この記事の対象: ホームページの新規制作やリニューアルでCMS選びに迷っている企業のWeb担当者・経営者
読了時間: 約12分
CMSを選ぼうとして、機能一覧表やプラン比較を眺めた経験はないでしょうか。「ブログ機能あり」「問い合わせフォームあり」「スマホ対応」──どのCMSも○が並んでいて、結局どれがいいのか分からない。そんな状態に陥る方は少なくありません。
CMSの基本機能は年々横並びになっており、機能の有無だけでは選べなくなっています。選定で本当に差がつくのは、公開後にそのサイトを「誰が」「どう」使い続けるかという運用の設計です。
この記事では、WordPress・STUDIO・Wixを中心に、機能比較表には載らない3つの判断軸──誰が更新するか、ページが増え続けるか、独自機能が要るか──と、選定段階で見落とされがちなロックイン(乗り換えにくさ)の問題を整理します。
機能比較表だけでCMSを選ぶと失敗する理由

CMS選びで起きがちな失敗は、「比較表で○が多いものを選んだのに、うまくいかない」というパターンです。
WordPressは拡張性が高い。STUDIOはデザインの自由度が魅力。WixはECや予約機能が標準搭載。こうした特徴はどの比較記事にも書いてありますが、この情報だけでは「自社に合うかどうか」は判断できません。
機能比較で見落とされるのは、運用に入ってから表面化する問題です。
- テキストを1行直すだけで制作会社への依頼が必要になり、月額費用が想定を超えた
- ノーコードで簡単に作れたが、ページが50を超えたあたりから管理が回らなくなった
- CMSを変えたくなったが、データの移行手段がなく、実質ゼロからの作り直しになった
こうした問題は「機能があるかないか」ではなく、運用体制とCMSの設計思想が合っているかどうかで決まります。
CMS選びの出発点は、機能表ではなく「うちの会社では、このサイトを誰がどう使い続けるのか」という問いです。制作の依頼前にどこまで決めておくべきか、逆に何は制作会社に任せてよいのか。その線引きを整理するには、こちらの記事が参考になります。
「誰が更新するか」がCMS選びの最初の分岐点

CMS選定で最初に確認すべきは、サイト公開後に更新作業を担う人が誰かです。この条件が定まらないまま選ぶと、運用開始後に「思っていたのと違う」が起きます。
更新担当者のスキルレベルによって、現実的な選択肢は自然と絞られます。
HTML/CSSを触れる担当者がいる場合
社内にWeb制作の経験者がいるか、継続的に依頼できる外部パートナーがいるなら、WordPressが選択肢の中心になります。
WordPressはテーマやプラグインのカスタマイズにHTML・CSS、場合によってはPHPの知識が必要な場面があります。その反面、「やりたいことができない」という天井にぶつかりにくい。日常の記事投稿やテキスト修正はノーコードツールと変わらない操作感で行えるため、「高度なカスタマイズは技術者が担当し、日々の更新は非エンジニアが行う」という分業が成り立ちます。
更新を制作会社に都度依頼する場合
自社では更新しない方針であれば、CMS自体の操作性はそこまで問題になりません。この場合に重要なのは、制作会社を選びやすいかどうかです。
WordPressは市場シェアが大きく、対応できる制作会社の数が圧倒的に多い。今の制作会社との関係が終わっても、次の依頼先を探しやすい利点があります。STUDIOやWixで構築されたサイトの保守・運用を引き受ける制作会社は、WordPressほど多くありません。将来的に制作会社の乗り換えが起きる可能性を考えると、この差は見逃せません。
非エンジニアだけで完結させたい場合
「制作会社に頼らず、社内のメンバーで作って更新していきたい」というニーズなら、STUDIOやWixが有力な候補です。
STUDIOはデザインの自由度が高く、見た目にこだわったサイトをコードなしで構築できます。日本発のサービスで、日本語フォントの扱いやUIが日本のユーザーに合っているのも特徴です。
Wixはテンプレートの種類が豊富で、予約システムやEC機能が標準で用意されています。「すぐに公開したい」「多機能なサイトを低コストで立ち上げたい」場面で力を発揮します。
ただし、ノーコードツールには別の落とし穴があります。「操作を覚えた担当者が退職したら、誰も触れなくなった」というケースです。コードを書かないぶん学習コストは低いものの、属人化が違う形で起きることは想定しておくべきです。サイトの更新が止まる原因と対策は、この記事で詳しく整理しています。
ページの増え方でCMSの向き不向きが変わる

次に確認すべきは、サイトのページ数が今後どう変化するかです。
会社案内、サービス紹介、問い合わせフォームなど、ページ数が10〜20程度で安定するサイトであれば、WordPress・STUDIO・Wixのいずれも問題なく運用できます。操作のしやすさや費用感で選んで構いません。
差が出るのは、ブログ・お知らせ・導入事例・商品紹介などでページが増え続けるサイトです。
WordPressはブログシステムとして設計された経緯があり、カテゴリやタグで記事を分類する仕組み、一覧ページの自動生成、検索機能など、大量コンテンツを構造的に管理する機能が充実しています。100ページを超えても管理画面が破綻しにくい設計です。
STUDIOやWixにもブログ機能はありますが、記事の本数が増えるにつれて「管理画面で目的の記事を探しにくい」「一覧の見通しが悪い」と感じる場面が出てくることがあります。
| サイトの性質 | WordPress | STUDIO | Wix |
|---|---|---|---|
| 固定10〜20ページのコーポレートサイト | ○ | ○ | ○ |
| ブログ・コラム記事を50本以上書く | ◎ | △ | △ |
| 商品・事例が100件以上に増える見込み | ◎ | 対応が難しい | △ |
| ページ数が未定(増えるかもしれない) | ◎ | △ | △ |
「今は5ページだが、将来コラムや事例を増やすかもしれない」──この「かもしれない」が現実になる可能性が少しでもあるなら、最初からWordPressを選んでおくほうが安全です。
独自機能が必要になったときの拡張性

3つ目の判断軸は、標準機能にないことをやりたくなったとき、どこまで対応できるかです。
WordPressにはプラグインという拡張の仕組みがあり、予約管理、会員制サイト、多言語対応、EC機能など、大半の要件はプラグインの追加で実現できます。プラグインで対応しきれない要件も、テーマやプラグインのコードを直接編集することで独自の機能を組み込めます。ただし、この領域は制作会社のエンジニアの力が必要です。
STUDIOは「デザインの自由度は高いが、機能の拡張性は限定的」という性格のCMSです。外部サービスとの連携はiframe埋め込みやAPI連携が中心で、STUDIO単体で複雑な機能を実装する設計にはなっていません。
Wixは「Velo by Wix」というJavaScriptベースの開発環境を持っており、カスタム機能の開発が可能です。ただしWix固有の環境であるため、一般的なWeb開発の経験がそのまま活きるとは限りません。
WordPress
- プラグインで大半の要件に対応可能
- コード編集で完全なカスタマイズ可
- 対応エンジニアの数が多い
STUDIO・Wix
- 標準機能の範囲は手軽に使える
- 範囲外の要件は外部サービス連携が前提
- 独自開発には固有の制約がある
「今は標準機能で十分だが、いずれ予約機能や会員制ページを追加するかもしれない」──そうした拡張の余地を残しておくなら、この違いは選定時に押さえておくべきポイントです。
「乗り換えられるか」を選定時に考える

CMS選びで多くの人が見落とすのが、ロックイン(乗り換えのしづらさ)の問題です。「今はこれでいいけれど、合わなくなったら変えればいい」と考えがちですが、CMSの乗り換えは想像以上にコストがかかります。
セルフホスティング型CMS(WordPressなど):データを自分で持てる
WordPressはオープンソースソフトウェアで、テキスト・画像・データベースのすべてが自分の管理下にあります。サーバーの移行も、別のCMSへのデータ移行も、技術的な制約はありません。制作会社を変更する場合も、引き継ぎ先は見つけやすい環境です。
SaaS型CMS(STUDIO・Wixなど):移行は実質「作り直し」に近い
SaaS型CMSで構築したサイトは、そのサービスのサーバー上で動作します。デザインやコンテンツをそのまま別の環境に移行する手段は限られています。
STUDIOの場合、テキストと画像を手動でコピーし、別のCMSで最初から作り直す必要があります。移行工数は新規制作に近いと考えておくべきです。Wixにはブログ記事のテキストデータをエクスポートする機能がありますが、ページのデザインや構成ごとの移行はできません。
ロックインが問題になる場面
以下のようなケースが将来起きうるなら、CMS選定の段階でロックインのリスクを織り込んでおく必要があります。
- サイトの規模が拡大し、今のCMSの機能や性能では対応しきれなくなった
- 月額費用やプラン料金が事業規模に見合わなくなった
- CMSのサービス自体が終了した、または料金体系や利用規約が大幅に変更された
SaaS型CMSは、サービス提供元の方針変更がサイト運営に直接影響します。料金改定、機能の廃止、規約変更──こうしたリスクは、自社サーバーにインストールして使うセルフホスティング型CMSにはない性質のものです。
別のCMSへの移行を検討する場面として、EC機能が主目的であればWordPressからShopifyへの移行も選択肢に入ります。その際に何が引き継げて何が失われるかは、この記事で詳しくまとめています。
WordPress・STUDIO・Wixの向き不向き一覧

ここまでの3つの判断軸とロックインの観点をまとめます。
| 判断軸 | WordPress | STUDIO | Wix |
|---|---|---|---|
| 運用に必要なスキル | 投稿は簡単。カスタマイズはHTML/CSS/PHP | ノーコードで操作可能 | ノーコードで操作可能 |
| 大量ページの管理 | ◎ 数千ページ規模の運用実績あり | △ ページ増加で管理が煩雑に | △ ブログ機能はあるが大量管理は不向き |
| デザインの自由度 | テーマ次第で制限なし | ◎ ピクセル単位の自由配置 | テンプレートベースで一定の制約あり |
| 機能の拡張性 | ◎ プラグイン+コード開発 | △ 外部連携が中心 | ○ Velo開発環境あり(独自仕様) |
| 移行のしやすさ | ◎ データを完全に持ち出せる | × 新規制作に近い工数が発生 | △ テキストのみエクスポート可 |
| 制作会社の選びやすさ | ◎ 対応可能な会社が圧倒的に多い | △ 対応会社は増加中だが限定的 | △ 対応会社は限定的 |
この表の◎や○だけを見ると「WordPressが全勝」に見えますが、そうとは限りません。「コードを書ける人がいない」「10ページ程度で固定」「初期コストを抑えたい」──こうした条件が揃っていれば、STUDIOやWixのほうが合理的な選択です。重要なのは自社の状況に合っているかどうかです。
CMS選びと費用──差が生まれる構造的な理由

CMS選びは費用にも直結します。ここで押さえておきたいのは、なぜ同じようなサイトでも見積もり金額に大きな幅が出るのかという構造の話です。
初期制作費の目安
5〜10ページ程度のコーポレートサイトを制作会社に依頼する場合、費用に差が出る主な要因は「デザインの作り方」「コーディングの有無」「要件定義の深さ」の3つです。
| 構成・条件 | 費用の目安 |
|---|---|
| テンプレートベースの5ページ構成(ノーコードCMS利用) | 15〜50万円程度 |
| テンプレートベースの5ページ構成(コーディング込み) | 30〜80万円程度 |
| オリジナルデザインの10ページ構成 | 50〜200万円程度 |
| 独自機能を含むCMS構築 | 100〜400万円程度 |
※ 上記はあくまで目安です。実際の費用は制作会社の規模・所在地・対応範囲によって変動します。
同じ「5ページのコーポレートサイト」でも費用に数倍の差が出るのは、以下の3つの工程のどこに力をかけるかが異なるためです。
デザインの工程。テンプレートをベースにカスタマイズするか、ゼロからオリジナルで作るかで、デザイナーの工数が大きく変わります。「自社のブランドに合わせた独自のデザイン」という要件が加わると、デザイン費だけで数十万円の差になります。
コーディング・実装の工程。コード型CMSでは既存テーマのカスタマイズで済むか、テーマを一から開発するかで、エンジニアの工数が倍以上変わることがあります。ノーコードCMSではこの工程が不要な反面、デザインの自由度やカスタマイズの幅に制約が出ます。
要件定義・ディレクションの工程。サイトの目的整理、ページ構成設計、コンテンツの方向性決めなど、「作る前に考える工程」にどれだけ時間をかけるかが費用に反映されます。安い見積もりでは、この工程が薄い──あるいは省略されていることがあります。
費用の見通しをもう少し具体的に確認しておきたい方は、Soreiine!!の費用シミュレーターでサイトの条件を入力してみてください。制作会社に見積もりを依頼する前の目安になります。
月額・ランニングコストの違い
CMSの設計思想によって、公開後のランニングコストの構造が異なります。
セルフホスティング型(WordPressなど)は、レンタルサーバー代に加え、制作会社に保守を依頼する場合は月額の保守費用がかかります。自社で管理するならサーバー代のみで済むため、ランニングコストを抑えやすい構造です。
SaaS型(STUDIO・Wixなど)は、月額固定のプラン料金制です。無料プランが用意されているサービスもありますが、独自ドメインで運用する場合は有料プランが必要になるのが一般的です。料金プランは変更されることがあるため、最新の金額は各サービスの公式サイトで確認してください。
セルフホスティング型は初期費用が高くなりやすい反面、月額コストを抑えやすい。SaaS型は初期費用を抑えやすい反面、プラン料金が毎月かかり続ける。3年間のトータルコストで比較すると、見かけほどの差がないケースもあります。
よくある質問

WordPressは古い技術ですか?今から選んでも問題ありませんか?
WordPressは2003年に登場したソフトウェアですが、2026年現在も活発に開発が続いています。歴史が長いぶん「古い」という印象を持たれることがありますが、プラグインやテーマのエコシステムの厚みは他のCMSにない強みです。Web全体で非常に高いシェアを維持しており、技術的に時代遅れということはありません。
STUDIOやWixでECサイトは作れますか?
STUDIOはEC機能を標準搭載しておらず、本格的なECサイトには向いていません。Wixにはオンラインストア機能がありますが、商品数が多い場合や決済・在庫管理の要件が複雑な場合は、ShopifyやBASEなどEC専用のプラットフォームを検討するほうが現実的です。
CMSを発注者側から指定しても大丈夫ですか?
発注者がCMSを指定すること自体は問題ありません。ただし、制作会社がそのCMSでの実績を十分に持っているかは確認してください。逆に、制作会社からCMSの提案があった場合は「なぜそのCMSを勧めるのか」の理由を聞いておくと判断材料になります。自社の事情を説明しないまま制作会社任せにすると、制作会社が扱い慣れたCMSを選ばれるだけになるリスクがあります。
ノーコードCMSなら制作会社に頼まず自分で作れますか?
5ページ程度のシンプルなサイトであれば、STUDIOやWixを使って自社で構築できます。ただし、「デザインの品質」「情報設計(どのページに何を載せるか)」「SEO対策」の3点は、ツールが使えるだけでは解決しません。制作会社に依頼する費用の多くは、この「考える工程」に対する対価です。
途中でCMSを変更することはできますか?
技術的には可能ですが、実質的にはサイトの作り直しです。特にSaaS型CMSから別のCMSに移行する場合は、デザインもページ構成もゼロから再構築する必要があります。セルフホスティング型CMSからの移行はデータの持ち出しが比較的容易ですが、デザインの再構築は避けられません。CMSの変更は「引っ越し」ではなく「建て替え」に近い作業だと理解しておいてください。
まとめ
CMS選びの判断軸は、機能の多さではなく自社の運用体制との相性です。
- 社内に技術者がいる、または制作会社との継続関係がある → WordPress
- 非エンジニアだけでデザインにこだわったサイトを作りたい → STUDIO
- 低コストで多機能なサイトを素早く立ち上げたい → Wix
- 将来の拡張や乗り換えの余地を残しておきたい → WordPress
迷ったときは、「3年後にこのCMSで困らないか」を想像してみてください。ページが増える見込みはあるか。独自機能が必要になりそうか。制作会社を変える可能性はあるか。すべてを正確に予測する必要はありませんが、選択肢を狭めすぎない選び方はできます。
サイトの目的やKPIがまだ定まっていない段階なら、CMSの話に入る前にゴール設定を固めるほうが、結果的に最短ルートです。


