リニューアルガイド

Shopify分析レポートの見方|数字を見る優先順位と落ちた原因の特定手順

この記事の対象: ShopifyでのEC構築・リニューアルを検討している、または運用を始めたばかりの事業者
読了時間: 約15分

Shopifyの管理画面を開くと、「ストア分析」の中に十数種類の数字が並んでいます。セッション数、コンバージョン率、平均注文額、オンラインストアの転換率、トップ流入元、デバイス別、時間帯別。全部見ようとすると、毎朝の時間がそれだけで溶けていきます。そして厄介なことに、時間をかけても打ち手が出てこない日がほとんどです。

この記事で扱うのは「どの数字から見るか」ではなく、「どの順番で見れば、落ちた原因の場所が特定できるか」です。Shopify分析レポートの数字は、実は掛け算の構造になっています。その構造を知っていれば、見方と順番は自動的に決まります。

制作会社としてShopifyストアを作り、自社でもDawnテーマをベースにしたストアを運用している立場から言うと、管理画面の指標は「眺めるもの」ではなく「故障箇所を絞り込む診断ツール」です。車の警告灯と同じで、点いた順番に意味があります。


売上は3つの数字の掛け算でできている

見る順番が決まる理由

Shopifyの分析レポートにどれだけ指標が並んでいても、オンラインストアの売上は次の式から逃げられません。

売上 = 訪問数 × 転換率 × 客単価

この3つ以外の指標は、すべてこの3つのどれかを説明するための補助情報です。デバイス別のデータは「訪問数と転換率の内訳」であり、流入元別のデータは「訪問数の内訳」です。つまり、まず3つの本体を見て、どれが動いたかを特定してから、内訳に降りていく。逆順に降りると、数字の海で溺れます。

売上を分解する3層構造と、各層の担当

① 訪問数(セッション)

  • 流入元別
  • 広告の配信状況
  • 検索順位・SNS投稿

② 転換率(コンバージョン率)

  • カート追加率
  • 決済到達率
  • 決済完了率

③ 客単価(平均注文額)

  • 1点あたり単価
  • 1注文あたり点数
  • 送料無料のしきい値

内訳(子項目)を見るのは、親の数字が動いたと分かってから。

この図の読み方はひとつだけです。動いた層を特定するまで、子項目を開かない。開いた瞬間に迷子になります。

なぜ訪問数 → 転換率 → 客単価の順なのか

3つとも同じくらい大事に見えますが、順番には理由があります。

順番 指標 動きやすさ 原因の特定しやすさ 打ち手までの距離
1 訪問数 非常に動きやすい(日単位で変動) 外部要因が多く特定しやすい 近い(広告・発信の量)
2 転換率 中程度(週単位でじわじわ) サイト内部に原因があることが多い 中(改修が必要)
3 客単価 動きにくい(月単位) 商品構成そのものに依存 遠い(商品企画の領域)

訪問数を先に見るのは、いちばん大きく動くからです。売上が前週比で大きく落ちたとき、その原因が客単価にあることは稀です。客単価は商品構成が変わらなければそう動きません。一方で訪問数は、広告を止めた、SNSの投稿が伸びた翌週、検索アルゴリズムの更新があった、といった理由で簡単に動きます。

順番を守る実務上の意味はもうひとつあります。訪問数が落ちているのに転換率の改修を始めると、労力が丸ごと無駄になるということです。これは実際によくある話で、「最近売れないのでカートまわりを直したい」という相談を受けて数字を見ると、単に広告の配信が止まっていただけ、というケースが珍しくありません。

変化の幅ではなく「変化した層」を見る

もうひとつ、順番と同じくらい大事な前提があります。数字の絶対値ではなく、動いた層だけを見ることです。

売上のグラフを見て「先月より下がった」と分かっても、そこからは何も出てきません。下がったのが訪問数なのか、転換率なのか、客単価なのか。ここを分けた瞬間に、見に行くべき場所が3分の1に絞られます。さらに転換率なら3段階に、訪問数ならチャネル別に分かれるので、2段階降りるだけで候補は数個まで落ちます。

分析に時間がかかる人の共通点は、この分解をせずに全部の画面を順番に開いていくことです。開く画面を減らすための順番だと思ってください。


訪問数:まず「量が減ったのか、質が変わったのか」を分ける

見るべきは総数ではなく流入元の構成比

訪問数を見るとき、総セッション数だけを見ても意味がありません。見るのは流入元ごとの内訳と、その構成比の変化です。

Shopifyの分析レポートでは「セッション数(トラフィックソース別)」「セッション数(参照元別)」として出てきます。ここで確認するのは3点です。

  • どのチャネルが減ったか(Direct / Search / Social / Paid / Referral)
  • 減ったチャネルは、もともと転換率が高かったチャネルか
  • 総数は横ばいなのに構成比だけ変わっていないか

3つ目が見落とされがちです。総セッション数が先週と同じでも、転換率の高い検索流入が減り、転換率の低いSNS流入が同じだけ増えていたら、売上は落ちます。数字の総量だけを見ていると「アクセスは変わっていないのに売上だけ落ちた、原因不明」という結論になり、そこから長く迷子になります。

チャネルごとの転換率は、Shopifyの分析レポート内で流入元別に確認できます。まずは自分のストアで「どのチャネルが転換率が高いか」を一度だけ書き出しておくと、以後の切り分けが速くなります。多くの場合、指名検索やメール・LINEからの流入は転換率が高く、SNSの偶発的な流入や一般キーワードの検索流入は低く出ます。ただしこれは商材によって順位が変わるので、一般論ではなく自社の数字で確認してください。

落ちたときの切り分け手順

訪問数が落ちたときの切り分け順序
① 計測の故障を疑うタグの二重・欠落を先に除外する
② チャネル別に分解どの流入だけが落ちたかを特定
③ 外部要因を確認広告停止・順位変動・季節性
④ 内部要因を確認公開停止した商品・削除したページ

①を最初に置いているのには理由があります。アクセスが「落ちた」のではなく「計測されなくなった」ケースが、体感としてかなりの割合を占めるからです。テーマを更新した、アプリを入れ替えた、GTMのコンテナを差し替えた。そのどこかでタグが外れると、翌日からグラフが崖になります。

見分け方は単純で、注文数が同じ比率で落ちているかを確認します。セッションが半分になったのに注文数が変わっていなければ、それは客が減ったのではなく計測が壊れています。逆にセッションと注文が同じ比率で落ちていれば、本当に人が来ていません。

この確認は、Shopifyの分析レポートとGA4の両方を持っていると格段に速くなります。片方だけが崖になっていたら計測の問題、両方が同じ形で落ちていたら本当に流入が減っている、と一発で切り分けられます。

③の外部要因では、次の順に確認すると速いです。広告の配信状況 → 検索順位 → 前年同月。広告はアカウントを開けば即座にわかり、最も頻度が高い原因です。検索順位はSearch Consoleの「クエリ」を前週と比較します。前年同月の確認は、季節性のある商材で効きます。毎年同じ時期に落ちているなら、それは異常ではなく通常の波です。

④の内部要因は見落とされやすい割に、確認は一瞬で済みます。商品を非公開にした、コレクションの条件を変えた、URLを変えてリダイレクトを設定し忘れた。いずれも自社の作業履歴を辿れば出てきます。特にURL変更はリダイレクトを忘れると検索流入がまるごと消えるので、心当たりがあれば最初に確認してください。

Shopifyの数字とGA4の数字は一致しない

ここは最初につまずくところなので先に書いておきます。Shopifyの管理画面のセッション数と、GA4のセッション数は一致しません。一致しないのが正常です。

理由は計測の仕組みが別だからです。Shopifyはストア自身の側でセッションを数え、GA4はブラウザ上のJavaScriptで数えます。広告ブロッカーが効いている環境、JavaScriptの読み込みが終わる前に離脱した訪問、セッションの区切り方の定義の違い。これらが積み重なって、数字は普通にずれます。

大事なのは「どちらが正しいか」ではなく、どちらか一方を売上判断の基準に固定することです。日々の推移を追うならShopifyの数字、流入元の詳しい分析をするならGA4、と役割を分け、会議で使う数字はどちらかに統一しておく。ここを決めずに運用すると、報告のたびに「その数字はどこの数字か」の議論が始まります。

注意したいのは、ずれ幅そのものは監視する価値があるという点です。普段から一定の割合でずれているなら正常ですが、ある日を境にずれ幅が急に広がったら、それは片方の計測が壊れたサインです。月に一度、両方のセッション数を並べて記録しておくだけで、故障の発生日が特定できます。


転換率:ファネルのどこで落ちたかを見る

3つの通過点に分解する

転換率を一つの数字で見ても、打ち手は出ません。転換率は次の3つの通過率の掛け算です。

転換率 = カート追加率 × 決済到達率 × 決済完了率

Shopifyの分析レポートには「オンラインストアのコンバージョン率」という項目があり、ここを開くと「カートに追加」「チェックアウトに到達」「注文完了」の3段階が出てきます。ここが、ECの分析レポートでいちばん打ち手に近い場所です。

落ちている段階 疑うべき場所 打ち手の方向
カート追加率 商品ページ(写真・説明・価格・在庫表示) 商品ページの情報量と見せ方
決済到達率 カートページ(送料の表示・かごの導線) 送料をカートに来る前に伝える
決済完了率 決済画面(決済手段・入力項目・エラー) 決済手段の追加・入力の削減

この表で伝えたいのは、段階ごとに直す場所がまったく違うということです。「転換率が低い」という一言でまとめると、商品ページを直すべきときに決済まわりをいじる、といった的外れが起きます。

段階ごとの典型的な原因

カート追加率が低いときに多いのは、商品ページの情報不足です。サイズ感がわからない、素材がわからない、いつ届くかわからない。実物を触れない以上、ページに書いていない情報は存在しないのと同じです。ここは改修コストが比較的軽く、写真とテキストを足すだけで動くことがあります。

具体的に足す優先順位は、①実寸と着用・使用イメージ ②発送までの日数 ③返品・交換の条件の順です。この3つはどれも「買わない理由」を消す情報で、書き足すのに撮影が要らないものもあります。特に発送日数は、ヘッダーや商品ページの購入ボタン付近に常時出しておくだけで効きます。

決済到達率が低いとき、いちばん多い原因は送料です。カートに入れてから初めて送料を知り、その場で離脱する。これは「カートに入れる前に送料の条件が見えるか」で大きく変わります。送料無料のしきい値がある場合、それをヘッダーや商品ページに常時出しておくかどうかで数字が動きます。

次に多いのが、カートへの導線そのものです。カートに追加したあとに何も起きない、あるいはドロワーが開くだけで次に進むボタンが目立たない。「カートに入れた直後に、購入手続きへ進むボタンが見えているか」を実機で確認してください。PCでは見えていてもスマホでは折りたたまれている、というのはよくあります。

決済完了率が低いときは、決済手段の不足を最初に疑います。Shopifyは決済手段を管理画面から足せるので、ここは比較的すぐ手が打てる部分です。ただし手数料が変わるので、追加する前に条件を確認してください。

決済手段以外では、入力項目の多さとエラー時の挙動が効きます。任意項目まで必須にしていないか、住所の自動入力が効くか、エラーが出たときに何が悪いのかが画面上でわかるか。ここは自分でテスト注文を通すのがいちばん速い確認方法です。実際に決済まで通して、詰まった場所がそのまま改修候補になります。

アプリで足りる範囲と、テーマ改修が必要な範囲

転換率の改修を進めると、必ず「アプリを入れるか、テーマを直すか」の分岐に来ます。ここの線引きは、制作する側がいちばん相談される部分です。

アプリとテーマ改修の使い分け

テーマ改修が向く

  • 常時表示される要素(送料バー・バッジ)
  • 商品ページの構造そのもの
  • 表示速度に効く場所
  • 長く使い続ける前提の機能

アプリが向く

  • 期間限定の施策(セール・診断)
  • 外部サービスとの連携
  • 効果を試してから判断したい機能
  • 自社で継続的に運用したい管理画面つきの機能

判断の軸は「その機能を3年後も使っているか」です。3年使う前提のものはテーマに入れたほうが、月額の積み上がりも表示速度も有利になります。試したいだけのものはアプリで始めて、効果が確認できてから移す。この順番が無駄が少ないです。

自社でShopifyストアを運用していて実感するのは、アプリの月額は1本ずつでは小さくても、本数が積み上がると年間では相応の固定費になるということです。しかも解約したとき、テーマのコードにアプリが埋め込んだ残骸が残ることがあります。動かなくなった要素が商品ページに残り続けるのは、よくある事故です。

アプリを選ぶときに見る箇所は、機能一覧より先に次の4つを見ます。

  • 最終更新日:更新が1年以上止まっているものは、Shopify側の仕様変更に追従できていない可能性がある
  • 日本語対応の範囲:管理画面だけ日本語で、顧客に見える表示は英語のまま、というものがある
  • サポートの言語と時間帯:決済まわりで止まったとき、返信が翌日では困る
  • 自社テーマとの相性:Dawnベースの最近のテーマか、古い独自テーマか。後者は埋め込みが崩れやすい

なお、アプリの料金は変わります。無料で使えるものから月額課金のものまで幅がありますが、最新の料金は必ず各アプリのページで確認してください。記事に書かれた金額をそのまま信じて予算を組むと、後で合わなくなります。

Dawnベースのテーマをどう改修するかについては、アップデートに耐える方針を別記事にまとめています。


客単価:動かしにくいが、効いたら長く効く

2つの要素に分ける

平均注文額(AOV)も、掛け算に分解できます。

客単価 = 1点あたりの単価 × 1注文あたりの点数

どちらを動かすかで、やることがまったく違います。

1点あたりの単価を上げるのは、値上げか、高単価商品の販売比率を上げるかのどちらかです。これはサイトの改修ではほとんど動かせません。商品企画とプライシングの領域なので、分析レポートを見ながら決める話ではありません。

1注文あたりの点数を上げるのは、サイト側で手が打てる部分です。関連商品の見せ方、セット販売、送料無料のしきい値設定。特に送料無料のしきい値は、客単価に対して直接的に効きます。

分析レポートからこの2つを分けるには、注文数と販売点数の両方を同じ期間で取るだけで足ります。販売点数 ÷ 注文数が「1注文あたりの点数」、売上 ÷ 販売点数が「1点あたりの単価」です。客単価が動いたとき、この2つのどちらが動いたかを見れば、サイト側の話か商品企画の話かが即座に分かれます。

送料無料のしきい値をどこに置くか

しきい値の決め方には、分析レポートから答えを出せる部分があります。見るのは現在の平均注文額です。

しきい値を平均注文額より少し上(1点追加すれば届く距離)に置くと、「あと少しだから、もう一つ入れよう」が発生します。逆に平均注文額の2倍のような遠い位置に置くと、届かないことが最初からわかるので誰も追加しません。ただ送料が高く見えるだけになります。

「1点追加すれば届く距離」を決めるには、主力商品の価格帯を見ます。よく売れている商品の価格を平均注文額に足した額が、しきい値の候補です。ここが実務上の出発点になります。

ここで注意したいのは、しきい値を動かしたら、その前後で客単価と転換率の両方を見ることです。客単価が上がっても、しきい値が高すぎて転換率が落ちれば、売上は減ります。片方だけ見て「客単価が上がったので成功」と判断するのが、いちばん危ない。

判定は売上そのもので行ってください。変更前後で同じ日数を取り、訪問数が大きく変わっていない期間同士を比べます。訪問数が変わっている期間を比べると、しきい値の効果と流入の変化が混ざって読めなくなります。

分析レポートから客単価を追うときの注意

Shopifyの平均注文額は、返品・キャンセルの扱いや期間の取り方で変わります。月次で比較するなら、同じ条件で取り続けることが前提です。ある月は返品込み、別の月は返品除外、という取り方をすると、比較そのものが成立しません。

そして客単価は、月単位で見る指標です。日単位で見ると、たまたま高額注文が1件入っただけで跳ね上がります。訪問数は日次、転換率は週次、客単価は月次。この時間軸の違いを頭に入れておくと、無駄な一喜一憂が減ります。


売上が落ちたときの切り分けフロー

ここまでの内容を、実際に使う順番でまとめます。「先週より売上が落ちた」というときに、上から順に確認していってください。

手順 確認すること 該当したときの次の行動
1 セッションと注文が同じ比率で落ちているか ズレていれば計測の故障を疑う
2 訪問数は落ちたか 落ちていればチャネル別に分解
3 訪問数が横ばいなら、流入の構成比は変わったか 変わっていれば質の変化
4 転換率は落ちたか 落ちていれば3段階に分解
5 カート追加率が落ちた 商品ページを疑う
6 決済到達率が落ちた 送料の見せ方・カート導線を疑う
7 決済完了率が落ちた 決済手段・エラーを疑う
8 客単価は落ちたか 点数か単価か、どちらが落ちたかを分解

この順番で見ると、たいていの「売上が落ちた」は短時間で場所が特定できます。時間がかかるのは特定した後の改修であって、特定そのものに時間をかける必要はありません。

なお、このフローはどれか1つに当たったら止めるものではありません。訪問数と転換率が同時に落ちていることは普通にあります。上から順に全部通して、当たった項目を並べる。複数当たったときは、いちばん大きく落ちている層から手をつけてください。

見なくていい指標もある

正直に書くと、分析レポートに並んでいる指標のうち、日常的に見る必要がないものもあります。

  • デバイス別の内訳:スマホが大半、という結論が毎回出るだけ。改修方針を決めるときに1回見れば十分
  • 時間帯別:広告の配信時間を細かく制御しない限り、打ち手につながりにくい
  • 地域別:全国配送なら、施策に変換しづらい
  • リピート率(短期の変動):月次で見れば十分。日次で追う意味がない

これらは「不要な指標」ではなく「毎日見る指標ではない」ということです。四半期に1回、方針を決めるときにまとめて見る。日常のチェックからは外してよい部分です。

毎日見る必要があるのは、セッション数・注文数・転換率の3つだけです。この3つが平常どおりなら、その日は分析レポートを閉じて他の仕事をするのが正しい判断です。

「平常どおり」の判定基準は、事前に決めておくと迷いません。直近4週間の同じ曜日と比べるのがおすすめです。ECは曜日で動くので、前日比で見ると毎週決まった曜日に「落ちた」と騒ぐことになります。月曜は月曜と比べる。この一手間で、無駄な調査がかなり減ります。


コーポレートサイトと兼ねている場合の見方

コーポレートサイトと兼ねている場合の見方

Shopifyを商品販売だけでなく、会社のコーポレートサイトとしても使っているケースが増えています。この場合、分析レポートの読み方に一段階の補正が必要です。

会社概要や採用情報を見に来た訪問者は、当然ながら買いません。コーポレート側のアクセスが増えると、全体のセッション数は増え、転換率は下がります。これは何も悪化していないのに、数字だけ見ると「悪化した」ように見える典型例です。

対処は単純で、「オンラインストアのコンバージョン率」を見るときに、商品関連ページへの訪問に絞った数字を別に持っておくことです。GA4側でセグメントを作るか、少なくとも「コーポレート施策を打った月は転換率が下がる」という前提を共有しておく。これを知らないと、採用ページを充実させた翌月に「サイトが悪くなった」という誤った結論が出ます。

セグメントを作るなら、URLのパスで分けるのがいちばん簡単です。Shopifyは商品ページが /products/、コレクションが /collections/、固定ページが /pages/ と決まっているので、/products/ と /collections/ を含む訪問だけに絞れば、購買目的の訪問がだいたい取れます。会社概要や採用は /pages/ に入るので、ここで自然に分かれます。

Shopifyでコーポレートサイトとストアを1つにまとめる考え方については、構成の作り方から別記事で整理しています。

制作する側から見ると、兼用にするかどうかの判断は、運用体制で決まる部分が大きいです。更新する人が1人なら、管理画面が1つのほうが確実に回ります。逆に、EC担当と広報担当が別部署で分かれているなら、管理画面の権限設計まで含めて考える必要があります。


構築・リニューアルの発注時に決めておくこと

構築・リニューアルの発注時に決めておくこと

分析の話に見えて、実は制作を発注する段階で決めておくと後が楽になることがいくつかあります。ここを曖昧にしたまま公開すると、公開後に「数字が取れていない」ことに気づいて作り直しになります。

発注前に握っておく4項目

  • 計測の実装範囲:GA4を入れるのは誰か。GTMを使うか、テーマに直接書くか。Shopifyの標準計測だけで足りるか
  • イベント計測の粒度:カート追加、チェックアウト開始、購入完了。どこまでイベントとして取るか
  • 管理画面を触る人の想定:誰が何を更新するか。この想定でテーマの作り方が変わる
  • アプリの前提:公開時点でどのアプリを入れるか。そのアプリが計測に干渉しないか

4つ目が見落とされがちです。アプリによっては独自のタグを挿入し、計測が二重になることがあります。二重計上されたコンバージョンを見ながら広告を調整すると、実態より多い成果が出ているように見えて、判断を誤ります。

公開前に、テスト注文を1件通して、Shopify側とGA4側の両方で1件として記録されているかを確認する。これだけで防げます。

見積もりの段階で分かれる部分

制作の見積もりを比較するとき、計測まわりは会社によって扱いが分かれます。「GA4設置」の一行で済ませている見積もりと、イベント設計まで含めている見積もりでは、中身がまったく違います。

比較のときに聞くべきは、「購入完了イベントまで計測できる状態で納品されるか」の一点です。ここを詰めておかないと、公開後に「アクセス数しか取れていない」状態で運用が始まります。

あわせて確認したいのが、公開後に数字がおかしくなったときの窓口です。計測は公開時に正しくても、アプリの追加やテーマの更新で後から壊れます。壊れたときに見てもらえるのか、それは保守契約の範囲内か、都度の見積もりになるのか。ここは会社によって扱いが分かれるので、契約前に言葉にしておくと後で揉めません。

制作費そのものも、機能の範囲・ページ数・計測実装の粒度・移行するデータ量で大きく変わります。同じ「Shopify構築」という言葉でも、テーマをそのまま使う場合と、商品ページの構造から作る場合ではまったく別の作業量です。金額を比べる前に、含まれている作業の範囲を揃えてください。

そして運用が始まってからの維持費についても、アプリの月額は最初の見積もりに入っていないことが多い部分です。制作費とは別に、毎月の固定費として積み上がります。


よくある質問

Shopifyの分析レポートとGA4、どちらの数字を信じればいいですか

計測の仕組みが違うので、数字がずれるのは正常です。どちらが正しいかを議論するより、日々の売上推移はShopify、流入元の詳細分析はGA4、と役割を分けて、社内で報告に使う数字を一方に固定してください。重要なのは絶対値ではなく、同じ条件で取り続けた推移です。ただし、普段と比べてずれ幅が急に広がった場合は、片方の計測が壊れたサインなので確認してください。

転換率は何%あれば合格ですか

業種・商材・単価によって基準がまったく異なるため、他社の平均値と比べる意味はほとんどありません。見るべきは自社の過去との比較です。先月より下がっているなら、カート追加・チェックアウト到達・注文完了の3段階に分解して、どこで落ちたかを特定してください。他社比較より、この分解のほうが打ち手に近いです。

アクセスが急に半分になりました。何から確認すべきですか

まず注文数を見てください。セッションが半分なのに注文数が変わっていなければ、客が減ったのではなく計測が壊れています。直前にテーマを更新したか、アプリを入れ替えたか、タグの設定を触ったかを確認してください。注文数も同じ比率で落ちていれば、チャネル別に分解して、どの流入が消えたかを特定します。

分析レポートは毎日見るべきですか

毎日見るのはセッション数・注文数・転換率の3つだけで十分です。デバイス別や地域別、時間帯別は、方針を決めるときに四半期に1回まとめて見れば足ります。客単価は日次で見ると高額注文1件で跳ねるので、月次で追ってください。比較は前日比ではなく、直近4週間の同じ曜日と比べると無駄な調査が減ります。

数字を改善したいのですが、アプリを入れるべきかテーマを直すべきかわかりません

判断の軸は「その機能を3年後も使っているか」です。常時表示され続ける要素や商品ページの構造そのものはテーマ側に入れたほうが、月額の積み上がりと表示速度の両方で有利になります。効果を試してから判断したい機能はアプリで始め、効いたと確認できてからテーマへ移すのが無駄が少ない順序です。


まとめ

Shopifyの分析レポートは、指標の多さで圧倒してきますが、構造は単純です。

  • 売上は 訪問数 × 転換率 × 客単価 の掛け算。この3つ以外は内訳
  • 見る順番は 訪問数 → 転換率 → 客単価。動きやすく、打ち手が近い順
  • 落ちたときは、まず 計測の故障 を除外してから中身に入る
  • 転換率は カート追加 → 決済到達 → 決済完了 の3段階に分解して初めて打ち手が出る
  • 毎日見るのは セッション・注文数・転換率 の3つで足りる
  • 比較は前日比ではなく、直近4週間の同じ曜日と揃える

分析で価値が出るのは、数字を眺めている時間ではなく、落ちた場所を特定したあとの改修です。特定に時間をかけないための順番が、この記事で書いた見方の優先順位です。

そして構築・リニューアルの段階で計測の範囲を握っておくと、公開後の分析が驚くほど楽になります。公開してから「数字が取れていない」と気づくのがいちばん高くつくので、見積もりを比較するときに一行だけ確認してください。購入完了イベントまで計測できる状態で納品されるか、という一行です。