずつ分解し、金額に幅が生まれる構造と、自社にどの範囲が必要かを判断するための考え方を解説します。
月額保守費用の中身——5つの項目に分解する

「保守」とひとくくりにされがちですが、中身は大きく5つの項目に分けられます。制作会社によって含まれる範囲が異なるため、見積もりを比較するときは「何が含まれていて、何が別料金か」を確認するところが出発点です。
月額保守費用
- サーバー・ドメイン・SSL管理
- CMS・プラグイン更新
- バックアップ
- 障害・トラブル対応
- コンテンツ更新代行
会社によって含まれる範囲が異なる。どこまでが月額に入るかを必ず確認する。
この5項目のうち、上の3つ(インフラ管理・CMS更新・バックアップ)はどの保守契約にもほぼ含まれます。差が出るのは下の2つ、障害対応の範囲と更新代行の有無です。
サーバー・ドメイン・SSL証明書の管理
Webサイトを表示し続けるためのインフラ部分です。サーバーのレンタル費用、ドメインの年間更新費、SSL証明書(https化に必要な暗号通信の仕組み)の維持がここに当たります。
レンタルサーバーの実費は月額1,000〜3,000円程度が一般的ですが、保守契約に含まれている場合は制作会社側の管理工数が乗り、月額3,000〜5,000円程度になることがあります。これは管理の手間を代行してもらうための費用なので、不当に高いわけではありません。ただし、自社でサーバー契約を持っている場合はこの分が不要になるため、見積もりから外せるか確認しましょう。
ドメイン(.jpなら年間3,000〜5,000円程度、.comなら年間1,500〜2,000円程度)やSSL証明書(無料のものから年間数万円の有料証明書まで)も、誰の名義で契約しているかによって保守費用の内訳が変わります。
CMSとプラグインの更新
WordPress(ウェブサイトを管理画面から編集できる仕組み)をはじめとするCMSは、定期的にセキュリティや機能の更新が提供されます。CMS本体の更新だけでなく、追加で入れている拡張機能(プラグイン)やデザインテンプレート(テーマ)の更新も必要です。
「更新ボタンを押すだけでは?」と思うかもしれませんが、実際にはそう単純ではありません。更新によってサイトの表示が崩れたり、プラグイン同士の互換性が壊れたりするケースがあるためです。制作会社が保守として行うのは、更新前にバックアップを取り、テスト環境で動作を確認してから本番に適用するという一連の手順です。
この作業は月に1〜2回程度発生し、保守費用のなかでは最も中心的な「技術作業」に当たります。
バックアップの取得と保管
サイトのデータ(構成ファイルとデータベース)を定期的にコピーし、一定期間保管する作業です。サーバー会社が自動バックアップを提供していることもありますが、保守契約では制作会社側でも独自にバックアップを取り、二重の安全策を確保するのが一般的です。
確認しておきたいのはバックアップの「頻度」と「保管世代数(何回分を残すか)」です。日次で7世代保管する会社もあれば、月次で3世代というケースもあります。ブログやECサイトのように更新頻度が高いサイトほど、短い間隔でのバックアップが重要になります。
障害・トラブル対応
サイトが表示されなくなった、改ざんされた、フォームが動かなくなった——こうしたトラブルが発生したときに調査・復旧する作業です。保守契約がない状態でトラブルが起きると、対応をスポットで依頼することになりますが、「今すぐ直してほしい」タイミングで制作会社に空きがあるとは限りません。
保守契約の価値は、平常時よりもむしろこの障害発生時に出ます。契約があれば対応の優先度が上がり、復旧までの時間は短くなる傾向があります。月額費用には「何かあったときにすぐ動いてもらえる優先枠」としての性格があるわけです。
ただし「24時間対応」と「営業時間内対応」では必要な体制がまったく違うため、月額にも当然差が出ます。自社のサイトにどこまでの即時性が求められるかは、サイト停止が事業に与える影響度から考えてください。
コンテンツの更新代行
テキストの差し替え、画像の入れ替え、新着情報の追加、ページの追加や削除など、サイトの中身を更新する作業です。保守費用のなかに「月○回まで」「月○時間まで」と含まれている場合と、完全に別料金の場合があります。
この項目こそが、保守費用の金額差が最も大きく出る部分です。「月5,000円の保守」と「月30,000円の保守」の違いは、多くの場合、更新代行の有無と対応量で決まっています。
社内にCMSを操作できる担当者がいれば更新代行は不要かもしれませんが、「担当者はいるが、実際にはほとんど更新できていない」というケースは珍しくありません。更新が止まる原因は、担当者のスキルではなく仕組みの問題であることが多いです。
保守を切ると何が起きるか

「コストを抑えたい」という判断で保守契約を解約するケースがあります。不要な保守に費用を払い続ける必要はありませんが、何が起きるかを知った上で判断してください。
保守契約あり
- CMSが定期的に更新される
- 障害時は優先的に対応される
- バックアップから復旧できる
保守契約なし
- CMSの更新が放置されやすい
- 障害時のスポット依頼は割高
- 復旧データがない場合がある
保守契約は「何も起きない平常時」にはコストにしか見えません。しかし問題が起きたとき、契約の有無でかかる費用と復旧までの時間が大きく変わります。
セキュリティリスクの放置
CMSやプラグインの更新を止めると、既知の脆弱性(外部から攻撃可能な弱点)が放置された状態になります。WordPressは世界で最も利用されているCMSであるぶん、攻撃の標的にもなりやすい仕組みです。更新を数か月放置した結果、マルウェア(不正プログラム)を埋め込まれたり、迷惑メールの送信元にされたりするケースは実際にあります。
改ざんされてから慌てて対応を依頼すると、復旧作業だけで数万〜十数万円のスポット費用がかかることもあります。月額数千円の保守を節約した結果、復旧にその何倍もかかるのは本末転倒です。
障害時に頼る先がない
保守契約がない場合、トラブルが起きたときはスポットで制作会社に依頼するか、別の会社を一から探すことになります。元の制作会社に連絡がつく場合でも、契約外なので対応の順番は後回しです。別の会社に依頼する場合は、サイトの構成を把握するところから始まるため、復旧に時間がかかります。
引き継ぎ先をスムーズに見つけるには、サーバー情報やCMSのアカウント情報を自社で管理しておくことが前提になります。制作会社を切り替える際に必要な準備については、以下の記事で詳しく整理しています。
自社対応の隠れた工数
「更新は自分たちでやるから保守は不要」という判断は一見合理的ですが、実際に自社で対応する工数を見積もっているでしょうか。CMSのアップデート確認、プラグインの互換性チェック、バックアップの取得と管理、SSL証明書の期限管理——これらを漏れなく続けるには、一定の技術知識と、定期的に時間を割く仕組みが必要です。
「そのうちやろう」のまま半年、1年と放置されるのが最も危ないパターンです。保守を外すなら、社内で誰が・いつ・何をやるかを具体的に決めてから解約してください。
月額保守費用の相場と、金額差が生まれる構造

保守費用の一般的な相場を整理すると、以下のような幅があります。
| 月額の目安 | 含まれる作業の傾向 |
|---|---|
| 3,000〜5,000円 | サーバー・ドメイン管理、SSL更新、最低限のCMS更新 |
| 5,000〜15,000円 | 上記に加え、定期バックアップ、プラグイン更新、軽微な修正(月1〜2回) |
| 15,000〜30,000円 | 上記に加え、月数回の更新代行、営業時間内の障害対応、アクセスレポート |
| 30,000〜50,000円 | 上記に加え、ページ追加を含む更新代行、コンテンツ改善の提案 |
| 50,000円以上 | 大規模サイトの運用、ECの運用支援、24時間監視体制など |
この表を見てほしいのは「金額の目安」そのものよりも、金額帯ごとに含まれる作業の範囲がまったく違うという点です。同じ「月額10,000円」でも会社によって中身は異なるため、金額だけの比較では判断できません。
金額差が生まれる3つの要因
要因1:更新代行をどこまで含むか
最も大きな差はここから生まれます。「テキスト修正を月3か所まで」と「ページ追加を含めて月5時間まで」では作業量が大きく異なります。安い保守プランは更新代行を含まないか、ごく限定的に設定されていることがほとんどです。
保守の見積もりで月額に大きな差がある場合、まず「更新代行がどこまで入っているか」を比較してください。この1点を揃えるだけで、金額差の理由がかなり見えてきます。
要因2:対応速度の基準
翌営業日までに対応する体制と、夜間・休日を含めて数時間以内に対応する体制では、人員の配置がまったく異なります。ECサイトのように夜間の障害が直接売上に響く場合は、対応速度に費用をかける合理性があります。一方、コーポレートサイトで数時間の停止が致命的でなければ、翌営業日対応で十分です。
要因3:管理名義と責任の範囲
サーバーやドメインの契約が制作会社名義か、自社名義かも費用構造に影響します。制作会社名義でまとめて管理してもらう形は手間がかからない反面、その会社への依存度が上がります。自社名義で契約し、技術作業だけを委託する形なら、将来の会社変更もスムーズです。どちらが正解というものではなく、自社の管理体制に合わせて選んでください。
保守を含めたWebサイト全体の費用感を整理したい場合は、費用シミュレーターで概算を出してみるのも手です。
制作費と保守費の関係や、見積書の各項目の読み解き方は以下の記事で掘り下げています。
自社に必要な保守範囲を見極める3つの判断軸

サイトの種類と事業への影響度
企業情報の発信が主な目的のコーポレートサイトと、売上に直結するECサイトでは、求められる保守のレベルが異なります。ECサイトは決済処理や個人情報を扱うため、セキュリティ対策と障害対応の優先度が高く、それに応じて保守費用も上がります。
コーポレートサイトでも、採用活動の中心がWebサイトだったり、問い合わせフォームが営業の主要な入口だったりする場合は、サイト停止の影響を軽く見ないでください。「止まっても問題ない」と本当に言い切れるサイトは、実はそれほど多くありません。
社内のWeb対応力
CMSの操作やサーバーの基本的な管理を担える人が社内にいるかどうかで、外部に委託すべき範囲は変わります。担当者がいる場合は更新代行を外し、技術的な保守(CMS更新・バックアップ・障害対応)だけを委託すれば費用を抑えられます。
ただし「操作できる人がいる」と「定期的に管理する体制がある」は別物です。担当者が異動や退職で不在になったときに保守が止まるリスクも考えておく必要があります。
納品後に「どこまでが無料の修正範囲で、どこからが保守の対象か」が曖昧になりやすいポイントについては、ホームページ納品後の修正依頼|どこまで無償かの判断基準【2026年】で整理しています。
サイトの規模と更新頻度
ページ数が10ページ以下で、内容の更新もほぼないサイトであれば、最低限の保守(サーバー管理・CMS更新・バックアップ)で足ります。月額5,000〜10,000円程度に収まることが多いでしょう。
一方、月に数回以上のコンテンツ更新が必要なサイトや、問い合わせフォーム・外部サービスとの連携が複数ある中〜大規模サイトでは、更新代行や障害対応の範囲を広げた保守が必要です。
現実的なアプローチは、「まず最低限の保守で始めて、必要に応じて範囲を広げる」ことです。最初から手厚い契約を結ぶ必要はありませんが、何も契約しない状態は避けてください。
保守は「作っておしまい」にしないための仕組みです。公開後の運用をどう組み立てるかについては、以下の記事で全体像を整理しています。
よくある質問

保守費用を払わずに自社だけで管理できますか?
技術的には可能です。ただし、CMSのアップデート、プラグインの互換性確認、バックアップの取得と管理、SSL証明書の更新を定期的に・漏れなく行う体制が社内に必要です。担当者が1人だけの場合、異動や退職で保守が止まるリスクがあるため、少なくとも技術的な保守は外部に委託しておくのが安全です。
制作会社とは別の会社に保守だけ頼めますか?
可能です。制作と保守を別の会社に依頼しているケースは珍しくありません。ただし、サイトの構成やカスタマイズ内容を保守会社が把握する必要があるため、引き継ぎに一定の時間と費用がかかります。制作時の仕様書、サーバー情報、アカウント情報が整理されているほど、スムーズに移行できます。
保守契約は途中で解約できますか?
多くの場合、1〜3か月前に通知すれば解約できます。ただし「最低契約期間(半年〜1年など)」が設けられていることがあるため、契約前に確認してください。年間契約で一括払いの場合は途中解約時の返金条件も確認が必要です。解約時には、サーバーやドメインの管理権限が自社に戻るか、バックアップデータを受け取れるかも合わせて確認しましょう。
保守の範囲外で追加費用がかかるのはどんな作業ですか?
「月○回まで」の上限を超える更新作業、デザインの大幅な変更、フォーム追加やEC機能の拡張といった新機能の開発は、通常は保守の範囲外で別途見積もりになります。「保守契約があるから何でも対応してもらえる」と思い込んでいるとトラブルになりやすいため、契約時に対応範囲の線引きを書面で確認しておくことが大切です。
サイトを作った会社が保守を提案してこないのですが?
保守サービスを提供していない制作会社もあります。フリーランスや小規模な会社では、制作後の継続的な保守まで体制が整っていないケースがあるためです。その場合は、保守を専門に扱う会社に別途相談するか、社内で最低限の管理体制を整える必要があります。どちらの場合も、サーバーやドメインの契約情報を自社で把握しておくことが前提です。
まとめ
保守費用の中身は「サーバー・ドメイン管理」「CMS更新」「バックアップ」「障害対応」「更新代行」の5つに分解できます。月額の金額差は主に更新代行の有無と対応速度から生まれるため、金額だけを並べて比較しても意味がありません。
自社に必要な範囲を見極めるには、サイトが事業に与える影響度、社内のWeb対応力、サイトの規模と更新頻度——この3点を軸に考えてください。必要以上に手厚い契約は不要ですが、何も契約しない状態はトラブル時の費用と手間で結局高くつきます。
保守の見積もりを取るときは、この記事で挙げた5つの項目について「含まれるか・別料金か」を一つずつ確認してみてください。その答えが揃えば、金額の妥当性は自ずと判断できます。




