この記事の対象: ECサイトの新規構築・プラットフォーム選定を検討している事業者の担当者
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Shopify・BASE・STORESの比較記事は検索すればいくらでも出てきます。機能の○×表、料金プラン一覧、テンプレート数の比較――。ひと通り読んでも「結局うちはどれにすべきか」が決まらなかった、という方は多いはずです。
決まらない理由は単純で、3サービスの基本機能が似通っているからです。いずれも「テンプレートでネットショップを作れて、クレジットカード決済に対応していて、在庫管理ができる」。○×表を作っても差がつきません。
差が出るのは、事業規模が変わったとき、運用体制が変わったとき、そして別のサービスに移りたくなったときです。この記事では機能の羅列をやめて、「どの段階で・どんな体制なら・どれを選ぶべきか」という判断軸だけに絞って整理します。
費用構造の違いを先に押さえる

「無料で始められる」の中身が違う
3サービスとも月額0円のプランを用意していますが、費用のかかり方は根本的に異なります。
大きく分けると2つのモデルがあります。
- 月額費用を0円にして、売れたときの手数料で回収する(BASEフリープラン、STORESフリープラン)
- 月額費用を取る代わりに、手数料率を低く抑える(Shopify各プラン、BASE・STORESの有料プラン)
「無料で始められる」という言葉の裏には、売上に対してかかる手数料率の差が隠れています。
| 項目 | BASE フリープラン | STORES フリープラン | Shopify ベーシック |
|---|---|---|---|
| 月額費用 | 0円 | 0円 | 月額数千円〜 |
| 決済手数料の傾向 | 高め(6%台後半〜) | 中程度(5%前後) | 低め(3%台〜) |
| 売上が少ないとき | 固定費がなく有利 | 固定費がなく有利 | 月額費用が負担に感じやすい |
| 売上が伸びたとき | 手数料負担が重くなる | 手数料負担がやや重くなる | 手数料率が低く有利になる |
※ 各サービスの料金体系は改定される場合があります。正確な金額は公式サイトで確認してください。
月商が増えると費用差が広がる
たとえば手数料率が6%台のプランで月商50万円なら、決済手数料だけで約3万円。月商が200万円に伸びれば約13万円です。一方、手数料率が3%台のプランでは月商200万円でも手数料は約7万円。月額費用を足しても、トータルコストは手数料率が低いプランのほうが安くなります。
一般的に、月商が15〜30万円を安定して超える段階では、フリープランに留まる合理性は薄れてきます。「無料だから」という理由だけでフリープランを使い続けている場合は、一度トータルコストを計算してみてください。各サービスの公式サイトで公開されている料金表をもとに、月商 × 手数料率 + 月額費用を並べるだけで損益の分岐点が見えてきます。
見積もりの読み方や費用の構造をもう少し掘り下げたい場合は、こちらの記事が参考になります。
月商・体制・目的で選び分ける

費用構造を理解したうえで、自社の状況に合わせた選び方を3パターンに分けて整理します。
この4ステップを順に整理するだけで、候補は自然と絞られます。
月商30万円以下・EC専任者がいない場合
小規模で始める段階なら、BASEかSTORESのフリープランが現実的な選択肢です。月額費用がかからないため、「まず売れるかどうか試したい」という検証フェーズに向いています。管理画面の操作もシンプルで、ECの運営が本業でない担当者でもひと通り扱えます。
BASEとSTORESの選び分けは、ショップのデザインにどの程度こだわるかが一つの基準です。STORESは無料プランでもデザインの調整幅が比較的広く、BASEは拡張機能(アプリ)の種類が豊富な傾向にあります。
この段階で注意したいのは「ずっとフリープランでいける」と決めつけないこと。月商が伸びてきたら、有料プランへの切り替えやプラットフォーム自体の乗り換えを検討するタイミングが必ず来ます。そのときに備えて、独自ドメインは最初から取得しておくことをおすすめします。
月商30〜100万円・EC担当が1〜2名いる場合
売上がある程度安定してきた段階です。フリープランの手数料負担が目に見えて大きくなり、有料プランやプラットフォームの見直しを検討し始める時期にあたります。
ここでの選択肢は、STORESの有料プランかShopifyのベーシックプランです。判断の分かれ目は「社内にHTMLやCSSを多少触れる人がいるかどうか」。
Shopifyはテーマのカスタマイズやアプリの組み合わせで自由度が高い反面、設定項目が多く、運用に一定のリテラシーが求められます。「テーマを選んで商品を登録すれば完成」とはいきません。テーマの選定ひとつとっても、無料テーマ・有料テーマ・オリジナル開発で費用感も運用負荷も大きく変わります。Shopifyの導入を検討している場合は、テーマ選びの判断基準を先に整理しておくと迷いが減ります。
STORESの有料プランは操作のシンプルさを維持しつつ手数料率を下げられるため、「ECに詳しい人はいないが売上は順調」という状態に合っています。自分たちで管理画面を触る前提なら、操作性の差は想像以上に効いてきます。
月商100万円超・組織的にECを運営する場合
月商が100万円を安定的に超えている、あるいはその水準を目指してECを立ち上げるなら、Shopifyが最有力の候補になります。理由は主に3つです。
- 手数料率の優位性:月商が大きくなるほど、決済手数料率の低さが効いてくる
- 拡張性:アプリストアに数千のアプリがあり、在庫管理・マーケティング・顧客管理など業務に合わせて機能を追加できる
- 越境販売への対応:多言語・多通貨に標準対応しており、海外向け販売の立ち上げハードルが低い。BASEやSTORESは越境対応が限定的
EC事業を本格的に伸ばす方針が社内で固まっているなら、「安くスタートしてあとで乗り換える」よりも「最初からShopifyで構築する」ほうが、移行にかかる手間と費用を丸ごと省けます。
ただしShopifyは「導入すれば終わり」ではなく、運用フェーズでも継続的に手をかける必要があります。何を指標にして運用するかを事前に決めておかないと、アプリを入れただけで活用されない状態に陥りがちです。ECサイトに限った話ではありませんが、目標設定とKPIの考え方は構築と同時に整理しておいてください。
あとから効いてくる「乗り換えコスト」

プラットフォーム選びで見落とされがちなのが、乗り換えにかかるコストです。「合わなかったら変えればいい」と軽く考えていると、移行の現実に直面して後悔することになります。
商品データの移行
商品名、説明文、価格、画像、在庫数、バリエーション情報――。これらを旧サービスからエクスポートし、新サービスにインポートする作業が必要です。CSV形式で対応できる場合が多いものの、項目名やデータ形式がサービスごとに異なるため、手作業での調整は避けられません。商品数が数百点を超えると、この作業だけで数日〜1週間ほどかかることがあります。
URLが変わるSEOリスク
プラットフォームを変えると、商品ページのURL構造が変わります。検索エンジンから評価されていたページのURLが変わると、検索順位が一時的に下がるリスクがあります。リダイレクト設定(旧URLから新URLへの転送)で影響を緩和できますが、評価を完全に引き継げる保証はありません。検索経由の流入が売上の柱になっている場合、このリスクは軽視できません。
ShopifyはURL構造に独自の制約があり、自由にパスを設定できない部分があります。移行前にURLの設計方針を決めておかないと、あとからリダイレクトの対応が煩雑になります。ShopifyのURL仕様と回避策についてはShopifyのSEOとURL制約|構造の特徴と運用上の回避策で解説しています。
外部連携の再構築
決済サービス、配送連携、会計ソフト、メール配信ツールなど、外部サービスとの接続をすべて新しいプラットフォーム上で設定し直す必要があります。連携先のサービスが新プラットフォームに対応していなければ、ツール自体を別のものに切り替える判断も求められます。
こうした移行作業を制作会社に依頼する場合、そのぶんの費用も発生します。プラットフォームの引き継ぎで押さえるべき確認事項は、制作会社の変更と引き継ぎ|乗り換え前に確認すべきこと【2026年】で詳しく解説しています。
結局のところ、「とりあえず無料で始めて、あとで乗り換える」という方針は、移行コストを含めるとトータルでは割高になることがあります。1年後・2年後の事業規模を見据えて、最初の段階で適切なサービスを選ぶほうが合理的です。
選ぶ前に社内で確認する5つのポイント

プラットフォームを決める前に、以下の5つを整理しておくと社内の議論がスムーズに進みます。
| 確認項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 現在の月商と1年後の見込み | 月商30万円が費用構造の分岐点になる |
| EC専任の担当者がいるか | 専任者がいなければ操作性の優先度が上がる |
| 越境販売の予定があるか | 海外販売を視野に入れるならShopifyが実質唯一の選択肢 |
| 実店舗との在庫連携が必要か | POSレジとの一元管理への対応状況はサービスごとに異なる |
| デザインの自由度をどこまで求めるか | テンプレートの範囲で十分か、オリジナルデザインが必要か |
この5項目をまとめた資料があれば、上司や決裁者への説明にもそのまま使えます。「なぜこのプラットフォームにしたのか」の根拠を残しておくことで、あとから判断を振り返るときにも役立ちます。
よくある質問

BASEやSTORESからShopifyへの移行は難しいですか?
技術的には可能ですが、手間はかかります。商品データのエクスポート・インポート、URLのリダイレクト設定、決済や配送の再連携が主な作業です。商品数が多い場合や外部ツールとの連携が複雑な場合は、制作会社に依頼するほうが確実です。移行期間は規模によりますが、2週間〜1か月程度は見込んでおいてください。
3つのサービスを無料プランで試してから決めてもよいですか?
試すこと自体は問題ありません。ただし3つ同時に商品登録して運用を比べるのは負担が大きいため、1つか2つに絞って短期間で触るのがおすすめです。管理画面の操作感と商品登録の手間を体感できれば、選定の判断材料としては十分です。
Shopifyは英語のサービスという印象がありますが日本語で使えますか?
管理画面は日本語に対応しており、日本語でのサポートも提供されています。ただしアプリ(拡張機能)の中には英語表記のみのものがあり、設定時に英語の画面を読む場面がゼロにはなりません。日本語対応のアプリは年々増えていますが、英語に全く触れたくない場合はBASEやSTORESのほうがストレスは少ないです。
制作会社にEC構築を依頼する場合、どのプラットフォームにも対応してもらえますか?
対応範囲は制作会社によって異なります。Shopifyは制作会社に構築を依頼するケースが多く、対応できる会社も比較的見つけやすい状況です。BASEやSTORESは自分で構築する前提の設計になっているため、制作会社に「構築一式」を依頼するよりは、自社で構築してコンサルティングや運用サポートだけ受けるという形が一般的です。
同じサービス内でプランを途中変更できますか?
いずれのサービスも、同一サービス内でのプラン変更は比較的かんたんにできます。BASEならフリープランからグロースプランへ、STORESならフリーからスタンダードへ、Shopifyならベーシックからスタンダードへ切り替え可能です。「サービス内のプラン変更」と「サービス自体の乗り換え」は手間がまったく違うので、混同しないよう注意してください。
まとめ
Shopify・BASE・STORESの選び方は、機能の○×表では決まりません。判断の軸になるのは次の3つです。
- 月商規模:月商30万円が最初の分岐点。フリープランの手数料と有料プランの月額費用を比較して選ぶ
- 運用体制:EC専任者がいるかどうかでShopifyの拡張性を活かせるかが変わる
- 成長の方向性:越境販売や商品数の拡大を見込んでいるなら、最初からShopifyを選んだほうが乗り換えコストを避けられる
「無料だから」「有名だから」ではなく、自社の今の規模と1年後の姿を基準にしてください。選び直しにはデータ移行・URL変更・外部連携の再構築というコストがかかります。だからこそ、最初の選択に時間をかける価値があります。

