この記事の対象: Webサイトのドメイン管理に関わる担当者・制作者
読了時間: 約12分
Webサイトを制作会社に依頼するとき、ドメインの取得も一緒にお願いしていないでしょうか。制作中は何の問題も起きません。問題が起きるのは、制作会社を変えたいときと、ドメインの更新を忘れたときです。
「ドメインを移管してほしい」と頼んだら高額な手数料を請求された。更新期限を誰も把握しておらず、サイトが突然表示されなくなった。こうしたトラブルは、ドメインの名義と管理の仕組みを最初に決めておけば防げます。
この記事では、ドメインを誰の名義で取得し、どう管理すべきかを整理します。取得先(レジストラ)の選び方ではなく「誰が持つか」に焦点を当てます。
ドメインの名義が問題になるのは「会社を変えるとき」

ドメインの名義とは、ドメイン登録事業者(レジストラ)に登録された契約者情報のことです。お名前.comやムームードメインなどのサービスにログインできるアカウントの持ち主、と考えるとわかりやすいでしょう。
サイト制作を依頼するとき、「ドメインも取っておいてください」と制作会社に頼むケースは多くあります。制作会社としても、DNS設定やサーバーとの紐付けを自分で管理できるほうがスムーズなため、断る理由がありません。
ただし、制作会社名義で取得されたドメインは、契約上は制作会社のものです。
制作会社を変えたいときに起きること
制作会社との関係が良好なあいだは、名義が誰であろうと実害はありません。問題が表面化するのは、別の制作会社に乗り換えたいとき、あるいは自社で内製に切り替えたいときです。
ドメインの移管(名義変更+レジストラの変更)を依頼すると、次のようなことが起き得ます。
- 移管手数料を請求される。ドメインの移管自体にかかる実費は数千円程度だが、「管理手数料」「設定解除料」などの名目で数万円を請求されることがある
- 連絡が取れない・対応が遅い。制作会社が廃業している、担当者が退職しているなどの理由で手続きが進まない
- 移管を拒否される。未払いの制作費がある場合に「ドメインを人質」にされるパターン。法的にはドメインの所有権と制作費の債権は別問題だが、実務上はこじれる
いずれも、自社名義でドメインを持っていれば起きないトラブルです。
「管理は任せるが名義は自社」が原則
結論は明確です。ドメインの名義(契約者)は自社にする。これが原則です。
制作会社にDNS設定の代行を依頼する場合でも、レジストラのアカウント自体は自社で作成し、ログイン情報を自社で保持してください。制作会社には必要な設定変更の都度依頼するか、技術担当者用のサブアカウント(レジストラが対応している場合)を発行する形にします。
自社名義(推奨)
- 移管手続き不要で会社を変更できる
- 更新通知が自社に届く
- ログイン情報を自社で管理
- DNS変更を自分の判断でできる
制作会社名義
- 会社変更時に移管手続きが必要
- 更新通知が制作会社に届く
- ログインできるのは制作会社だけ
- DNS変更はすべて制作会社経由
自社名義であれば、制作会社を変更してもドメインに関する手続きは発生しません。制作会社名義の場合は、移管が必要になるたびにコストと時間がかかり、相手の協力も必要になります。
すでに制作会社名義になっている場合の対処

「うちのドメイン、誰の名義だろう?」と思ったら、まずWhois情報を確認してください。「Whois検索」で検索すると無料で調べられるサービスが出てきます。検索結果に表示される登録者(Registrant)が自社名でなければ、自社名義ではない可能性があります。
ただし、個人情報保護のためWhois代理公開を利用していることも多く、その場合はレジストラ名が表示されます。正確に確認するには、レジストラの管理画面にログインする必要があります。ログイン情報がわからないなら、それ自体が「名義が自社にない」ことを示しています。
移管の手順
制作会社名義のドメインを自社名義に変更する方法は、大きく2つのパターンがあります。
パターン1:同じレジストラ内で名義変更する
制作会社がお名前.comで取得したドメインを、同じお名前.com内で自社アカウントに移す方法です。レジストラによって手続きの名称は異なりますが、「登録者変更」や「契約者変更」と呼ばれます。
パターン2:別のレジストラに移管する
制作会社が使っているレジストラから、自社が契約する別のレジストラに移す方法です。これが一般的な「ドメイン移管(トランスファー)」です。移管先のレジストラで1年分の登録料を支払い、認証コード(AuthCode)を使って手続きします。
いずれの場合も、制作会社側の協力が必要です。認証コードの発行やドメインロックの解除は、現在のアカウント管理者しかできません。関係がこじれる前に動くことが重要です。
移管手続きには通常5〜7日かかります。この期間中にDNS設定を変更しなければ、サイトの表示に影響が出ることは基本的にありません。
更新忘れでドメインが失効するとどうなるか

ドメインのもう一つの大きなリスクが、更新忘れによる失効です。
ドメインは年単位の契約で、更新しなければ失効します。自動更新を設定していても、クレジットカードの有効期限切れや登録メールアドレスの変更忘れで更新が止まることがあります。
失効後に起きること
ドメインが失効すると、段階的に次のことが起きます。
| 期間 | 状態 | 影響 |
|---|---|---|
| 失効直後〜約30日 | 猶予期間 | サイト・メールが停止する。通常の更新料で復旧可能 |
| 約30〜60日 | 復旧猶予期間 | 復旧には高額な手数料(数万円〜)が必要 |
| 約60日以降 | 削除・再登録可能 | 第三者が取得できる状態になる |
※ 期間はレジストラやドメインの種類(.com、.jp など)によって異なります。
サイトが表示されなくなるだけではありません。そのドメインで運用していたメールアドレスも使えなくなります。取引先への連絡、各種サービスへの登録、名刺に印刷したアドレス——すべてに影響が及びます。
最悪のケースは、失効したドメインを第三者に取得され、まったく関係のないサイトやフィッシングサイトに使われることです。元のドメインを取り戻す手段は基本的にありません。
「制作会社が管理していたから失効した」が起きる理由
制作会社名義のドメインでとくに起きやすいのが、制作会社の担当者が退職し、更新通知に誰も気づかないまま失効するケースです。
制作会社にとっては多数のクライアントのうちの一つでも、発注者にとっては唯一の会社ドメインです。この温度差が事故を生みます。
自社名義にしていれば更新通知は自社の担当者に届きます。レジストラの管理画面で「自動更新ON」と「通知メールの送信先を複数人に設定」の2点を押さえておけば、失効リスクは大幅に下がります。
ドメインの管理体制を決める

ドメインの名義を自社にしたうえで、日々の管理をどう分担するかを決めてください。
自社で管理する場合
DNS設定の変更やSSL証明書の確認など、技術的な操作が発生します。社内にWebやITに詳しい担当者がいれば、自社管理で問題ありません。最低限やるべきことは次の3つです。
- 自動更新を有効にする。クレジットカードの有効期限も定期的に確認する
- 管理者情報を最新に保つ。担当者が異動・退職したら、レジストラの連絡先を必ず更新する
- ログイン情報を複数人で共有する。パスワード管理ツールを使い、特定の個人だけが知っている状態を避ける
制作会社に管理を代行してもらう場合
「名義は自社、日常の管理は制作会社」という分担も現実的です。ただし次の3点を契約時に明確にしてください。
- 管理代行の費用。月額・年額を確認する。ドメインの管理だけなら月額数千円以内が相場だが、条件によって異なるため見積もりを取ること
- レジストラのログイン情報の共有。制作会社だけがログインできる状態にしない。自社もアクセスできる状態を維持する
- 解約時の手続き。管理代行を解約したときにドメインの設定や情報がどう引き継がれるかを事前に取り決める
管理を任せること自体は問題ありません。大事なのは、自社でも管理画面にアクセスできる状態を保つことです。制作会社に任せっきりになると、結局は「名義だけ自社で実質は制作会社管理」と同じ状態になります。
ドメイン取得先の選び方

ドメインを自社名義で取得すると決めたら、どのレジストラを使うかを選びます。国内で利用者が多いサービスとしては、お名前.com、ムームードメイン、Xserverドメイン、スタードメインなどがあります。
Soreiine!! を運営している制作会社では、バリュードメインで管理しています(バリュードメイン
)。取得と更新の画面がシンプルで、扱うドメインが増えても一覧で把握しやすいことが理由です。サーバーは主にエックスサーバー、案件によってさくらのレンタルサーバを使っていますが、ドメインはあえてサーバーと別のところにまとめています。サーバーを移すときにドメインまで動かさずに済むからです。
ここは好みが分かれるところで、サーバーとドメインを同じ事業者にまとめる考え方もあります。大事なのはどこで取るかより、誰の名義で持つかです。
選ぶときの判断軸は3つあります。
使っているサーバーとの相性
レンタルサーバーと同じ会社のドメインサービスを使うと、DNS設定やSSL証明書の発行が簡単になります。たとえばサーバーとドメインを同じ会社で揃えると、ネームサーバーの設定がほぼ自動で完了するケースがあります。
ただし、サーバーを将来変更する可能性があるなら、ドメインとサーバーをまとめることがロックインにつながる点は意識してください。移管自体はどのレジストラからでも可能ですが、手間はかかります。
管理画面のわかりやすさ
ドメインの管理は頻繁に行う作業ではありません。だからこそ、久しぶりにログインしたときの操作のわかりやすさは重要です。自動更新の設定やWhois情報の変更が直感的にできるか、実際に管理画面を確認してください。
更新料の確認
ドメインの取得料が安くても、翌年以降の更新料が高いケースがあります。取得時のキャンペーン価格ではなく、2年目以降の更新料を基準に比較してください。料金は改定されることがあるため、契約前に各サービスの公式サイトで最新の料金を確認してください。
契約時に確認しておくチェックリスト

制作会社にサイト制作を依頼するとき、ドメインについて最低限確認すべき項目です。
| 確認項目 | 確認すること |
|---|---|
| ドメインの名義 | 契約者名が自社になっているか |
| レジストラのアカウント | 自社でログインできるか。ID・パスワードを把握しているか |
| 自動更新の設定 | 有効になっているか。決済手段は有効か |
| 通知メールの送信先 | 自社の担当者(できれば複数人)に届くか |
| 管理代行の範囲 | 制作会社に何を任せ、何を自社で行うか |
| 解約・移管時の取り決め | 制作会社を変更する際の手順と費用 |
このチェックリストは、制作を依頼する前の打ち合わせで制作会社に確認してください。「ドメインはこちらで取得・管理しますので、ネームサーバー情報をお伝えします」と最初に伝えるだけで、あとからのトラブルはほぼ防げます。
よくある質問

ドメインの名義が制作会社になっているかどうかの確認方法は?
レジストラ(お名前.comなど)の管理画面にログインし、契約者情報を確認してください。ログイン情報がわからない場合は、制作会社に「ドメインの登録情報を確認したい」と問い合わせてください。ログイン情報を共有してもらえない場合は、自社名義ではない可能性が高いです。
制作会社が廃業していてドメインの移管ができないときはどうする?
レジストラに直接連絡し、事情を説明してください。法人の廃業であれば、登記簿謄本などの書類を提出することで名義変更に応じてもらえる場合があります。手続きには時間がかかるため、制作会社の廃業を知った時点ですぐに動いてください。
ドメインとサーバーは同じ会社にまとめたほうがいい?
設定の手軽さではメリットがあります。ただし、サーバーを変更したいときにドメインの移管も必要になり、乗り換えのハードルが上がります。管理の手間を優先するか、将来の柔軟性を優先するかで判断してください。
.comと.co.jpはどちらを選ぶべき?
日本国内の企業サイトであれば、.co.jpが信頼性の面で有利です。.co.jpは日本で登記された法人しか取得できないため、それ自体が企業としての信頼を示します。取得・更新費用は.comより高めですが、コーポレートサイトなら検討する価値があります。グローバル展開を考えている場合やコストを抑えたい場合は.comも十分な選択肢です。
ドメインの更新を忘れないためにはどうすればいい?
レジストラの自動更新機能を有効にし、決済用クレジットカードの有効期限を定期的に確認してください。更新通知メールの送信先は、担当者個人のアドレスではなく部署やチームの共有アドレスに設定しておくと、異動や退職による見落としを防げます。
まとめ
ドメインの名義と管理は、サイト制作のなかでは地味なテーマです。制作中に問題になることはほとんどなく、つい「制作会社にお任せ」で済ませてしまいがちです。
しかし問題が起きるのは、制作会社を変えたいとき、更新を忘れたとき。つまり、後から取り返しがつきにくいタイミングです。
やるべきことはシンプルです。
- ドメインの名義(契約者)は自社にする
- レジストラのログイン情報を自社で保持する
- 自動更新を有効にし、通知先を複数人に設定する
この3つを最初に押さえておけば、ドメインに関するトラブルのほとんどは防げます。制作会社に見積もりを依頼するとき、「ドメインは自社で取得・管理します」と一言伝えるところから始めてください。




