この記事の対象: 納品後のサイト改善まで担うWeb制作者・ディレクター
読了時間: 約12分
サイトを納品したあと、「数字はどうなっていますか」とクライアントに聞かれます。GA4は入れてある。でも管理画面を開いても、PVとセッション数が並んでいるだけで、「何をどう直せばいいか」までは教えてくれません。
GA4は優秀な道具ですが、万能ではありません。どこがクリックされたか、ページのどこまで読まれたか、フォームのどの項目で手が止まったか──こうした「ユーザーが画面の上で何をしたか」は、GA4の守備範囲の外にあります。
この記事では、GA4が得意なことと苦手なことを整理したうえで、補助ツールで何をどう埋めるかを解説します。案件の規模や予算ごとに「どれを入れるか」を言い切りますので、次の案件のツール選定にそのまま使ってください。
GA4が見せてくれるものと、見せてくれないもの

GA4が得意なのは「量」と「流れ」の把握です。
- どのページに何人来たか(PV・ユーザー数)
- どこから来たか(チャネル・参照元)
- サイト内をどう移動したか(経路分析)
- コンバージョンしたかどうか(イベント計測)
一方で、GA4だけでは分からないことがあります。
- ページ内のどの位置がクリックされたか
- スクロールがどこで止まったか(GA4の「スクロール」イベントは90%到達の1回きり)
- ユーザーが実際にどんな操作をしたか(迷い、戻り、誤クリック)
- フォームのどの項目で離脱したか
GA4は「サイト全体を俯瞰する地図」、補助ツールは「特定のページを虫眼鏡で見る道具」と考えると整理しやすくなります。どちらかで足りるのではなく、用途が違います。
補助ツールが埋める3つの死角

死角1:ページ内の行動(ヒートマップ・セッション録画)
ヒートマップは、ページ上のクリック位置やスクロール深度を色で可視化するものです。セッション録画は、実際のユーザー操作を動画として確認できます。
これが分かると、「ファーストビューのボタンが押されていない」「料金表の手前で8割が離脱している」といった具体的な課題が見えてきます。GA4だけでは「このページの直帰率が高い」としか分からなかったものが、「なぜ高いのか」の仮説を立てられるようになります。
死角2:フォームの離脱ポイント
問い合わせフォームのコンバージョン率が低いとき、GA4では「フォームページに来たが送信しなかった」までしか追えません。入力項目のどこで手が止まったのか、どの項目でエラーが出て離脱したのかは、フォーム分析に対応したツールでないと見えません。
死角3:クライアントに伝わるレポート
GA4の管理画面をそのままクライアントに見せても、たいてい伝わりません。専門用語が多く、数字の意味が読み取りにくいためです。Looker Studio(旧Google Data Studio)のようなレポートツールを使い、必要な指標だけを抜き出して整形する工程が必要になります。
「数字を取る」ことと「数字を伝える」ことは別の仕事であり、別の道具が要ります。
GA4の守備範囲
- アクセス数・流入元
- ユーザーの遷移経路
- コンバージョン計測
補助ツールの守備範囲
- クリック位置・スクロール深度
- セッション録画
- レポート整形・共有
GA4がカバーするのは「どのくらい・どこから」、補助ツールがカバーするのは「画面の上で何をしたか」です。重なる部分はほとんどないため、組み合わせて初めて全体像が見えるようになります。
主要ツールの特徴と向き不向き

制作の現場でよく名前が挙がるツールを整理します。料金体系は頻繁に変わるため、導入前に必ず各ツールの公式サイトで最新の情報を確認してください。
| ツール | 主な機能 | 費用感 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| GA4 | アクセス解析全般 | 無料 | すべての案件(必須) |
| Google Search Console | 検索パフォーマンス | 無料 | SEOを重視する案件 |
| Microsoft Clarity | ヒートマップ・録画 | 無料 | 予算を問わず導入可 |
| Hotjar | ヒートマップ・録画・アンケート | 無料枠あり・有料は月額制 | UX改善に注力する案件 |
| Matomo | アクセス解析(GA4代替) | セルフホスト版は無料 | データ管理要件が厳しい案件 |
| Looker Studio | レポート作成・可視化 | 無料 | クライアントへの報告がある案件 |
Microsoft Clarity
Microsoftが提供するヒートマップ・セッション録画ツールです。最大の特徴は完全無料でデータ量の上限がないこと。トラフィックの多いサイトでも追加費用を気にせず使えます。
GA4との連携機能があり、GA4のダッシュボードからClarityのセッション録画に飛べます。導入のハードルが低いため、「とりあえずヒートマップを入れておきたい」という場面ではClarityを選んでおけば間違いありません。
一方、アンケートやフィードバック収集の機能は持っていません。ユーザーの行動は見えますが、「なぜそうしたか」を直接聞く手段は別に用意する必要があります。
Hotjar
ヒートマップとセッション録画に加えて、サイト上でアンケートやフィードバックを収集できます。Clarityにはないこの「ユーザーに聞く」機能が差別化ポイントです。
無料プランでは月間のセッション数に制限があります。本格的に使うなら有料プランが前提になるため、案件の予算に組み込めるかどうかが判断の分かれ目です。
Matomo
GA4の代替として機能するオープンソースのアクセス解析ツールです。自社サーバーにインストールするセルフホスト版であれば、計測データが外部に一切出ません。医療・金融・行政など、データの取り扱いに厳格なルールがある案件で選択肢に入ります。
ただし、セルフホスト版はサーバーの用意と保守が必要です。GA4のエコシステム(Search Console連携、Looker Studio連携、BigQueryエクスポートなど)から離れるコストも軽くないため、「GA4が使えない理由がある」ときの選択肢と考えてください。
Looker Studio
GA4やSearch Consoleのデータを接続し、カスタムレポートを無料で作成できるGoogleのツールです。テンプレートも公開されており、ゼロから作らなくても見栄えのするレポートが仕上がります。
クライアントにURLを共有すれば、リアルタイムで更新されるレポートを見てもらえます。月次報告のたびにPDFを手作業で書き出す作業がなくなるのは、地味ですが大きな効率化です。
案件の条件別:どの組み合わせを入れるか

「どのツールがいいですか」に対して、「案件による」で終わらせても意味がありません。条件を3つに分けて、それぞれ具体的な組み合わせを示します。
予算がほぼない・小規模サイト(10ページ以下)
GA4 + Search Console + Clarity + Looker Studio
すべて無料で揃う組み合わせです。「アクセス数の推移」「検索キーワード」「ページ内の行動」「クライアント向けレポート」の4点をこれだけでカバーできます。
小規模サイトに有料ツールを入れても、データ量が少なすぎて有意な分析はしにくいものです。まずはこの構成で始めてください。
中規模サイト(20〜50ページ)で改善予算がある
GA4 + Search Console + Hotjar(有料プラン)+ Looker Studio
ページ数が増えると、どのページから優先的に改善するかの判断が必要になります。Hotjarのアンケート機能で「何を探していましたか」「見つかりましたか」といったフィードバックを直接集めると、改善の優先順位がつけやすくなります。
ヒートマップ単体ならClarityで十分ですが、「行動の理由」まで踏み込みたいならHotjarに分があります。
データの保管場所に制約がある案件
Matomo(セルフホスト)+ Clarity or Hotjar
Cookie同意の扱いやデータの保管場所に制約がある案件では、GA4自体の利用が難しいことがあります。Matomoのセルフホスト版なら、データが自社サーバーから出ないため要件を満たしやすくなります。
ただし、MatomoはLooker Studioとの標準連携ができません。レポートはMatomo内蔵の機能を使うか、APIでデータを引き出す仕組みを別途作ることになります。この追加コストを見積もりに含めておいてください。
最初に確認すべきは「予算」と「データ要件」の2点です。この2つが決まれば、選ぶべき組み合わせはほぼ自動的に決まります。
クライアントに見せるレポートの組み立て方

解析ツールを入れたら、次に考えるのはクライアントへの報告です。ここを雑にすると「数字を見ても何をすればいいか分からない」と言われてしまいます。
見せるべき指標と、見せなくていい指標
クライアントが知りたいのは「サイトがうまくいっているかどうか」であって、数字の羅列ではありません。
レポートに入れる指標(例)
- セッション数の推移(前月比で増えたか減ったか)
- 主要ページの閲覧数(トップ・サービス・問い合わせ)
- コンバージョン数(問い合わせ・資料請求など)
- 検索キーワード上位(Search Consoleから)
入れなくていい指標(例)
- 直帰率の細かい変動(文脈なしだと不安を煽るだけ)
- 平均セッション時間(短い方が良いページもある)
- イベント数の生データ(数字だけでは意味が伝わらない)
サイトの目標が「月間の問い合わせ数を増やす」であれば、レポートの冒頭にコンバージョン数の推移を置き、その数字を改善するために何をしたか・次に何をするかを添えます。指標の羅列ではなく、「だから次はここを直しましょう」というアクションとセットにすることで、レポートが改善の起点になります。
目標の決め方から整理したい場合は、こちらの記事を参照してください。
Looker Studioでレポートを作る手順
- GA4とSearch Consoleをデータソースとして接続する
- テンプレートを選ぶ(Googleが公式に公開しているものが複数あります)
- クライアントに見せたい指標だけを残し、不要なグラフを削除する
- レポートのURLをクライアントに共有する
初回の設定に1〜2時間ほどかかりますが、一度作ればあとは自動更新されます。月次でPDFを手作業で書き出す工程がなくなるため、長期的には大幅な時短です。
納品後の改善サイクルの回し方については、以下でまとめています。
乗り換えのコストと、あとから効いてくる制約

ツールは一度入れると簡単には変えられません。導入前に知っておくべき制約を整理します。
データの移行はできない
GA4のデータをMatomoに移すことはできませんし、逆も同様です。ツールを切り替えると、過去データとの比較が断絶します。「去年の同じ月と比べてどうか」が言えなくなるのは、クライアント報告で痛手です。
乗り換えを検討するなら、新旧のツールを数か月並行稼働させてから切り替えることを勧めます。
GA4のデータ保持期間は初期設定のままにしない
GA4の探索レポートで使えるデータの保持期間は、デフォルトで2か月です。管理画面の「データ設定」→「データ保持」から最長14か月に変更できます。この設定を触っていないサイトは多いので、納品時に必ず14か月に変更しておいてください。
14か月を超えるデータが必要な場合は、BigQueryへのエクスポート設定が必要です。BigQueryはデータ量に応じた課金が発生するため、クライアントへの事前説明を忘れないでください。
計測タグはGTMで一元管理する
複数のツールを入れると、計測タグの管理が煩雑になります。Google Tag Manager(GTM)でタグを一元管理するのが定石です。
GTMなしで各ツールのタグを直接HTMLに埋め込んでいると、あとからの追加・削除・修正のたびにソースコードを触ることになります。小規模サイトでも、ツールを追加する可能性があるなら最初からGTMを入れておく方がトータルの手間は少なく済みます。
制作会社の変更が発生したとき、タグの管理権限が引き継がれないトラブルも起きやすい部分です。GTMのアカウント権限はクライアント自身に持たせておくと、このリスクを避けられます。こうした引き継ぎの注意点は制作会社の変更と引き継ぎ|乗り換え前に確認すべきこと【2026年】でも解説しています。
よくある質問

GA4だけで十分ではないですか?
アクセス数やコンバージョン数の把握だけならGA4で足ります。ただし「なぜその数字になっているのか」を調べるには、ヒートマップやセッション録画が必要です。数字を見て終わりではなく、改善のアクションにつなげたいなら、補助ツールなしでは情報が足りない場面が出てきます。
ClarityとHotjarはどちらを選べばいいですか?
予算ゼロならClarity一択です。無料でデータ量の制限がありません。ユーザーへのアンケートやフィードバック収集もしたいなら、Hotjarの有料プランが候補に入ります。ヒートマップとセッション録画だけならClarityで十分です。
解析ツールの導入費用はクライアントに請求してよいですか?
GA4・Search Console・Clarity・Looker Studioはすべて無料なので、ツール自体の費用は発生しません。ただし、導入の設定作業やレポート作成にかかる工数は見積もりに含めて請求するのが一般的です。「解析ツールの初期設定一式」として納品項目に入れておくと、あとから揉めにくくなります。
GA4のデータ保持期間はどう設定すればよいですか?
管理画面の「データ設定」→「データ保持」から14か月に変更してください。デフォルトの2か月のままでは年単位の比較ができません。納品時に必ず確認・変更しておくべき設定です。
解析ツールはサイト公開後に追加できますか?
技術的には可能ですが、計測データは設定した時点からしか取れません。「3か月前のデータが見たい」と言われても遡ることはできないため、サイト公開と同時に主要な計測を開始しておくことを強く勧めます。
まとめ
GA4はサイト解析の基盤ですが、「どこを直せばいいか」まで教えてくれるツールではありません。ページ内の行動を可視化するヒートマップ、ユーザーの声を集めるフィードバックツール、数字を伝えるレポートツール──役割が違う道具を、案件の条件に合わせて組み合わせることが大切です。
迷ったら、まずGA4 + Search Console + Clarity + Looker Studioの無料4点セットから始めてください。これだけで「数字を取る・行動を見る・レポートを作る」が揃います。有料ツールの検討は、この構成で物足りなくなってからで遅くありません。
大切なのは、ツールを入れることではなく、出てきた数字をもとに実際のサイトを改善することです。道具は揃えた、でも誰も見ていない──そうならないよう、納品時に「何を・いつ・誰が見るか」まで決めておきましょう。数字の見方や改善の視点に迷ったら、Webサイトの効果が出ない理由|見直すべき3つの視点【2026年】も参考にしてみてください。


